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あるバイト門番の燻り  作者: 日比乃 翼
第一部 第二章 元警備隊員の来訪
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ある副警備長の苛立ち

 ◇ ルート視点 ◇


 ゲホゲホが空から降って来たと思えば、今度は二人で裏門に逃げたのか。


 カーマめ。

 さっきから戦わずに、何をチョロチョロしてるんだか。


 そんな事より、早く、援護に行きなさいよ。

 急がないと、セルドも、私も、そろそろ限界よ。


 完全に外れくじを引いた。


 警備長の援護だけかと思いきや、姿を消した警備長の代わりに湧き出る魔物の大群。

 私一人で大群を相手にしながら、冒険者達の回復は流石に厳しい。


 本来は、アーチが相手を蹂躙してる筈なのに、カッタルの裏切りで台無しだ。

 右側の戦場では、知ってる顔の冒険者や闘技場(コロシアム)の選手が、次々と倒れていった。


 最低限の回復は欠かして無いから、死んでは無いと思うけど、このままだと突破されるのは時間の問題でしょうね。

 今も、警務隊の隊長、マワリ―さんが、オークの棍棒を諸に喰らって、派手に吹き飛んで行った。


 あの人は、ああ見えて、簡単に死ぬ様な人じゃない。


 幸い、飛ばされた先が、壁側で良かった。

 あれなら、防衛線が突破されない限りは安全ね。


 そんな事を考えていると、何処からか、女の声が聞こえた。


「あらあら、人の心配でもしてるつもり?」


 声の主は空からだった。


「あん? ……今忙しいし、ヤニ切れでイラついてんだよ。上から喋るな」


 どうやら、私が目を逸らしている間に、一度、挨拶に来た鳥女が、仲間を連れて来た様だ。


 頭上に同じ様な翼を生やした鳥人族の亜人が、円を描くように飛び回る。

 影から察するにその数は、あの女を含めて七体。


 拠点を防衛するに当たって、飛んでいる相手程、厄介な存在は居ない。

 上下左右に飛び回るだけで無く、外壁を飛び越えられると、民間人に被害が及ぶ。


 つまり、奴等を確実に撃ち落とす以外に道は無い。


「【憑依(ひょうい)】」


 私は、鳥女と会話する振りをしながら、鳥女を守る様に、ゆっくりと飛んでいる亜人に光の矢を放つ。


「ぐあああーっ!」


「まず、一体!」


 いくら亜人と言えど、急所は人間と変わりない。

 胸元を貫かれた亜人は、そのまま悲鳴を洩らしながら、垂直に落下した。


「お前っ! いきなり何をっ!?」


「いきなり攻めて来たのは、そっちでしょうが!」


「なら、これでお相子ね。……【硬化(こうか)――羽の矢】!」


 鳥女はそう言って、広げた翼から何かを、私に向けて放ったのだった。


「何っ!?――うあぁっ!」


 まるで、私が放った様な高速の矢が、地表に雨の様に降り注ぐ。

 慌てて回避に転ずるも、既に、右足と左肩は、矢の様な硬質の羽に貫かれていた。


「くそっ……油断した! 【具現出力(ぐげんしゅつりょく)――祝福の光(ヒールライト)】」


 辛うじて、傷口を癒しきる頃には、取り巻きの亜人共が、空中から襲い掛かる。


「鬱陶しいな。【具現出力(ぐげんしゅつりょく)――聖なる光槍(ホーリーグングニル)】!」


 私は、空から迫る三体の空飛ぶ亜人を迎え撃つ様に、十六本の光の槍を無作為に飛ばして迎撃する。


「「「ぎゃああああああー!」」」


 残りは、あいつを入れて三体か。


 あいつ等、厄介だけど、遠距離で攻撃を仕掛けて来るのは、態度のでかい鳥女だけの様ね。

 なら、突っ込んで来るのを待てばいい。


 時間が掛かるのは得策では無いけれど、その気になれば、外壁を飛び越えれるあいつらを、自由にさせるよりはマシだろう。


(ったく、警備長もフェイも、何処で何やってるのよ。……あーあ、そんな事よりも、早く煙草吸わせてくれないかしら……)


 私は、二時間おきに煙草を吸えない苛立ちを、同僚にぶつける事で、何とか自我を保っていた。


 そんな事を考えながら、頭上へ矢で牽制を続けていると、突然視界に入って来たのは、先程、裏門に逃げて行ったカーマが、馬車を引いて帰って来る所だった。


(あの子は、こんな時に何やってるのよ。……って、馬車ごと、こっちに向かってきた?)

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