異世界の人間は思ってる以上に変わってる
登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!
ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。
自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。
30年待つくらいなら、30年色々な景色を見たい。
実際10代の若く将来に夢描く年頃では無かった。
トライしたかった山々には未練もあったが、摩訶不思議な世界を見たい気持ちの方が強かった。
【ほいじゃーねぇ、簡単に自分を作ってくれんかねぇ…えーっと、コダマさん、おーいコダさんよーぉ!これどうすんの?うん…うんそう塩梅ダーってヤツ】
電話の向こうから何やら言い合いが始まる。
ツッコミが時折入る。コダマさんという事務員らしき人の説明が時々聞こえ、その後携帯からメール受信の音がした。
【もー分かったゆうのにぃ〜…ワシ一応神よコダマさん、ねぇ!…あぁ〜今ね、アバダーっちゅうもん作る方法送ったんでぇ…それでまぁ、上手いことやってみてみもらえるかねぇ?ワシよう分からんもんで。ほいじゃーの】
通信終了。…丸投げだ。
メールにはサイトに飛ぶURLが載っている。
ゲームはあまりしたことないが、確か甥っ子がこんな感じのゲームをしていたのを正月の集まりで見た気がする。
性別から選べる。
今の自分は…あれ?自分の性別まで思い出せない。
そっと胸と下を触るがどちらもない。
え?どういうこと!?
怖くて頭を触れない。
携帯画面のアバターと同じマネキン仕様のスキンヘッドでないことを祈りつつ、作成に入る。
山に登るならやはり体力1番だ。
迷う事なく男性をタップ。身長や筋肉量まで選べる。試しにボディービルダー並の筋肉量にする。
一気に体が重く感じる。これはダメだ。筋肉美と実用性の筋肉は違う。こんなに身体が重いとトレッキングだけならまだしも、ボルダリングする事は不可能だ。
作りながらワクワクしている自分がいる。
ひょっとしたら以前は女性だったのかもしれない。
試行錯誤の上、動きやすく自分の理想的な体型を見つけ、一安心。外見を弄りたくても正直作る気力もない。初期アバターの顔で短髪に黒眼黒髪のごく普通の顔となった。
次は名前。
中二病的な恥ずかしい名前は御免被りたい。
この世界で覚えやすく発音しやすい名前が良い。
助けてくれた鳥人間に視線を向け、意を決して声をかけた。
「先程は助けて頂きありがとうございました」
「いやいや、面白いもんが見れた」
「そうそう、空の落とし物を拾ったなんて自慢話ができるのに、更にそれが人だったなんて、きっと信じちゃ貰えんかもな」
空の落とし物?
時折、別の世界の何かが空から落ちてくるそうだ。
ただ、人間を拾ったのは初めてらしい。
この世界はどの様な世界か質問する。
当然日本って国もないし地球という星は聞いたことがないとのこと。この世界は魔法もあるし神も悪魔も魔物もいるし精霊や妖精、幽鬼や魔神…まさにゲームの様だ。某ゲームみたいに合成して別の物を作り出したりすることができるのだろうか…
弟に頼まれてレベル上げと勧誘、合体合成といものをやらされた記憶がある。仲魔にするのに会話選択がダメだと襲われるし、物を集られて渡すと騙されて去っていく…今思うと世の中の世知辛さを組み込んだとんでもないゲームだった。
「そりゃいるよ」
「人間は合成して使役してるよ」
やっぱ作れるのか…
とんでもない世界に来たようだ。
「はぁ〜…参ったな」
『名前:ハーマイ・ターナで登録完了。アバター共にアップデート開始します』
「えぇ!?」
ポンッという音が携帯からし、名前登録完了の表示が出ている。リセットボタンを探すが、そんなものも無く、アップデートの読み込みが始まり60%まで進む。慌てて意味もなくタップしたりサイドのボタンを押すがその間に80%、90%と読み込みが進んでいく。
『登録完了』
膝から崩れ落ちる。
そんな自分に大丈夫か?と、オロオロといった感じで手を貸してくれる鳥人間。
最初かなりビックリしたが、とても親切だ。
ありがとう。
「自己紹介が遅れたな。私は鳥族ヒト科のレヴィという」
「あ、えー…ハーマイ・ターナと、いう名前になりました」
後頭部をポリポリと掻きながら、出来たてホカホカの愛着も何も無い名前を告げる。しかし鳥人間レヴィさんは良い名だと褒めてくれる。
聞くところによると、この世界は名前は空から頂くのだそうだ。時代遅れな感じでもキラキラネームの恥ずかしい名前でも、拒否は出来ない。
普通は何の意味も無い一言の名前。貴族や王様など格や地位が上がると、自動で名前が増えるそうだ。
何それ、面倒くさい。
更に増えた名前には意味があり、その意味をに対して空から多大な恩恵を授かる事が出来るそうだ。
参ったな〜って、意味の恩恵って?
