ある副警備長の苛立ち
◇ ルート視点 ◇
ゲホゲホが空から降って来たと思えば、今度は二人で裏門に逃げたのか。
カーマめ。
さっきから戦わずに、何をチョロチョロしてるんだか。
そんな事より、早く、援護に行きなさいよ。
急がないと、セルドも、私も、そろそろ限界よ。
完全に外れくじを引いた。
警備長の援護だけかと思いきや、姿を消した警備長の代わりに湧き出る魔物の大群。
私一人で大群を相手にしながら、冒険者達の回復は流石に厳しい。
本来は、アーチが相手を蹂躙してる筈なのに、カッタルの裏切りで台無しだ。
右側の戦場では、知ってる顔の冒険者や闘技場の選手が、次々と倒れていった。
最低限の回復は欠かして無いから、死んでは無いと思うけど、このままだと突破されるのは時間の問題でしょうね。
今も、警務隊の隊長、マワリ―さんが、オークの棍棒を諸に喰らって、派手に吹き飛んで行った。
あの人は、ああ見えて、簡単に死ぬ様な人じゃない。
幸い、飛ばされた先が、壁側で良かった。
あれなら、防衛線が突破されない限りは安全ね。
そんな事を考えていると、何処からか、女の声が聞こえた。
「あらあら、人の心配でもしてるつもり?」
声の主は空からだった。
「あん? ……今忙しいし、ヤニ切れでイラついてんだよ。上から喋るな」
どうやら、私が目を逸らしている間に、一度、挨拶に来た鳥女が、仲間を連れて来た様だ。
頭上に同じ様な翼を生やした鳥人族の亜人が、円を描くように飛び回る。
影から察するにその数は、あの女を含めて七体。
拠点を防衛するに当たって、飛んでいる相手程、厄介な存在は居ない。
上下左右に飛び回るだけで無く、外壁を飛び越えられると、民間人に被害が及ぶ。
つまり、奴等を確実に撃ち落とす以外に道は無い。
「【憑依】」
私は、鳥女と会話する振りをしながら、鳥女を守る様に、ゆっくりと飛んでいる亜人に光の矢を放つ。
「ぐあああーっ!」
「まず、一体!」
いくら亜人と言えど、急所は人間と変わりない。
胸元を貫かれた亜人は、そのまま悲鳴を洩らしながら、垂直に落下した。
「お前っ! いきなり何をっ!?」
「いきなり攻めて来たのは、そっちでしょうが!」
「なら、これでお相子ね。……【硬化――羽の矢】!」
鳥女はそう言って、広げた翼から何かを、私に向けて放ったのだった。
「何っ!?――うあぁっ!」
まるで、私が放った様な高速の矢が、地表に雨の様に降り注ぐ。
慌てて回避に転ずるも、既に、右足と左肩は、矢の様な硬質の羽に貫かれていた。
「くそっ……油断した! 【具現出力――祝福の光】」
辛うじて、傷口を癒しきる頃には、取り巻きの亜人共が、空中から襲い掛かる。
「鬱陶しいな。【具現出力――聖なる光槍】!」
私は、空から迫る三体の空飛ぶ亜人を迎え撃つ様に、十六本の光の槍を無作為に飛ばして迎撃する。
「「「ぎゃああああああー!」」」
残りは、あいつを入れて三体か。
あいつ等、厄介だけど、遠距離で攻撃を仕掛けて来るのは、態度のでかい鳥女だけの様ね。
なら、突っ込んで来るのを待てばいい。
時間が掛かるのは得策では無いけれど、その気になれば、外壁を飛び越えれるあいつらを、自由にさせるよりはマシだろう。
(ったく、警備長もフェイも、何処で何やってるのよ。……あーあ、そんな事よりも、早く煙草吸わせてくれないかしら……)
私は、二時間おきに煙草を吸えない苛立ちを、同僚にぶつける事で、何とか自我を保っていた。
そんな事を考えながら、頭上へ矢で牽制を続けていると、突然視界に入って来たのは、先程、裏門に逃げて行ったカーマが、馬車を引いて帰って来る所だった。
(あの子は、こんな時に何やってるのよ。……って、馬車ごと、こっちに向かってきた?)




