異世界で頼れる相棒覚醒
登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!
ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。
自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。
大迫力の嗎きで爆風に煽られる。
「美味イ!美味イゾ人間!モット寄越スノダ!」
「の、残り少ないので無理ですっ」
今度は怒りの嘶き。
「オ前ヲ殺シテ奪ッテモ良イノダゾ!」
「こ、殺したら、もう二度と手に入りませんよ!」
「ウグググッ!」
本当は、手持ちの分だけなのだが。
「デハ、オ前ヲ街ノ近クノ川マデ送ッテヤロウ。ダカラモット寄越スノダ。等価交換トイコウデハナイカ」
「ふむ…」
思わせぶりな態度で考え込む仕草をするが、この後ノープランだ!手持ちのカル○スは後4つ…
いけるか?いや、無理かも…
あーもー!こんな事なら山神様に何か特別な力でも貰っておくんだった!現世では異世界転生モノが流行っていて、漫画やアニメ、小説など色々あった。大概チート能力があったが、そういえば自分には何の説明もなかった。
こういう時、何て言うんだっけな…
「!す、ステータスオープン!」
……何も出ないじゃないか!!
恥ずかしい!!恥ずかしすぎる!!
神様のバカバカバカ!!あれだ、かなりお年召していたからボケて忘れてたに違いない。あーもー!
そんな時、ザックから電子音。
「!!も、もしもしーーーー!」
【あ〜もしもしぃ、山神だけどねぇ〜】
「ボケ神様ーーー!」
【え?ワシの事!?】
「そうです!何も能力くれなくて、現在大ピンチです!!」
【あ〜、そうゆう事ねぇ〜】
ボ…山神様曰く…
結論として自分にはチート能力が無いらしい。
おおおいぃ!
しかしこのザックにチート能力があるそうだ。
おかしくない?
「ザック盗まれたら一貫の終わりじゃないですか!」
【そうだねぇ〜】
そうだねぇ、じゃぁ済まないのだが!?
【まぁ、鞄の方が持ち主選んでるから、大丈夫だよぉ〜多分】
「多分?!」
神様からの今回の電話は、このチート持ちのザックを起こすのを忘れていた為だそうだ。
絶対にボケ神だ。
そんな時爆音がして雨が降ってきた。
いや、雨ではなくケルピーが尾で水面を力いっぱい叩いて水飛沫が降り注いだのだ。
「我トノ話ヲ蔑ロニスルトハ、万死ニ値スル!」
しまった!すっかりケルピー忘れてた!!
怒ったケルピーはブルブルと首を振る。
これは突進される可能性ありだ。
と、その瞬間地面を蹴ったケルピーの鼻先は、目の前に迫っていた。慌ててしゃがんで避けるが、抱えていたザックを咥えて奪われてしまった。
「か、返して!!」
「返シテ欲シクバ、先程ノ肉ヲ山程寄越セ」
4つしか無いんだってば!!
どうしよう、どうしよう…
ザックを諦めて逃げるという手もあったが、チート鞄を手放す訳にいかない。といより、あのザックは自分が就職して最初の給料で購入した登山用のザックだ。作りもしっかりしていて使いやすいし、海外製で当時は日本でもあまり知られていなかったが、ロゴが可愛くて気に入り購入した。かなり思い入れがある。
そう、気に入っている。かなり気に入っている。
昔はこの鞄ばかり使っていた。
少し綻びが気になった頃から、色々登山鞄を購入し、山に合わせて使い分けていた。
今回久々にこのザックで日帰り登山を何故しようと思ったんだろう…最近はめっきり出番が無かったこの子を、どうしてこのタイミングで使おうと思ったんだろう…
鞄が持ち主を選ぶ
もしかして…
この世界には偶然ではなく、誘われたのだろうか?
《やっと分かったかよ、相棒》
めちゃくちゃ渋い良い声〜が聞こえる。
あれだ、次○大介みたいな、かなりセクシーおじ様な声だ。え?どこから?
《おいおい、誰の許可を得て俺様の持ち手を咥えてやがる。一発お見舞いするぜ?駄馬野郎》
お口が悪いっ!!
やれやれって感じでため息が聞こえる。
え?持ち手?……え!ザックの声ーっ!?