今すぐ名前を変えて欲しいと願うが、携帯画面は虚しく『登録完了』の文字から変化はない。
大きなため息をつくと同時にお腹が鳴る。
「とりあえず我々の村にでも来てはどうかな?」
日帰り登山のザックには、今日晩の食事も今後の役立つ物も入ってない。お言葉に甘えてさせて頂く以外の選択肢はない。
「しかし落としビトは何を食すのかな?」
「それはこちらの人と変わらないかと…」
「では誰か頂上まで上がってコア石を取ってきてくれ」
ん?石?
レヴィさんとは別の鳥人間が飛んでいき、すぐ戻ってきた。手には本当に石が数個。色は赤や青、緑に黄色とまるでグミやジェリービーンズの様だ。
「小ぶりしか無かった」
「人間め…無駄で取ったな」
鳥顔なのに眉を顰め不快に思っている様子が分かる。
「あの、これ食べるんですか?」
「人間はな」
「人間はこのコア石のエネルギーと水が食事だ。何が美味いのやら」
深く同意。
これでお腹膨れるのか?
肉、魚、野菜モリモリ食べたい!
どう食べるのか分からないが、1つ手に取り指先で突ついてみるとヒビが入る。
ゆで卵みたい…
ムキムキと剥いてみると、石と同じ色の蒟蒻のゼリーの様な物が出てきた。
いざ実食!
…仄かな甘味…のみ!!
「こんなもんで…腹が膨れるかーーー!」
この世界の人間とは、食について相容れないと理解した。
空きっ腹に石ゼリーが良くなかった。
一層お腹がすいた。
「落としビトは何を今まで食していたのだ?」
「動物の肉とか魚とか野菜とか…果物に乳製品…色々です。レヴィさん達はその…何を食べるんですか?」
恐々聞く。
虫か?虫なのか?
「そうですね、この時期はマボという魚が繁殖期で今脂が乗って美味しいですね」
「雨と絡めて食べると美味い」
「俺はサーペスの焼いたのが良いな」
マボ=マンボウ
サーペス=大きなヘビ
地面に絵を描いて教えてくれる。
名前でその生き物がなんとなくイメージできる。
途中よくわからない言葉があったが…雨?飴?しかも人間より食生活充実している!
「雑食すると、身体の清らかさが失われて力を失うと考えているようです」
?どういう事?
この世界で、合成して別の生き物を生成出来るのは人間だけらしい。その力は神力という物らしく、その力で人工的に合成生物を作り使役しているそうだ。
一部の人間だけなのかと思ったが、難しい事では無いようで、以前人間の子供が合成に失敗して気持ち悪い緑の腐った様な物体を作っていたのを見かけたそうだ。
ポピュラーだが、レベルというか、その神力の量などで作れる物が違う様だ。
…本当にゲームみたいだ…
神力は時間と共に徐々に減っていく。
合成生物を使役した際、それが餌がわりになるそうだ。徐々に減っていけば人間自身弱ってしまう為、神力を補給しなくてはならない。
所謂エネルギーバー的な物が石という訳だ。
神力が満たされれば気力活力が漲り、空腹も感じない。神力を補充する石を食べず、一般の食事だけを取っていると、石を身体が受け入れることが出来なくなり、神力切れで死んでしまうそうだ。
だから一般市民は食事と石を。高貴な人ほど石しか食さないらしい。
何それ!怖っ!!
これさえ食べてれば大丈夫とか、怪しいサプリみたいなんだが…この世界の人間のイメージがマイナスの方向に向かっていく。
「乱獲しない様に規制があるにも関わらず、無断で獲る人間もいて困っています」
「コア石は人間以外の生物の生活にもなくてはならない物ですので」
出会った時の不信感はそういう事か。
石はこの世界の自然がゆっくり地面から溶け出した物らしい。石は自然のエネルギーの結晶で、その蓄えているエネルギーを空気中に溶かす様に放出。それを森や川、海、動植物達が吸収していく。そういった循環システムが出来ているのに、この50年程前から人間の身勝手な乱獲が増えているそうだ。
石=鍾乳石って感じかな?
