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友人はかけがえのない財産

「あ、あんた……自動人形(オートマトン)っしょ!?」

「なんでここに眠ってたわけ?てかがち何者!?」


リアの問いに少女は花を見つめたまま答える。


「わかりません……」


少女はリアの方を向き

感情の(とぼ)しい、けれどどこか温かい瞳で首を傾げた。


「ぶっこわれてる感じ……?」

「てかこんな精巧な人型みたことないんだけど……」

「敵意はなさげ……あんた、名前とか型番とかは??」


「わかりません……なにも、覚えていないのです」


「これ完全にロストしてる感じか~……」

「大事に保管されてたし金持ちが道楽でつくったやつかな」


「名前……どうして、こんなに……苦しいのでしょうか……」


少女がぎゅっとアイリスの花を握りしめ辛そうに表情をゆがませる。

空間が再び震えると、さきほどのビットが不穏な気配を見せ始める。


「げげ!これあの子の状態に反応してオーバーロードしてない!?」

「ちょ、ちょっとまって?名前なんて思い出せなくてもさ!!」


「……」


「わ、わかった!とりあえずその花……えーっと……」

「アイリス!とりあえずアイリスってことにしようよ!!」


「アイ……リス……」


「だ、だめか……」


「いい、ですね。好きな響き……気に入りました」


少女が満面の笑みを浮かべると

ビットたちも大人しくなっていく。


「っぶねー……時限爆弾じゃんねこれ」

「でもあんたのおかげでがち助かったし!サンキューアイリス~!!」


リアが勢いよく抱きつこうとしたその時。

足元で、頭部を失った最後の一体の残骸が

ガタガタと無様に震えた。


「ガガ……」


「げっ、まだ生きてんの!? しぶとすぎ!」


アイリスは無表情のままその残骸を見下ろした。


彼女の指先がわずかに動くと

宙を舞うビットの一つが

オートマトンの動力核コアを精密にえぐり出す。


「この個体から、情報の取得を試みます」

「言語モジュールが必要……」


アイリスはサンクチュアリの片隅

大樹の枝に引っかかっていた「古い模型」に目を留めた。


それは、かつて誰かが作ったのであろう

ゼンマイ仕掛けの青い小鳥。


「構成物質を再構築……」

「……書き換えを実行」


アイリスの瞳が青く発光する。


えぐり出された無骨なコアが

瞬く間に小さな光の粒子へと分解され

古びた小鳥の模型へと流し込まれていった。


少女はさらに模型に対しても手をかざし

暖かな光が小鳥を包み込んでいった。


その光景をリアはまたしても口を開けて眺めていた。


数秒後。


アイリスの手のひらの上で

青い小鳥がパチリと目を開けた。


「ナ、ナンダコレ!クソ古い外装じゃないか!」

「こんな屈辱ヲうけるとハ!クソガー!!」


「うわ、喋った! しかも超ムカつく感じなんだけど!」


リアが顔をしかめる。


「言語モジュールを搭載して、自由意志を解放しました」

「共有ネットワークからも切断しました」

「その影響で、このような子になった……のでしょう」


「やいやい!俺様をどうするつもりなンダ!」

「このはぐれ自動人形!なにもンダオメェー」


小鳥はギャーギャーと口汚く飛び回る。

その様子を見てリアはひとつの提案をした。


「こいつ売ったらけっこういい値段つくんじゃ……」

「そしたら……ふへへ……缶詰じゃなくて生のお肉とかぁ……」


「ギエ!?」


小鳥はリアの言葉におびえたように

少女のそばへと弱々しく近寄った。


「わたしは……あなたのことが知りたいのです」


少女は指先に小鳥をとまらせ

まっすぐな瞳で見つめた。


「だったらハッキングすればよかっタロ……」

「システムを書き換えれば隷属(れいぞく)だってさせられたハズだ」


「あなたを解析(かいせき)し、情報を取得することは可能です」

「ですが、それでは友達になれません」


「トモ……?なんだソレ」


「えっと……それは……」

「申し訳ありません……記憶領域がやはり……」

「誰かに……大事な存在に……教わったのですが……」


うまく説明できない少女アイリスに

リアが手を取って握りしめた。


「友達ってまじこういうことじゃんね!」


「え……?」


「命助けてくれたし?自動人形(オートマトン)とか関係ないって!」

「いいっしょ?」


「……はい。わたしたちは、友達……です……」


そう言ったアイリスは口元を緩ませ

にこっと微笑んだ。


「あたしはリア!これからよろしくねアイリスちゃん」


その様子を小鳥はじぃっと見ていたのであった。

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