ザックの肩紐がシュルシュルと解れ、肩に当たる部分がもの凄い勢いでケルピーの顎に綺麗にアッパーカットが炸裂すると、大きな雄叫びの様な声が響き、ドサリと地面に崩れ落ちた。
《暫くおねんねしてな若造》
か、か、かっこえーーーーーー!!
ザックも地面に転がるが、立ち上がる様子がない。あれ?さっき肩紐動いたのにな…
恐る恐るザックに近づき手に取る。
《悪いな。俺は歩けねぇのさ。ザックだけにな。背負われてなんぼの人生さ》
え?親父ギャグ?
「えっと…」
《どうした相棒。さっさとずらかるぞ》
シュルシュルと肩紐がいつもの形になり、自分の肩に自動装着される。
え、怖っ!あれ?でも重くない。
「重くない…ですね」
《全く相棒は見た目だけじゃなく中身も変わっちまったのか?いつもみたいに陽気にいこうぜ》
「いやー、こっちにきて記憶はあるのに自分ってものが情報消えてるので現在構築中っていうか…」
《あぁ、そういう事か。ま、気にすんな。お前はお前だろ?俺にとっちゃ何も変わんねよ》
ぐふぅーーー!イケおじーーー!
森の中まで取り敢えず走って逃げる。
「はぁ…はぁ…なんとか逃げれた…」
《全く、さっさと俺を起こさねから…》
「面目ない」
そんな時、再度ザックの中から電子音が鳴る。
山神様の事すっかり忘れてた!
色々忘れすぎな自分に少々不安を感じる。
ザックに言わせれば、抜けてるのはいつもの事らしい。以前の自分が随分頼りない者に思えてガッカリだ。
【大丈夫でしたか?】
「あれ、ボケてない!!」
【すみません、あのボケ…ゴホン、山神様では説明難しいので電話を代わりました。私、コダマと申します】
どうやら介護士登場の様だ。
コダマって山の精霊で、某アニメでは随分可愛い感じに描かれていたが…お堅い女史公務員的な雰囲気。いや、秘書に近いかもしれない。
【鞄の起し方ですが…既に完了の様ですね】
《ギリギリな》
「なんとか…ありがとうございます」
起し方は、お互いの繋がり、絆の様な物を認識し、その上でお互いを必要とする明確な気持ちが必要だったらしい。
うん、爺さんでは説明難しそうだ。
【では、これにて我々のサポートは終了です。良い冒険を心逝くまでお楽しみ下さい】
「待て待て待て待て!!!聞き捨てならん言葉を聞いたんだが!!」
サポート終了!?
チート鞄を貰ったが、現状自分には何も無い。
こんな状態で放り出すなんて悪徳業務以外の何ものでも無い!!とにかく電話を切られない様に立て板に水の如く不満や疑問をコダマ秘書に投げかける。
【分かりましたから落ち着いてください】
「兎も角、折り返し出来る電話番号を教えて貰わないと納得できないですよ!!非通知で毎回電話してきますけど、それって詐欺や悪徳商法のやり口ですから!!神様と名がつくのに、そんな事で良いんですか?!」
【こちらの連絡先はお伝え出来ない事になっていますので、定期的に此方から連絡を…】
「こちら側が本気でピンチの時、本当に分かってくれるんですか?監視してくれてるんですか!?違いますよね!?結局切ってその後本当に電話くれる保証あるんですか?!第一、折り返し番号だって言って、嘘伝えられたら一貫の終わりですよね!?何か保証が無いとこちらも納得出来ません!」
そうだ!嘘の番号言って切られたら終わりだ!
言ってる事やってる事はクレーマーではあるが、生き死にに関わるので大目に見て欲しい!
《落ち着け相棒。神と名乗る者が嘘を言えるわけないだろ》
「…え……言えないの?」
疑心暗鬼になってる自分の背後から呆れたイケおじボイスが聞こえた。悪態つくのは良いが、嘘をつく事は出来ないんだそうだ。もし嘘をついた場合、神ではなくなり外道に落ちる。コダマ秘書自身は神ではないが、神の代弁者として話しているので、ここでコダマ秘書が嘘をついた場合、彼女だけではなく山神も共に外道に落ちるらしい。
「なんか…すみません…」
一気に来る羞恥心と罪悪感。
お読み頂きありがとうございます。
のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。




