異世界で初交渉
登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!
ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。
自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。
ある日、森の中、蜘蛛さんに出会った…
ぎゃぁぁぁぁーーーー!
シャカシャカ、シャカシャカいって追ってくるんですけどーー!山に登らずして死ぬなんて嫌だーーーー!
こんな状況なのに、頭の中は有名童謡と某有名ナレーターの声が聞こえてくる。
広場にもうすぐ着くって時に、古典的に躓いた。
あ、死んだコレ…
大きな影が自分に覆い被さる。
目尻から熱いものが溢れる。
女の顔かググッと近づいてきた。
「会うなり逃げるなんて失礼よ!」
え…凄い酒焼けやした声なんですけど…
ってか酒臭っ!!
「酔っ払いを走らすなんて全く…どうなるか、わかってんでしょうね…」
「や…やめ…」
オロロロロロロロロ…
今回は自覚ある大絶叫で叫んだ。
「あーースッキリしたわ」
そうでしょうねっ!!!
大絶叫を聞きつけ本日2度目の大集合。
この蜘蛛女さんは旅の途中いい感じになった土蜘蛛とお酒を飲んでいたそうだ。かなり酒が回ったのか、うたた寝して目が覚めたら荷物も財布も無くなっており、しかも人間に追いかけられこの山に逃げ込んだそうだ。そんな時、川で大蝦蟇と格闘している姿を見て「こんな所に人間が!?」と、慌てて木の上に逃げたものの、吐き気限界。木から降りている途中自分と目があったそうだ。
そのまま山に逃げてくれたら良かったのに…
しかし財布ってあるんだな…
「あの…素朴な質問なんですが…どこでお酒飲むんですか?」
「え?町に決まってるでしょ」
え?その姿で?
表情が全部顔に出ていた様で、蜘蛛女さんは呆れた顔をする。人に変化できる種族もいるそうだ。他の鳥人さんが教えてくれた。
ただ、王城がある大きな街は人外に反応するセンサーの様なものがあるそうで、小さな町程度ならバレないそうだ。
なのに…
「運がなかったわ〜酔って変化が解けたのかしら」
「それって…土蜘蛛って奴に嵌められたとか?」
水洗いした上着を絞りながら、ボソっと言った一言に全員こちらを見る。
「どういう事?ってかなんで人間が山にいるのよ!」
今更である。
「だって蜘蛛女さんだけ追われたんですよね?目が覚めたら土蜘蛛はいなかったし、更に荷物も財布もない。自分がいた世界では似たような犯罪がありましたよ。土蜘蛛は人間に蜘蛛女さんの情報をお金と交換。捕まえに来る少し前に退散。その時に蜘蛛女さんの荷物と財布を頂くんですよ。そうすれば2倍の儲けですよね?あれ?なんか変な事言いました?」
こいつ信じられないっという顔で見られている。
「お、落としビトのいた世界はそれが普通なのですか?」
「普通…というか…うん、まだ軽い方かな?」
かなり衝撃的だったようだ。
通常同じ種族を裏切ることはないそうで、同じ蜘蛛同士完全に信じていた為に、蜘蛛女さんは口をパクパクさせている。
この世界の人外さんはチョロ過ぎるのでは?
同族に騙されるなんて微塵も考えていない彼等。
大丈夫か?
このままだと人間に騙されて素材にされてしまいそうで心配だ。しかし、人間によるコア石の乱獲が始まったのって50年前と言ってた。それから素材狩りとして誘拐の多発が起きたのなら、50年前に自分と同じ世界から人間が来たのではないか?
「ちょっと質問なんですが、50年前から石の乱獲が始まったんですよね?誘拐もですか?」
「え?そ…うですね、それくらいかな?」
「確か、合成生物の使役法を確立した小さな町が、その力を使って付近の町を襲ったのが始まりよ。今では大都市にまでのし上がって、帝国にも影響力があるのよね…」
蜘蛛女さんは顔を顰めて吐き捨てるように教えてくれた。多分自分の考えは間違っていないと思う。問題は同族間の裏切りだ。こればかりはどうしようも無いので、初めて会う同族には、少しばかり距離を置く事くらいだ。
危機察知なんて経験積まねば無理である。
防衛手段としては各々で心掛けるしか無い。
「で、蜘蛛女さんは…」
「ちょっと待って。その言い方止めてくれる?ちゃんとアラクって名前あるんだから」
アラク?蜘蛛でアラクって…
ギリシャ神話のアラクネなのかな?
