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異世界で火サスばりのサスペンスを体験

登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!

ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。

自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。

目が覚めたら真っ暗だった。


「痛っ…」


全身が痛い。

瞼を閉じているのと何も変わらない暗黒という表現がピッタリな空間。自分が本当に起きているのか疑問に思い、目を擦ろうとするが手を後ろで縛られている様で動かない。身を捩ると片方の頬がベリッという音がした。

ヒリヒリする…

どうやら床に俯せに倒れている様だ。

頬に貼り付いていた物が、少し粉っぽい感触を残して剥がれ落ちる。多分鼻血が乾いたんだろう。


どれだけの時間が経ったのか…


「ザック…」


自然と涙が出た。

メソメソして鬱陶しい、とザックに言われそうだけど自分で涙を止める事が出来ないので勘弁して欲しい。

どうにか身体を起こし、その場に胡座を掻く状態で座り直す。どうも後ろ手は不便で仕方がない。後ろ手で縛られた輪にお尻を入れて脚を体育座りの状態にして引き抜く。

見事に後ろ手縛りから前縛りに早変わり。

ちょっと一息つき周りを見ても有り得ない程真っ暗だ。


「カッパン…大丈夫かな…」

【…儂の心配はせんのか】

「お…おジジ!?」


まさかおジジが居るとは思わなかった。


「てっきり逃げたかと思ってた」

【それはどういう意味じゃ!?】

「いや…一緒に旅するの嫌そうだったし…」

【嫌に決まっておろう!】


じゃぁ逃げ出すのに絶好のチャンスだったのでは?

そう思ったけど、小さくなったおジジには複数の男達の目を掻い潜って逃げる器量がなかった様だ。


【元の大きさなら、あんなゴミの様な奴等一瞬で灰にしてやったものを!】


ギリギリ歯軋り。

まぁ、それでも独りではないというだけで気持ちは随分と浮上する。人間って現金なやつである。


【…無いよりマシじゃろ】


ほんのり、まさに線香花火の終わり際の様な赤暗い小さな火球がポッと灯される。真っ暗い空間に薄っすらおジジが自分の膝の辺りに居るのが分かる。


「ありがとう…」

【…ふん…】


随分長い時間経った気がする。部屋の暗さは一向に変わらず、密室にでも閉じ込められて居るんだろうか?

おジジにここに運ばれた時の様子を聞くと、この暗いのは闇魔法ってヤツらしい。


「これってどうにかならないモンなの?」

【以前の儂なら造作もないがな】

「小さくした事、まだ根のもってんの?」

【当たり前じゃ!】


くどくどと不満を言われるが、会話する相手がいる事で徐々に落ち着いてきた。


「闇魔法ってどういう魔法?」

【まぁ、闇魔法が使えるとは公で言う事は憚られるとだけは言っておこう】

「え?!それって滅茶苦茶やばい魔法って事?」

【強盗、監禁、隠蔽などに便利な魔法だからの。そういう類の人種と線引きされるじゃろう】


影の中に物を仕舞ったり、暗闇と同化できたり、今みたいに闇に閉じ込めたり出来るそうだ。


「ええー…モノは使い様なのに…」

【人間は腐った性根の輩は多いからの】

「…ぐうの音も出ないなぁ」


特にこの世界の人間は反吐が出る輩が多い。

そんな時、ぐう、とお腹が鳴った。


【…ぐうの音も出んと言っておらんかったか?】

「…面目ない」


そんな時真っ暗フィルターが溶けるように消えていく。慌てておジジを胸元に押し込む。周りを見回すと、木造の古臭い簡素な内装。秘密基地的な物だろうか?視線を正面に戻すと、目の前には以前会った自分勝手カマキリが、顔面真っ赤で怒りを露わにして立っている。

目が合った瞬間平手打ちされた。


「神力が無いなど嘘を吐きよって!」


痛みでチカチカ星が瞬く視界で、言ってる意味が分からずカマキリに再度顔を向けると、ガンガンに蹴られる。子供が蟻を踏みつぶそうと躍起になる姿に似ている。頭の端で冷静に思ってるけど、めちゃ痛い!!

