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異世界でも酒はトラブルのもと

登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!

ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。

自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。

牢屋の古びた床に、オーコンさんの所で入手した酒瓶をどんどん開けていく。

一気に酒臭い!


【あ奴らの事だ、すぐ嗅ぎつけて来るぞ】

「そんな…」


馬鹿な、と言いきるより早くドスドスと慌しい足音。


「お前ら誰の許可得て酒盛りしてやがる!」

「酒盛りした訳じゃなく栓を開けただけ…」

「こんなに一気に開けちまったら風味が逃げちまうだろうが!え?飲みきれねぇって?しょうがねぇから俺が飲んでやるよ」


嬉しそうなだらしない顔で格子間近の瓶に手を伸ばすが、バチンッと静電気の様な衝撃が走り手を払われる。


《誰の許可を得ている。これは貴様にくれてやる物ではない》

「なっ!?鞄が…」

【神に対してのドワーフの態度、しかと見させてもらったぞ】

「か、神だと!?」

【左様。此方の神は、物神である付喪神である】

「なんだって!?」

【神を見誤るとは…この町を消されても文句は言えぬぞ】


随分とおジジがノリノリである。


「神なら話が早ぇってもんだ!今こっちは酒が消えちまって、ドワーフの生き甲斐が絶たれちまって大変なんだ!この酒譲ってくれ!」


このドワーフ、相当切羽詰まっているのだろうが、神に対しての言葉使いではない。ザックは気安いタイプだけど、流石にそれはどうかと思うぞ。


《俺の知った事ではないわ!》


ザックは大きな声で吐き捨てる様にドワーフを突き放す。

途端に以前スルトと対峙した時の様な息苦しく、空気が重くなる。ドワーフは一気に膝を突きガクガク震えて蹲る。

確か神気だったか…


《ドワーフの酒が消えたのは自業自得。俺が何故お前達の為に何かせねばならんのだ》


酒に手を伸ばしたドワーフは恐らく意識が飛んでいるのだろう。言葉を発する事はなく、ピクリとも動かない。

そんな中、数人の足音が近づいて来る。

服装からしても随分と身分が高そうな、ガチムチだけどお爺ちゃんのドワーフが恭しく鉄格子の前に膝を突く。


「物神様には此方の不手際で大変申し訳ございませんでした。この様な場所では、話もままならないでしょう。すぐ一席を設けます故、何卒、何卒ご容赦下さいますよう…」

《要らぬ。ドワーフの為に酒を用意する義理も無い。何よりこの酒は既に別の者への献上の為に開けただけの事》


え?そうなの?

どうやら知らぬは自分だけの様だ。

カッパンにこっそり質問する。


「ドワーフに牢を開けての為じゃなかったの?」

「多分、ディオニュソスを呼ぶ為じゃないんスかね?」


こんな酒並べただけで、神が来るわけ…

そう思った時、乱雑に封を開けて並べた酒瓶の床が光り、そこからゆっくり迫り上がって来る美丈夫。

てか半裸!!いや、全裸!!

絵画ビーナスの誕生の男性版の様な出立ちだ。

僅かな布地を纏っているが、隠れてねぇぞ!


『呼んだかい?』


呼んでねぇよっと言いそうになったがグッと堪える。


『芳醇な芳しく香りに、ついついドワーフ共の前に姿を現してしまったよ』


空中でクルクル回りながら楽しそうに語る。

尻が見えてるぞオイ!ってか一緒に現れた半裸の美女達が、ナイスポジショニングでディオニュソスの局部をガードしている。そんなこっちを睨まないで欲しい。

こっちだって好きで見てるわけじゃない。


《お初にお目にかかる》

『物神だね。珍しい』

《珍しい?》

『幾年も見ていないね。覚えているのは3000年ぶりかな?』

「さんぜん…んうっ!?」


3000年に驚いて声が出たが、その声をカッパンが押さえた。


「駄目っス旦那!神々の対話に口を挟んだら殺されちまう!」


ヒソヒソ声で忠告を受ける。

そうなのか…スルトさんとの時は大丈夫だったけどな…


【スルトは神ではない。巨魔…巨人だ】

「あんなに魔神っぽいのに?」

【魔神と神も微妙に違う】


うーん、よくわからん。

ヒソヒソ話してる此方を、ディオニュソスはジーッと見てくる。近い近い!!


『この人間、物神と妙な縁があるね』

《俺の知友だ》

『神と人が?面白い事もあるもんだ》


床にはいつの間にか肌触り良さそうな絨毯が敷かれ、砂漠の王様が横たわる様なクッションやパラソルみたいな物まで用意されている。露出神は当然の様に座り、手前にあった酒瓶に手を伸ばす。


『ふむ、なかなか良い酒だ』


グビッと煽り、美女達と戯れ出す露出神。

おい!


