異世界で旅のお供ができました
登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!
ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。
自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。
大自然の中での急な採用面接。
変な沈黙が続く。
《おい、特にアピールポイント無いなら面接は終了だ。相棒、そろそろ行くか》
「そうだな。飲み水確保しないといけないしな」
河童はザバッと池から飛び出して、皿を指差す。
「お、おいら水なら皿に出せるっス!」
「アピールとして弱いな〜」
《皿のそれを啜るのか?非効率的だな》
「えっと、えっと…おいら相撲が強いっス!」
「却下」
《俺の方が強い》
「相撲はおいらの方が絶対強いっス!!」
《面倒だな。相撲で負かしてもいいんだぞ?》
「おいらが勝ったら仲魔にしてくれっス!」
《良いだろう》
え?ちょっと何勝手な事言ってるの!?
丸い土俵を地面に描き、河童は鼻息荒く四股を踏む。
「ザック本当に大丈夫?」
《勿論だ》
「手ついたらダメなんだよ?ルール知ってる?」
《当然だろ》
土俵にて2人(?)が向かい合う。
「は、はっけよーい…のこったーー!」
物凄いバチーンという音がしたかと思うと、河童は土俵の外に弾き出されていた。暫く何が起こったのか理解できなかった河童は、徐々に顔を真っ赤にして怒りだした。
「防御壁なんて狡いっス!!」
《ちゃんと相撲取ったぞ。神事の相撲を馬鹿にする訳なかろう》
「もう一戦!」
《良いだろ》
良いのかよ!!
その後、ボロボロになった河童が泣き崩れながら、参りましたと言ったのは、夕暮れ時だった。
「なんでそんなに仲魔になりたかったの?」
「…この池には昔はもっと河童がいたんっス。河童ってのは池を綺麗にする事ができて、河童の作る塗り薬は効果が高くて、一昔前は細々と人間とも共存してたんスよ。でも50年程前からその関係も変わっちまった…」
河童の乱獲により池の汚れは増す一方で、更に新しい生活環境に伴い、川には生活汚水が大量に捨てられる。
もうこの池には、この河童しか居ないそうだ。
「なら早くこの池から逃げたら良いのでは?」
「この池には、ある結界が張られてんっスよ」
誰が張ったかわからないが、ここから無断で去る事が出来ないそうだ。出れるのは、人間が連れ去る時。現在1人で浄化を続けているが、それも限界。
「なるほどね」
「合成の材料にはなりたくないんっス。だから仲魔にして欲しいんっス!」
《仲魔はいらん》
「「えええっ!?」」
ザックはキッパリと拒否。
ここまで話聞いててちょっと冷たくないか?と思ったが、ザックはいい奴だった。
《住み心地よい池を見つけるまで、旅の同伴なら構わない》
「だ…旦那ーーー!!」
イケおじ過ぎて眩しいわ、ウチのザック…
恐る恐る河童が池から距離を取る。
一緒に離れた自分にも、一瞬薄い膜を破った様な感覚がした。
「やった…やったっスよーーー!」
感極まった河童が自分の手を握ってブンブン振る。
痛い痛い!!
「でも、この池に河童が居なくなったら、この後どうなるんだろ?」
《池が死ぬな》
「ええ!?」
何やら物騒な言葉を聞いたんだが…
「死んだらどうなるの?」
「まず、池の中に魔素が溜まるっス。河童がいなくなるので、その魔素を異常に体内に取り込んだ生物が魔物になって、この近辺は魔物が湧くスポットになるっス」
河童が言うには、異常発生した魔物は近くの町を襲う可能性がある。しかしハンター達がある程度対応するし、手に負えない様なら大きな街や帝国のハンターや騎士団などが対応するとの事。
ゲームや小説などである、定番のイベントの様だ。
ならば気にする必要もないだろう。
「稀に悪鬼や悪魔神なんかの大物が湧くこともあるんっスけど、相当この周辺に負の感情が溜まっていない限り大丈夫っス」
嫌なフラグが聞こえたが、自分には関係がない。
こちらの人間で対処願いたいので、さっさと此処を立ち去るのが得策だろう。
「んじゃ、行きますか」
ザックを担ぎ、池を後にした。
頼むから、変なフラグがこちら向きませんように。
森の中を進む。日もだいぶ落ち、暗くなった森から自分と河童の足音の後方に、数人の足音が聞こえる。
「…ザック…」
《だろうな》
えーー?なんでーー?!
