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異世界で初冒険・初遭遇

登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!

ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。

自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。

いつの世もお金の力は素晴らしい。


「じゃぁ材料を安く仕上げたら、私にお金が沢山入るってことよね!?」

「そうですね。ただ、安くしすぎて紐がすぐ切れたり傷む様では買った相手から怒られますし、場合によっては攻撃される事もあります。その辺りは慎重に」

「うーーん、そっか〜」


ウロウロしながらアラクさんは素材を考え始める。

その度にお胸がぷるんぷるんしている。

興奮を感じないのは下半身が蜘蛛だからなのか、はたまた自分は以前女だったのかもしれない。ただ目障りである。


「アラクさん…胸隠さないんですか?」

「変化した時は隠してるわよ、ほら」


お尻から糸がシュルシュルと出て、全身を繭のように包む。暫くすると糸はブチブチと切れ、地面に落ちていく。出てきたのはザ・旅人のローブといわんばかりのちょっと汚れたポンチョ風のマントを纏ったアラクさん。

興味本位でペロンとめくり上げる。

ちゃんと両脚があるが…


「脚あっても結局すっぽんぽんかよ!」


裸にマントのみである。

変態だ。


「こんなの人間の男に襲われますよ?!」

「その時は食べるから良いのよ」


さらりと怖いこと言うな!

実際手持ちが無い旅人を装い、男に娼婦の真似事で声をかけて森や人のいない場所に連れ込み、お食事とて頂き、金品も頂くらしい。


「同じ様なことを今回土蜘蛛にやられたって事か」

「アイツ絶対許さない!!」


自分も似た事してるのにな…


地面に落ちている糸を手に取る。

おーシルクみたいに細いけど、凄い伸びるし全然切れない。そういえば蜘蛛の糸は物凄く強いって聞いたことがある。鋼鉄よりも強く、ケブラー繊維よりも丈夫でありながら、しかもさまざまな形をした網の目をつむぎだせるほどしなやかでもある…と国営テレビの化学番組でデなんとか先生が言っていた。


「アラクさん…この糸で紐作れます?」

「え?…あ!なるほど!これだと材料費タダじゃない!アンタに渡す分を引いたら全部私の物って事よね!!」


この女かなり守銭奴だな。


「早速やるわよーーー!」

「盛り上がっている所すみませんが、作業はこの村でお願いします」

「えーーーー!」

「何かご不満でも?」


紐を作って荒稼ぎするのは勝手にしてくれて構わないが、この村の紐を第一に仕上げて納品して貰わないと意味がない。自分にできる唯一の恩返しでもあるのだ。

ナメられない様に睨み返す。

大蝦蟇とのやり取りを見ている為か、アラクさんは『お酒は毎日ちょうだいよね!』と飲兵衛な捨て台詞を吐き、渋々了承してくれた。


飲兵衛で守銭奴な蜘蛛が仲間(?)になった。

酒を用意する手間が増えたが紐の目処がたった。


「この村には酒はありますか?」

「果実酒ならありますが…」


アラクさんは『安い酒じゃ満足しないわよ!』と、ちゃっかり注文してくるし…さてどこで手に入れてくるか。

そういえば小人族が本当にドワーフならお酒が好物だったはず。手土産を用意するついでに探してみるのも良いかもしれない。

となると…


「やっぱり街に行かなきゃダメか…」


まぁ一度行ってみるか。

鳥人さん達が携帯食を用意してくれる。

身支度していると騒がしい足音と共にアラクさんが部屋に乗り込んできた。


「ちょっと!アンタ町じゃなくて街に行くんですって!?」

「そうですが?」

「とびきりの酒絶対持って帰って来るのよ!あそこには私達は入れないんだから!!」

「紐の出来栄えによります。頑張ってくださいね」


罵声が聞こえるが、ひと睨みすると慌てて黙る。

さて歩いて5日。頑張るとしますか…


翌日、鳥人さん達が途中まで飛んで送ると言ってくれた。やはり良い人達である。しかし送った帰り道で人間に襲われたら元も子もない。丁重にお断りした。

道なき道を歩いていく。

貸してもらったこの世界のコンパスと簡易地図が優秀過ぎる。簡易だと思っていた地図だけど、その上にコンパスを置けばホログラムの様に自分が今どこで、どちらを向いているか三角矢印で浮かび上がる。取り敢えずの方向さえ分れば問題ないので、大変重宝する一品だ。


道中、見た事も無い花があり、ちょっと突いてみると黄色い花粉と思われる塊をマシンガンの様に撃ち込まれたり、その花粉に集まってきた変な虫に追いかけられたり、川で花粉を洗い落とそうとしたら、大きいヤドカリの大群に追いかけられたり、とんでもない事の連続だった。


「…疲れた…」


歩き疲れたのではなく、常識と異なるこの世界のモノに疲れた。だがその疲れは心地良い。ワクワクが止まらない。山どころか、自然全てが自分の好奇心を刺激して堪らない。


「何はともあれ…お昼でも食べるか」


川縁に座り、ザックから取り出した笹の様な葉に包まれたお弁当を取り出す。開けると蒸した芋の様なモノを潰して天日干しして硬くなっている塊。これを千切り、水を少量足して捏ねて芋団子完成。そして干し肉と水。以上!

