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あるバイト門番の燻り  作者: 日比乃 翼
第一部 第一章 あるバイト門番の燻り
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あるバイト門番の断罪

 すっかり、暗くなった町を歩きながら、俺は、フェイさんに気になる事を聞いて見た。


「フェイさんは、いつ、闘技場(コロシアム)(はま)ったんですか? 何かきっかけってあったんですか?」


「確かに、あのはまり具合、俺も気になってた所だ」


「……うーん、きっかけって言う程でもないが、昔、俺が色々と悩んでた時にな、警備長が闘技場(コロシアム)に連れて来てくれた事があったんだ。一緒に金を賭ける訳でもなく、只、試合を見て応援していただけだったが、その試合を見てる間は、それだけに熱中出来て、辛い事だったり悲しい事も全部忘れられたんだよ。その後、何度も見に行く内に、気付けば賭博の沼にはまってたって訳だ」


「そういう些細な事がきっかけで、人はギャンブル狂になってしまうのか……。しかし、あの警備長にそんな優しい一面があったとはな」


 確かに、トーマスの言う通り、警備長の優しい一面は想像出来そうに無い。


 だが、ゲータさんが寮で話していた事が事実であるならば、フェイさんが警備長に借りがあるって話も、貴重なストレス解消の場を教えたって事で、納得出来る気がする。


「でも、意外でした。フェイさんにも悩み事とかあるんですね」


「そりゃあ、俺も人間だからな。まあ、半分くらいはあいつのせいだけどな」


 フェイさんが指差す先には、何処かで買ってきたパンを頬張りながら、嬉しそうに路地を歩くアーチの姿があった。


「あ、アーチ! お前っ! さっきはよくもやってくれたな!」


 俺は、メタルリザードの尻尾の件を思い出し、問い詰める。


「あっ! カーマとトーマスじゃん! ついでにフェイも良いとこにいた!」


「それはこっちの台詞だコソ泥女。さっさと俺達の尻尾を返してくれ」


「お金でしょ? あたしも渡そうと思ってあんた達探してたのよ。はい、これあんたの分」


 そういうと、アーチは俺に五万ロームを差し出した。


「どうしたんだお前!? 頭でも打ったのか?」


「失礼な奴ね!あたしは、あの店に怪しい噂があるから確かめに行きたかっただけなのよ。はい、これトーマスの分ね」


「……ふん、まあ受け取ってやるが、感謝はしないぞ」


「一々、めんどくさいなお前」


 何だかんだトーマスも嬉しそうに、俺と同額の分け前を貰っていた。


「で、実際行ってみて、ビックリクラフトはどうだった?」


「うーん。まだ、はっきりとは断言出来ないけど、かなり怪しいね」


「そうか、だったら早いとこ証拠掴んでこい」


「はいはい、分かったって」


 フェイさんとアーチが小声でよく分からない事を喋ってるが、別にほかっておこう。

 取り敢えず俺は、アーチの気まぐれに感謝しつつ、この貴重な臨時収入を使って速やかに借金を返済する事にしよう。


 その為には、この二人とは、あまり関わらない方が身のためだ。


「でもさー、よかったじゃんカーマ!」


「何がだよ!」


「えーだってー、あんたさ、あたしのおかげで借金返せそうじゃない?」


「確かに感謝はしてるが、借金する羽目になったのはお前のせいだろ?」


「えー、そうだったっけ?」


「何だお前、新人の癖に早々に借金なんてしてたのか」


 すると、フェイさんが、俺の借金事情に首を突っ込んで来た。


「そそー、でもこれで完済出来そうだし、助かったじゃん! フェイにバレなくて!」


「……バ、バカ! アーチお前!」


「あ、やべー。ミスった!」


「……ん? 何が俺にバレなくて良かったって?」


「い、いやー……特に何でもありません。あははははは、アーチの言い間違いでは?」


「……カーマ。お前、もしかしてだとは思うが、今日の郵便で俺宛に届いていた、アルアルファイナンスからの手紙と関係あったりしねえよな?」


 ま、まずい、このままでは完全にバレてしまう。

 何とか逃げ道を見つけなくては。


「いえ、そのー……」


「まあいい。どの道、寮に戻ればはっきりする事だ」


 フェイさんが、結論を後回しにしようとしたその時だった。

 何故か、トーマスが、フェイさんの前で、右足だけ立ち膝を立てて座り込む。


「フェイ様、進言致します!」


「どうしたトーマス、かしこまって?」


「容疑者、カーマ・インディーは、既にフェイさんの部屋に無断で侵入し、証拠となる、その手紙を燃やしています」


 (トーマス! 裏切ったな、貴様ー!)


「なんだと!? お前、正直に言ってみろ! 今なら氷浸けは勘弁してやる」


「すみません! 私がやりました! ちょっとした出来心だったんです!!」


「そうかそうか、自首してくれてありがとう。【具現出力(ぐげんしゅつりょく)――氷山の一角(アイスメテオ)】」


 俺の頭上には、いつぞや直撃した時よりも、数倍はでかい、殺意の籠った氷塊が迫りくる。


「ちょっと待って下さい!! この大きさは駄目ですって! 俺、ほんとに死んじゃいますよ!!!」


「そうか、それならまた、新しい求人を募集しないといけないな」


「フェイ様、次は幼い女の子を募集しましょう!」


「そうねー! あたしも女の子の後輩の方が欲しいわ」


「うわあああああああーー!!!! 許してーフェイさーん! トーマス! アーチ! お前らは死んでも絶対ゆるさねぇぞー!!!! ――ぎゃあああああああああああああー!!!」


「よし、ゴミ掃除は終わりだ。帰るぞ」


「フェイ様、お供致します」


「帰ろ帰ろー」


 この日、俺は、上司からの信頼と同僚からの友情を失った。


今回にて、ようやく昼勤が終わり、次からは、カーマにとって警備隊と過ごす初めての休日編が幕を開けます。


最後になりますが、感想や評価、ブックマーク登録など、お待ちしておりますので、宜しくお願いします。

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