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異世界で学び、そして面接

登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!

ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。

自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。

昔々、まだ神が身近だった頃の話。


神になったばかりの若い神は、人間の為にさまざまな願いを聞き入れた。最初は人間も些細な願いから始まったのだが、欲望は止まることがなく、無理難題を願う事も多くなって来た。

そんな時、2人の男が神に祈った。


「ある女性と結婚したい」


若い神は特に深く考えず、それを承諾したが、2人が結婚したい相手は同じ女性を指していた。

男達は若い神を責める。

どちらの願いを聞き届けるのか?と…

悩んだ神の元に、2人の意中の女性が訪ねて問う。

何故私の気持ちも聞かず、男達の願いを聞き入れたのか、と…女には別に好きな男がいたのだ。


男達は神を急かす。女は拒否する。


「今回の願いは一度白紙に戻す」


そう言った若い神に、男達は何故かと激しく責め立てる。渋々神は女には他に好きな相手がいたと答えた。

怒った男達は、その相手を殺してしまう。

女の意中の男は神に怨み事を言い生き絶えた。


さぁ!邪魔はいなくなったぞ!

まだ決められぬのなら、と男達はお互いを殺し合う。

2人の男は神を恨み、怨み生き絶えた。


残った男達の家族に女は責め立てられ気が触れる。

女は神に怨み事を残し自ら命を経った。

怒りの収まらない家族は、その思いを神にぶつける。


何故こうなった!

何故願いを聞き入れなかった!?

神が嘘をついた!

許せるものか!

呪ってやる!祟ってやる!


言葉には魂が宿る。

その言葉で縛られた若い神は、悩み苦しみ…

神としての矜持が保てず、道を踏み外した外道という、醜い姿に成り下がった。

身体中に恨言を囁き続ける複数の人面が浮かび上がり、人の形は保てず、溶けた肉塊がズルズルと地を張って動く塊になって、今も人目を偲んで蠢いている。


この事から、神は約束を違える事が出来なくなった。

そして、人の願いを簡単に叶える事もなくなった。


経緯を聞き、なんとも居た堪れなくなる。

コダマ秘書に謝罪を入れる。


【いえ、謝罪は結構です。この事で神々も学んだのですから】

「学んだ?」

【えぇ。人間に本当の信仰心が無くなってしまったという事を】


喉の奥がヒュッと鳴った。

これは…人間を神は見放しているということではないだろうか?


《まぁ、確かに他国に比べて日本なんて正にって感じだからな。クリスマスはキリストで、正月は神仏で、困った時の神頼み、そして死ぬ時は仏様と来れば、一体どの神に信仰があるのかわかったもんじゃないからな》


ザックは可笑しそうに笑う。


「素朴な疑問なんですが、参拝に訪れる事は信仰ではないのですか?」

【参拝の際に、人間は何を神に伝えていますか?】

「何って…」


嗚呼…確かに。

ぐうの音も出ない。

二礼二拍の後、健康祈願ならまだしも、恐らく欲深い祈りが数多神に届けられる事だろう…きっと感情が目に見てたとしたら、正月の三ヶ日なんて、どす黒いモヤで神社は覆われているに違いない。


【年に一度の参拝しか来ない欲深い願いを神が聞き届けるとでも?】

「思わないっすね…」


《本来、神にはご報告をするのが正しい参拝で、金持ちになりたいとか、幸せになりたいとか、希望を押し付けるもんじゃねぇんだよ》

「…報告?」

《あぁ、子供がこれだけ大きくなったとか、日々健康に過ごしているとか、今の現状を伝えて見守ってくださいというのが正しい参拝なんだがな…》


コダマ秘書によると、そう言った報告を定期的にする事が信仰になるそうだ。


「疑問なんですが、自分そんな参拝行ってないと思うんですが、なんで山神さんは助けてくれたんですか?」

【ちゃんとしてたじゃないですか】

「えぇ?いつ!?」

《いつも山登る時の事思い出してみな》


さっぱりわからん…

いつも山に登る時は、入口の時点で「今日一日よろしくお願いしますね」と心の中で挨拶をする。こちらはお邪魔する立場なんだよ、と年配ベテラン登山愛好家の先輩に言われ納得。それ以来一声かけるのが習慣となっている。