旅の携帯食には改善が必要だな…

村で食べる食事は美味しかった。取り敢えず戻ったらお弁当箱を作る事を推奨しよう。

干し肉の硬さと格闘していると、水面から視線を感じる。これって気付かないふりが良いのだろうか?特に敵意は感じ無い為、引き続き干し肉を頑張って咀嚼する。


「顎疲れた…」


現代人の顎の弱さに悔しさを感じつつ、渋々干し肉をザックに片付ける。芋団子だけの侘しい昼食。


「人間ヨ…」


何か聞こえたが、取り敢えず無視を決め込む。


「ソコナ人間ヨ…オ前ダ」

「…声を掛けるなら姿を現すのが先では?」

「オ主、コノ川ニ何用デ来タ。返答ニヨッテハタダデハスマンゾ?」

「酒を買いに街に行くところです」

「?街ニ戻ルノデハナイノカ?」

「街の住人じゃないんで」


水面がゆっくり膨らみ、そこから顔を出したのは馬。

あれ?馬って泳げるんだっけ?

しかしよく見ると、立髪は水草、下半身はイルカの様に流線型の泳ぎが上手そうなフォルムである。

意外にも覚えているゲーム知識。


「ケルピー…かな?」

「ヨク我ヲ知ッテイルナ。ドウダ?街マデ乗セテヤルゾ?」


有難い申し出に腰を上げるが、いや待て、と心のどこかで警告音がする。このケルピー、確か一筋縄でいかなかった筈だ。ゲーム内の美味しいところは弟がプレイしていたが、その為のレベル上げや素材入手を嫌ほどさせられた。確かこいつとの会話は一筋縄ではいかなかった。かなりの確率で裏切られる。

友好を深めようと言われて、近づいて襲われた経験が何度もある。絶対近づいちゃ駄目だ。


「結構です」

「我ニ乗レバ、夜ニハ着クゾ?」


乗った瞬間、川底にランデブー決定である。

さて、どうするか…

ゲーム内でケルピーとの会話は下手に出る事が友好的で、ノリが良く、会話好き。ただし気まぐれな為、なかなか会話が難しい。


「ドウシタ?乗ラナイノカ?」

「いやいや、乗せてもらうのも申し訳ないですから」

「我ノ親切ガ迷惑ダト言ウノカ?」


親切じゃぁないだろう。


「こう見えて自分岩より重いので」

「フハハハ!面白イ事ヲ言ウ」

「ところで、どうして声をかけてたんですか?」

「ウム、腹ガ減ッタノデ何カ肉ヲ持ッテオランカ?」


食べかけの干し肉を思い出したが、大ピンチだ。

用意してくれている時、これ何の肉?と聞いた時、捕まえてる現物を見ている為、馬っぽい生物なのを知っている。ただ現世では見たことがない立髪が針みたいで体がまだら模様だったが…

我の同族を喰らうのか!って襲われるのが目に見えてる。やばい!いや、コイツ分かってて言い出してる。ジッとコッチを見ていたのはこれか!

参ったな…これ死亡フラグってやつでは!?


ニヤニヤという表現がピッタリな表情で返答を待っているケルピー。回答無視でも怒らせて襲われる。干し肉をあげても怒らせて襲われる。何か別の物…いや、肉と指定しているので別の物を渡しても襲われる。

ザックの中に何かないだろうか、肉的な何か!

ガサガサ探すと…


「こ、これは…」


カ、カカ…カル○スッ!!!

サラミ的なこのおやつ、確か原材料は豚、牛、鶏肉。

うん!馬入ってない!!牛が怪しいが、まぁ大丈夫だろう。色々混ざってるし、初めて食べる物だからわかるまい。


「お肉ですか?あるにはあるんですが…」

「早ク渡サヌカ。干シ肉ヲ持ッテオロウ?」

「実は干し肉よりちょっと珍しい物を持ってるんですが、まぁ干し肉が良いのならそうします」


チラリと上目遣いで様子を窺い見る。

珍しいという言葉に反応したケルピー。


「ホウ!ソレハ興味深イ!」

「ただ、これ残り少ないんですよね〜どうするかな〜それに食べ慣れた物の方が良いですよね?」

「イヤイヤ!是非ソチラヲ頂コウ!」


早く早く!という感じで尾っぽ(?)で水面をバシバシ叩く。包み紙からカル○スを1つだけ出し、苔の付いた小石の上に置いて下がる。

物凄く匂いを嗅いで、口に含み咀嚼。

カッ!!という擬音がピッタリな程目を見開き、大きな嗎きをする。鼻息荒く、離れたはずの自分の所まで風がくる。


どんだけ興奮してんだ!


お読み頂きありがとうございます。

のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。

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