もしそうだとすると、紐問題が解決するのでは?
神話の中でアラクネは優れた織り手で、その技術は機織りを司るアテナをも凌ぐと豪語するほどだった。これを耳にしたアテナは怒りを覚えたが彼女を諭す為に老婆の姿を借りて神々の怒りを買うことのないように忠告を与えた。しかし、アラクネはそれを聞き入れずに神々との勝負を望んだ為、女神は正体を表してアラクネと織物勝負をすることになった。
まぁ結果はアラクネの勝ちだったけど、タペストリーを織った柄が悪かった。
アテナの父ゼウスの女好きで浮気症を主題にし、その不実さを嘲ったタペストリーを織り上げたもんだからアテナ大激怒。怒った女神の姿に自分の愚かさに気づき恥ずかしさのあまり自害するが、なぜかアテナによりこんな姿で蘇ることになった。
蘇るとしてもこんな姿でなんて勘弁して欲しい…
「アラクさん、1つ質問なんですが機織り得意ですか?」
「な、何よいきなり…まぁそれなりに?」
ミサンガを見せて、山印を同じように糸で織った紐が欲しいと伝える。アラクは川に張る話を聞きながらミサンガを手に取り、時々唸りながらも裏返したりしている。
「印を同じ様に描くのは出来ると思うけど…かなり時間かかるわよ?長さも半端なく必要だし」
「それじゃぁ手伝ってくれませんか?」
返ってきた答えは…
「嫌よ」
同族以外には極端に冷たいなっ!!
きっぱりとNOと言ってきたなコイツ…
「人にゲロふっかけといて」
「それとこれは別でしょ!!」
何故嫌か聞くと、別種族に手を貸す理由がないからだと言う。本当、先を見据えることができないなコイツ。あれ?なんだか自分口が悪くなってきたな…個性が出来てきたのだろうか?これが素だったのだろうか?
まぁどっちでも良い。
とりあえず理解させ納得させないと。
「いいですか?よく考えてください。この紐が完成すれば人間に攫われる脅威はグッと減ります。川だけじゃなく森の入り口や、場合によっては空からの侵入だって防げるんですよ?」
「…じゃぁ私達蜘蛛だけで紐を作って利用するわ」
「じゃぁここで貴女を監禁するしかないですね」
「ええぇ!?」
驚きの声を上げたのは鳥人さん達。
「いいから早く縛り上げてください」
「いやいや…そんな事までしなくても…」
「なら脚を折りますか?」
「怖い事言わないでよ!!」
ドン引きされたが仕方がない。
ことの重要性を説明していく。
この紐が完成したら格段に村に侵入される率が減る事、この紐を商品として売り出せば確実に買い手がつく事、それによる利益等々…
説明を進めていくと、この紐の重要性に気づき始める鳥と蜘蛛は互いをチラッと見る。
「あと忘れてはいけないのは、人間に唆されて同種族でも裏切り者が出てきているとう現状です。この事に対する対処法は難しいですが…他種族同士での交流、同盟なんでもいいです。何かしらの繋がりが必要になってきていると思います」
静まり返っているが、込み上げる熱気というか熱意というかが広がっていくのが分かる。
「「………」」
「現状レヴィさん達鳥族の方々はお金って使ってるんですか?」
「他の種族は分からないが、この村では物々交換と自給自足だ」
「それに我々は変化出来ないので人のお金を使う事はないよ」
「なら話は早いですよね。出来た紐を販売する権利はアラクさんの一族が持ち、売り上げの何割かを自分にください。今回この村に収めて頂く紐の代金はその中から引いて貰えば良いです」
全員頭に?が浮かんでいる様だ。
地面に例えを書きながら説明する。
「例えば完成した紐を100で販売。原価…って言っても分からないか…紐を作るのにかかったお金が20、すると80の売り上げ。1つ売れる毎に自分に利益の2割自分に払ってもらうとしたら、80-16=64なので、アラクさんには紐が売れる度に64のお金が入ります」
「え!?」
「こちらのお金の価値や原価がどれだけかかるか分かりませんが、この紐売れると思うんですよね…協力してくれるなら美味しい話だと思うんですけど」
「やるわ!!!」
うんうん、現金な女子で良かった。
お読み頂きありがとうございます。
のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。