登り進めると、時折慰霊碑がある。

昔、落石や土砂崩れなどで無くなった方達の為の物である。ご冥福を祈り、先に進む。

山頂の着き、絶景に感動し、こんな絶景を見せてくれた事に感謝しつつ下山。無事に麓まで降りたら、山に感謝し帰宅…


「特別な事しているつもりないんだけどな」

【そうです、特別な事ではないのですが、今現代では山自身に感謝できる人はどれだけいると思いますか?】


確かに昨今のキャンプブームや山ガールなど、山に興味を持って来る人も多くなった。しかしマナーが悪い人や、いざこざによるトラブル、ゴミの放置などが目につくのも事実。目に見えて持ち帰れそうなゴミは拾っているけど、嘆かわしい気持ちになる。


【と、いうわけでハーマイ・ターナさん、我々は定期的にご連絡差し上げますので、ご理解の程、宜しくお願いします】

《俺もいるし大丈夫だろ》


不安要素多めの旅が本格的に始まった。


通話が終わり、圏外の携帯画面を暫く見つめる。


「はぁーーーー…本当…参った…」


携帯を、何か喋っているザックの口(?)に突っ込み背負い直す。話を中断された事にモガモガと不満げに苦言めいた事を言っていたが無視だ。


地図を片手に川より少し森側を歩き、街を目指す。


道中様々なトラブルがあったが、チートザックが肩紐アタックで大概の生き物をノックアウト。しかしザック自ら歩けないので、チートで軽いとはいえ鞄を敵に投げなくてはならず、もし外れた際、何の能力もない自分が敵の側にまで取りに行くなんてできない。その為、道中で見つけた蔦をロープ代わりにザックの持ち手に繋いでいる。


《迷子紐みたいでかっこ悪いから外そうぜ…》

「外した状態でザックを投げたら、そこから永遠の別れになるよ?」

《ダセェ事、胸張って言うなよ》

「文句言わない」


ザックの事は、もうそのままザックっと呼ぶ事にした。ザックは私自分の事を相棒とか、坊主とか、基本名前を呼ぶことがない。前の名前って何だったんだろ?それに自分の事を私と言うのは抵抗ないが、僕や俺は咄嗟に出ない。

うーん、やっぱり自分は以前女性だったに違いない。


ザックから水筒を取り出すと、もう空に近い。

どこかで水を補給したい。

地図を見ると少し近くに池がある様だ。


「ザック、飲み水確保で池に寄ろう。運が良ければ魚取れるかも」

《魔物が出るかもな》

「フラグ立てない!」


結論から言うと、池の水は飲める感じではなかった。


「ここは…血の池地獄かな?」

《赤ぇな…》


所謂、赤潮と同じなのだろうか?

その場合、魚も壊滅的だろうな…また今晩も干し肉か…とガッカリしていたが、ふと思いつく。


「ザックの中にこの…」

《まさかこの水の赤いの、俺の中に収納する気じゃねぇだろうな?》

「やっぱりダメか」

《ダメに決まってんだろ!》


チートザックはなんでも無限に収納可能だ。水でも毒でもなんでも可能。可能なんだがなぁ…

ザックの気分次第である。

本人が嫌だと言ったら、絶対に無理だ。強引に入れようものなら肩紐アッパーで一発KOである。

以前、倒した鹿の様な生物を街で売れば金になると思い、入れてくれる様ザックに頼んだのだが…


《俺は登山用のザックだぞ!登山に関係ねぇモン入れれるか!!》


登山用なだけに、エベレスト級にプライドが高い。


落ちてる枝で水面を軽く混ぜる。

うん、赤潮だなこりゃ。

ぷかっと魚が浮いて来て、生臭い様なガス臭い様な…独特な悪臭が強くなる。思わず眉間に皺が寄り、枝を投げ捨てようとした時、水の中から伸びて来た腕が枝を掴んで池に引き込もうとする。

恐怖より焦り。

こんな臭い池に落ちたら、身体もろくに洗えないのに絶対無理つ!!