「だ、旦那方…後ろから」
「言うなカッパン。口に出せば現実になってしまう。気のせい、気のいせいだ」
「カ、カッパン?」
「名前ないと呼ぶ時不便だろ?」
「おいら一応ガパって名前あるんっスけど…」
「カッパンの方が似合ってるぞ」
《カッパンで良いだろう》
「ええぇ〜〜!?」
カッパンがあたふたしているのを無視し、ちらっと後方を確認する。魔物や妖怪などの人外ではなく、明らかに人間。きっと結界を張った人間にカッパンを連れ出したのがバレたのだろう。
さてどうしたもんか…
ザックに一発ぶっ飛ばしてもらっても良いが、これから街に向かう自分の情報に、変な色を付けて伝わっても困る。参ったな…
とりあえず穏便に話をしてみよう。
ダメだった時はその時考えりゃ良いだろう。
「何か御用ですかね?」
まさか尾行に気づかれているとは思っていなかったのか、立ち止まり振り返る自分の姿にビックッと肩を揺らした数人の影。その中でも少しガタイの良い男が一歩前に出た。
「そこのお前、池から連れ出したソレを置いていけ」
はい来ました、定番の台詞。
どうせ断ったら、痛い目みたいようだな、とか言って襲いかかってくるんだろう。さてどうするか…
「彼は貴方の物では無いはずでは?」
「池は村の物だ。だからソレも村の物なんだよ」
出ましたジャイアニズム。
第一ソレっと呼ぶあたりムカっ腹である。
「そんなもんどこにも書いてなかったし〜」
「書かれてなくてもそう決まってんだよ!」
「そんなの誰が決めたのさ、何時何分何秒?!地球が何回、回った日!?」
「は?え、何?」
「ほーらみそみそ、合わせ味噌。ちゃんといつ決まったのか言えないなんて、これは無効ですねぇ」
かなり子供じみた事を言ってしまったが、ガキ大将並みの我が儘には、こちらもガキンチョレベルに下げての喧嘩腰で十分だ。
「うるせーーー!いいか!池は村のもんだ!水草1本だってお前になんぞやらん!!」
男が顔を真っ赤にして怒鳴る。
《ふむ、水草1本にすら所有権を主張するのか。では、お返しせねばな》
ザックは鞄なので顔は無いのだが、ニヤリと言う表現がピッタリな雰囲気を醸し出す。いや、もう鞄なのにポケットや皺やらが顔のように見えている。もう顔と言って良いかもしれない。
ザックのチャックが勢いよく開き、村人の方に向けて口を開く。
《ではお返ししよう》
そう言った途端チャックの口の部分に魔法陣みたいな半透明の模様が浮かび上がり、勢い良く何かが飛び出した。いや、飛び出すというよりダムの放水の様だ。
濁った臭い水とヘドロが村人達に向かって襲いかかる。村人達は濁流に押し流され転がっていく。
《水草1本すら村の物なら、コレもテメェ等のモンだろうが。遠慮なく受け取れ》
低い響く声でザックは言い捨てる。
んんんーーーー!イケおじーー!!
「か、鞄の旦那スゲェ!!」
「ザック、いつの間に入れてたの?」
《入れるわけないだろ。あれは部分転移で池底を持って来ただけだ。あんな臭い物収納する訳ないだろ》
コイツ本当にチート鞄だわ。
ヘドロまみれの村人がヨロヨロと歩み寄る。
「な…にしやが…た…ヲエッ!」
えずきながら息も絶え絶えに言葉を発する。
頑張るなコイツ…ってか臭い!!
こんな悪臭の元が池の下の溜まってたら、そりゃ池だって死ぬわ。
「何って…お返ししただけです」
うーん、みんなゲェゲェ吐きながら話しかけないで欲しい。こっちも貰いゲロしそうだ。ジリジリと後退り、ダッシュ。
「走るぞカッパン!!」
「りょ、了解っス!」
「ま、待てっ オエーーーッ!」
ヘドロとゲロゲロ臭から、闇の中に駆け込み無事逃げ切った。
お読み頂きありがとうございます。
のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。