ドワーフ共の苦々しい顔ときたら…この神、かなり意地が悪い。


《酒神に戻って来て欲しいと嘆願する者に会った》

『それは…小さき間抜けな雄山羊共かな?』

《そうだ》

『捨て置けば良いさ』

《酒を全て飲み尽くしてしまうと言っておったぞ》


ザックのその言葉に露出神の眉が少し上がる。


『ふむ…まさか私の秘酒に手を出す事は無いと思うが…』

《後、女に飢えていた》

『ふふ…相変わらず盛るしか脳がない』


ザックの言葉に露出神は面白そうに口角を上げ、その反面美女達は嫌な顔をする。確かにこの美女達とあの下品なパリピ山羊では絵にならない。


「カッパン、この美女達は何なの?」

「彼女達はニンフじゃないんっスかね?」

「ニンフ?」

【自然の擬人化したものだ。神にひっ付き自分達では何もしない面倒な奴等よ】


おジジがフンッと鼻を鳴らす。

おジジの言葉に頬を膨らました美女がフワリと飛んできて、おジジにデコピンを喰らわし、クスクス笑って露出神の側に戻る。


【ニンフ如きが儂に何をするか!】

「落ち着いておジジ」


この裸体パーティはどいつも性格は良くなさそうだ。

露出神がおジジをみて、あぁ…と何か思い出した様に、うんうんと頷く。


『その子蜥蜴、1000年前のサラマンダーではないか?』

《おや?当時の事を知っているのか?》


露出神はククッと笑いを零し、掌に光りの球を浮かび上がらせる。その光は、まるで占い師の水晶の様に中に何かを映し出す。

溶岩を雨の様に噴き出している火山。

逃げ惑う動物、魔物達。

舞い上がった灰は厚い雲を作り、風により油絵の様な渦や波空にを描く。雷が降り注ぎ、残っていた木々を燃やしていく。

まさに地獄絵の様だ。


「これをおジジが引き起こしたって事?」


ちらっとおジジを見ると、おジジ自身食い入る様に見ている。


『馬鹿な事をしたものよ。空は死に、地は死に、それにより水も死に、あらゆる物が死に絶えた』

《愚行だな》

【儂は!…儂はそんなつもりなど一切無かった!】


思わず反論するおジジに、露出神がもう片方の手をグッと握ると、その手の中は握り潰されそうなおジジがいた。さっきまで自分の肩にいたはずなのに!


『お前の事など知った事か。ただお前の所業のせいで、僕は大地の神からの預かり物を失ってしまったんだよ。今回同様にね』


「それって…」


思わず口を挟んでしまい、慌てて自分の口を押さえる。


『この時、僕がこの時預かっていた物はネクタールだったんだよ』


聞き覚えのある美味しいジュースが頭を過ぎったが、自分以外のその場にいた者は、それは拙い…と言った顔をして黙る。


「カッパンどういう事?」

「ネクタールってのは、神々が飲む生命の酒…不老不死の霊薬のことっス」

《ネクタールは桃と花蜜から出来ている。もしやそれを預けたのは…》

『大地の女神レアーだよ』


ザックはおジジを見て深い溜め息を吐く。


《お前が仕出かした事は、どういう事か分かってるのか?》

【儂は…儂は…】


我慢の限界で挙手をしてザックを凝視する。


「先生!さっぱり話についていけませんので解説お願いします!」


その場に不釣り合いの声が響き、静寂。

露出神が感情のない顔でこちらを見ている。

ひーー!怖いーー!おジジ同様握られたらどうしよう!


《…すまなかった相棒。状況整理も兼ねて説明しよう》


良かったー!

かなり手汗、脇汗が吹き出しちゃったよ!!


《ネクタールとは神々が飲む酒で、カッパンが言っていた通り不老不死の霊薬だ。これを飲む事で神々は何千、何万年と生き、時には死んだ者さえも生き返らせ、その者を神格へと引き上げる事もできる》

「凄っ!」

《このネクタールは、さっきも言ったが桃と花蜜で作られている。勿論、普通の桃ではない。相棒に分かりやすく言うなら仙果の桃だ》


あれか、桃源郷という言葉のルーツになってる桃。

西遊記というお話にも出てきて、孫悟空が西王母の桃園で実を食い荒らした、というエピソードがある。


《あまり知られていないが、この桃は実をつけるまで時間がかかる》

「桃栗3年柿8年って言葉もあるもんね。どれくらいかかるの?」

《3000年に1度だ》

「えええええーーーー!?」


思わずおジジを見る。

露出神の手の中のおジジは、もう死んでるのでは?と思うほど色味が悪く動かない。

おジジが噴火を起こしたのが1000年前。その直後に桃を植えたとしても実がつくまで、あと2000年かかる。不老不死の神からすれば3000年なんて大した事ないんだろうけど、蓄えていたネクタールも、この噴火で消失。

この霊薬がどれくらいの時間効果が維持できるのか知らないが、場合によってはとんでもない怒りを買ってるのでは?


『これに激怒した神々は沢山いるよ。でも皆それぞれ自分である程度保管しているから、今となれば愚かな羽虫がいた程度で笑い話にもなっているけどね』


その言葉に少しホッとしたが、露出神はやはり性格悪い。


『ただ、女神ヘラは前日の宴で全部飲み切ってしまったから手元が無くなっちゃって、歳を取ってしまうと大騒ぎだったよ。必要以上に力を使わなきゃそんな大して騒ぐ事もないんだけどね…まぁ、あのヒステリックな嫉妬の女神が力を使わず大人しくなんて出来るはずもないだろうけどね』

「な、何故大人しく出来ないと言いきれるのでしょうか?」


恐々質問した自分に、露出神はお酒を煽り飲見ながらチラッとこっちを見、口元から溢れた雫を念力の様な力で、空中でパチンコ玉程の球体にして指で小突く。

すると半開きになっている自分の口の中に弾丸の様に飛んできた!アルコール強いし突然の出来事だし、飛んできたから喉に凄い衝撃が来て咽せる。

苦しい!涙出る!!

悶えてる自分の背中を慌てて摩るカッパン。

この様子を見てゲラゲラ笑う露出神と美女達。

最悪だコイツら!!


『馬鹿だな〜ヘラの夫であるゼウスは性に自由で女神だろうが人間だろうが、はたまた男でも動物でも、気に入ったモノには手を出さずにいられない、最低な下半身の神だよ?ヘラは嫉妬深くて、そんな手をつけられたモノを断罪して回ってるのに、力を使わず大人しく出来るはずないだろ?』


最低最悪、迷惑極まりない夫婦だ!



お読み頂きありがとうございます。

のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。

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