手の中の青石が、貝の潮吹きの様にプシューっと音を立てて蒼白い煙を吹き出す。少し萎んだ気がした。
成る程。
「人間はここまで来れないので、多分使役した魔者に獲りに来させてる様ですね」
「翼集会で、見回りの強化を提案せねばな」
「あの…なんで人間が来れないんですか?」
気になり、遠慮がちに挙手をして質問。
「落としビトは違う様だが、一般の人間は山の重圧に耐えきれないからだよ」
え?何?神々しい的な?
「あいつら、頭でっかちで神力無いと動く事も出来ないのさ」
「山は神力を受け付け無いので、神力に頼っている人間はこの山を自力で上がれないのです」
嘘でしょ?!
ここ…ただの丘に岩山があるだけだよ?!
小学生でも登れるけど?!
体力無さすぎ問題が発覚。
もう自分の脳内では、この世界の人間のシルエットが、グレイタイプの宇宙人に固定されつつある。
怖すぎる!!
そんな話をしながら30分程歩く。
レヴィさん達の歩について行く事に、落としビトは普通の人間では無いのですね、と驚かれる。
30分のんびり歩くだけで凄いと言われても…
村の門が見てきた。簡素な作りだが趣がある。
木片と土壁でできた塀で囲まれており、よく分からない記号が等間隔で描かれている。
この世界の文字かな?
レヴィさんに続いて門を抜けると、おぉ!と感嘆の声が上がる。
「さすが落としビトですね」
壁の記号は山の力を具現化した物らしい。
人間にとって山と同じ重圧を感じる為、侵入避けなのだそうだ。
え?侵入避け?
人間は合成生物を作る事が出来るが、無から有は作れない。AとBを掛け合わせてCが出来るのだ。では、AとBはどうやって手に入れるのか?
捕まえてくるのだ。
合成素材屋という店がある。そこで購入する方法と、自分で街の外に出て出会った多種族とバトルし弱らせて捕獲。中には交渉して両者納得して合成素材になる者もいるそうだが…
その為、子供が1番狙われやすいそうだ。
夜中に村に侵入して誘拐される事も多かったが、この山の重圧印によりだいぶ減ったそうだ。
人間が外道過ぎる!!
今でも誘拐は少なからず起きている。その場合、使役した魔者に誘拐させるそうだ。人工的に作られたことで、山の重圧の影響を受け、従来の半分以下の行動力にまで落ちているとはいうものの、正直完全に防ぐ事は難しい。
この世界の人間に嫌悪感を抱かずにいられない。
憤りを感じつつご相伴に預かる。
大変美味しゅうございました。
この世界の人間の街に行きたくない。しかしこれからどう生活して行くか悩む所だ。登山するにあたり、必要になる物も、ひょっとしたら人間街にしか無い物もあるかもしれない。
「落としビトはこの後どうするのです?」
「…正直分かりません。ただ…自分は今まで山に登り、山からの絶景を見る事が趣味でした」
「シュミ…?」
「あー…目標というか、生き甲斐というか。30年あの岩のそばでボーっとするより、前の世界で見れなかった風景や景色を見たいと思ってます。ただ山を登るにしてもロープやら必要なものを揃えるには、恐らく人間の街じゃないと揃わない物もありそうなので行ってみるつもりですが…」
価値観が違い過ぎて正直戸惑っている。
そんな感情をレヴィさんは分かってくれた様で、地図を持って来てくれる。簡素な地図だが無いよりはマシだろう。
「我々の村がこの辺り。人間の街はだいぶ離れています。歩くと5日といったとこでしょうか」
「結構ありますね」
「はい。しかし途中までは人間も神力を使って飛んでこれるので、実質2日といったいとこですかね」
え?飛べるの?
所謂、ファンタジーな魔法やらサイキックパワーの様なモノが神力らしい。テレポートとか、ポータル移動的なモノでひとっ飛びか…
「人街に向かうより、こちらに小人族がいます。彼等は物作りが得意なので、ひょっとしたら、その山登り?とやらに必要な道具を作って貰えるかもしれませんよ」
なにそれ、凄い!!
お読み頂きありがとうございます。
のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。