身体を丸めて防御態勢を取る。

その時、床に小さな穴が見えた。

ゆっくり胸元からおジジを出して、穴に落とす。


「(おジジ 逃げろ)」

【………】


真紅の小さな瞳が大きく見開き何か言いかけた時、自分の腹を蹴り上げられて亀のように裏返しになる。

おジジを落とした穴を、自分の背中で蓋をした。

その後はもう痛みで覚えていない。




水をぶっかけられて目が覚めた。

寒い!!

顔を上げると魔法陣の様な模様の上に座らされているカッパンがいた。その対面側に真っ白い鳥が居る。

カッパン同様に変な鎖で動けない様だ。鳥の周りが白い霞の様になっている。


「カッパン!無事!?」

「だ…旦那ぁ…」


力無い返事だが無事の様だ。

2体の間にカマキリ男が立ち、手の平を双方に向けて何やら呪文を唱える。徐々に手の平から青白い光の球が出来てくる。とある有名漫画キャラのビ○クバンアタ○クの様だ。

その気弾がビーチボール位の大きさになると、手から離れ魔法陣の方に飛んでいき、白い鳥が球体に包まれた。が、カッパンを包んだ球体はシャボン玉の様に弾けて消えた。


「〜〜つ!!貴様やはり使役しておるではないか!」

「し、してないです!」


問答無用で殴られた。

どうやら使役していると合成に使え無い様だ。カッパンに使役されている印も無いらしく、でも何度試しても出来ず、業を煮やしたカマキリ男が自分を此処まで連れて来た様だ。

罵詈雑言、罵られながら殴られる。

でも本当に何もしていないのだ。どうしようもない。

いや、使役していても、こんな奴にカッパンを渡す訳にはいかない。だって、だってカッパンはもう…


「仲間をお前なんかに渡す訳ないだろうが!!」


思わず叫んでた。


「この下民がーーー!!」


横に控えていた騎士の様な人の携えていた剣を抜き取り、思いっきり振りかぶって斬り込んで来た。

が、その剣は透明な壁の様なものに弾かれて、男は剣と一緒に無様な格好で床に転がる。


《その粋や良し!!さすが相棒!》

「ザック…?ザ…ザッグゥーーーー!」


姿が見えないがザックの声に、堰を切った様に涙と鼻水を流しながら叫ぶ自分。

情けないが仕方がない。

カッパンが金色の光に覆われて、鎖が弾け飛ぶ。甲羅の中からヨイショっと言う表現がピッタリな、なんとも間の抜けた登場の仕方だが、確かにそこにザックがいた。


「かか、鞄の旦那ーー?!いつからそこに!?」

《街を出て森を歩き出した時からだ》

「え?それって…寝るって言った辺りからって事っスか?え?そんな前から?!」

《こうなる事は目に見えていたからな。俺の替え玉を背負って歩いていたって訳だ。全然気づかない相棒に少し心配になったぞ》

「ザックの阿保ーー!馬鹿ーー!めっちゃ心配したし、めっちゃ痛い思いしたんだぞーー!」

《だろうな。ブッサイクになってるぞ相棒》


なんて事言いやがる!若干楽しそうだし!!


《敵を蹴散らした所で、2陣3陣とやって来るなら、一層の事元を断つ方が早いだろ?》

「何考えてんだ馬鹿!脳筋ーーー!」


ヨロヨロ立ち上がったカマキリ男の鬼の様な形相とはこの事かと言わんばかりの表情で、思わず息を呑んだ。


「こんな…こんな巫山戯た事があるかーーー!使役していないだと!?なら何故合成出来ない!?」

《答えは簡単だ小僧》


カッパンに抱えられ、自分の所まで来たザックが静かだがよく通る声で言う。


《俺がカッパンの甲羅の中にいたからだ。俺諸共合成しようなんて、明らかな神力不足だ》

「…は…?何を言って…」

《お貴族様だからコア石なんて金にモノ言わせて馬鹿みたいに食ってるんだろうが…お前さんは現状燃費が悪いんだよ》

「ザック…それってどう言う事?」

《需要と供給のバランスが取れていないって事になる》

「…ちょっとよく分からんのだけど…」

《そうだな。では話を整理しながら説明しよう》


なんか謎解きサスペンスみたいになって来た…



お読み頂きありがとうございます。

のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。

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