《相棒っっ!!》


ザックがカウボーイ顔負けのテクニックで蔦紐を近くの木に投げつける。スローライン上手いな!!

それとタイミング同じくして、ザックは後ろに体重移動。そのまま急にザックが重くなり、尻餅をつく感じで岸に身体を残す事に成功した。

枝は水中に沈み、水面はぽこぽこと泡を立てている。

ケルピーの時の様にゆっくり何かが迫り上がってきたと同時にザックを投げつける。


「先手必勝ーー!!」

「ぐへぁ!!」


肩紐パンチで浮き上がって来た物体を水の中に沈めるのに成功。ぽとんっと岸に落ちたザックを慌てて拾い上げ、水面を睨む。

沈んだ物体がゆっくり浮かび上がる。


「か…河童?」


仰向けで浮かび上がって来た者は緑色で頭に皿があるザ・河童という出立ち。頬がザックパンチで腫れ上がっているが、イラストで出る様な顔つき。

関わるのをやめようと、ゆっくりその場を立ち去ろうとしたが、河童の方が意識を取り戻すのが早かった。


「ぐぅ〜…めちゃ痛ぇ!!旦那!あんた只者じゃねぇっスね!?何者っスか!?」


随分キラキラした目でこっちを見る。


「どうっスか?おいらを仲魔にしなっスか?」

「は?」

「しかし近くの村にこんな強い人間が居たなんて知らなかったっス。相撲で大概の男共と勝負したはずなんっスけどね〜」


河童といえば相撲である。


「いや、自分通りすがりの者で、村人じゃないから」

「そうなんっスか?で、どうです?おいらを仲魔にしませんか?」

「いや、結構です」

「ええー!?素材狩りに来たんじゃないんっスか?」

「自分、合成なんてした事ないんで」

「えーー!?じゃぁその鞄は?九十九神なんじゃないんっスか?」


九十九神…

確かに物に命が宿ってるのでそうとも言えるが、99年も使ってないし…


「だって神とつく魔者を仲魔にする事は合成でしか無理っしょ」

「え!?神を仲間に出来るの?」

「仲間っていうか、仲魔ね。旦那何も知らねぇんっスね」


人間が使役する人外の物を、仲魔と呼ぶそうだ。

他にも野生の魔の物(魔物)と、人間によって作られた魔の者とあり、違いが良くわからないが、彼らの中では微妙に違う様だ。

よく分からんが…

この情報通の河童によると、合成しなくても仲魔になる事があるらしい。ただ、ランクが高い魔物はエンカウントしても絶対仲魔には出来ない。その為、幾度も合成を繰り返し疑似神を作る事で仲魔にする。

しかし作られた神は、他の魔者共々従来より能力は格段に落ちる。

しかし一種のステータスにもなっており、人間はこぞって神を合成しようと素材集めに必死なのだそうだ。


「ふーーーん」

「興味無さすぎっス!!」

「でも…自分から売り込んできて…どうして素材になりたいの?」

「素材じゃなくて仲魔になりたいんっス!」

「違いが分からんのだが?」


素材はその名の通り自我を無視して合成する為だけに捕まえる。仲魔は一緒に旅したり戦ったりする。

え?連れて歩くの?


「いやー…いいわ、遠慮します」

「なんでーーー!?」

「正直ザックがいれば何も不便ないし」

《まぁそうだな》

「そう言わずにお願いしますよ旦那っ!!」

「いや、だって一緒に旅する利点がないし」

「いやいや!おいら河童だよ!?便利じゃん!!」


…何故河童だと便利なんだろうか?


「では、納得いくプレゼンお願いします」

「ええええーーー?!」


ザックを横に置き、河童と正面に向かい合う様に座る。


「それでは河童さんのご自身のアピールポイントをお願いします」


面接が始まった。



お読み頂きありがとうございます。

のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。

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