生命と火炎
「え?【精霊憑依】って2体同時とかできるの?」
「さあ?」
・・・よくよく考えてみれば2体以上の【精霊】を【眷属】にしてるプレイヤーって知り合いの中にはいないな。だから、2体同時の【精霊憑依】なんて見たことが無い。確か掲示板にもそんな情報は無かったし・・・できるのか?
俺たちが頭をひねっていると・・・
「できるぞい」
マルコ村長に声をかけられた。そういえば、この人も【精霊士】なんだよな・・・あれ?でもマルコ村長の【精霊】って見てないよな?
まあ、それは後で聞いてみるとして今は本題の方を聞いてみる。
「できるんですか?」
「うむ。というより何故出来ないと思っておるんじゃ?」
・・・なんでだ? 別にできないなんてことは聞いたことは無かったし・・・ああ、そうか。
「【精霊憑依】はLPを消費し続けるじゃないですか。2体同時に【精霊憑依】なんてしたら、あっという間にLPが無くなって解除されてしまうんじゃないですか?」
アスターの言うとおり、【精霊憑依】は強力だが、LP消費による時間制限がネックとなる。
短時間しか使えないからこそ、俺たちの認識では【精霊憑依】はいざという時の切り札になっているわけで、LP消費に繋がるような行動は【精霊憑依】の発動時間を縮める・・・つまり、自分の首を絞める行為に等しいわけだ。
要するに2体同時の【精霊憑依】は『できるかできないか』ではなく『やっても意味無いんじゃないか?』と俺たちは認識していたわけだな。
と、いうような説明をマルコ村長にすると、彼はアウルとミコトを見た後に深いため息をつきながら応え始めた。
「なるほどのう・・・それはお客人がたが連れている【精霊】が特別で強力すぎるんじゃよ。だから消費が激しいんじゃ。上級や中級なら話はまた別じゃが、普通の【精霊】ならそこまで激しい消費はしないものなんじゃよ」
・・・なんと。【精霊憑依】のLP消費量って【精霊】によって違うのか? 俺たちの基準ではアウルとミコト、そしてアシュラが連れているルドラしか【精霊】がいないから分からなかった。
「でもアウルもミコトもまだ中級にもなっていない通常の【精霊】ですよ? まあ、他には無い力を持っているという意味では普通では無いと思いますが」
「特別な力を持っている、という時点で普通じゃないわい。良いか? 普通の【精霊士】というのはだな、大体なりたての頃に力の弱い【精霊】と【契約】を結び、【精霊】たちと共に力を高めていったり、【契約】する【精霊】を増やしていったりするものなんじゃ。複数の【精霊】との同時の【精霊憑依】も珍しくはないわい」
・・・なんか遠まわしに俺たちが普通じゃないと言われているような気がする。アウルやミコトが特別だという点については同意するが。
要するにマルコ村長は、特別な【精霊】と【契約】を結べるのは特別な例であって、普通は普通の【精霊】と何体も【契約】を結ぶのが普通だと言いたいわけだな。
言い方は悪いかも知れないが質で勝てないのなら量で勝負というわけだ。
とりあえず言いたいことは分かったが、それを踏まえて気になることがある。
「マルコ村長から見たらアウルもミコトも特別な【精霊】だってことは分かったけど・・・それならカリンは? 普通なの? 特別なの?」
カリンが普通の【精霊】なら【精霊憑依】による消費も少ないんだろうけど・・・
「特別に決まっておるじゃろう」
ですよねー。【火の精霊】は知ってるけど【火炎の精霊】っていうのは初めて知ったし。これまでの経緯を聞いてもカリンが普通の【精霊】だとは思えないし。
「・・・それって結局、ミコトもカリンも特別な【精霊】だから【精霊憑依】は長くは続かないってことなのでは?」
まあ、結局はそうなんだろうな・・・だが、出来ないわけではないということも確かのようだ。
「一度試しにやってみたら良いんじゃない? ・・・最悪、【LPポーション】をがぶ飲みし続けるって言う手も無い事もないだろうし」
「・・・すごいアイテムの無駄使いな気がしますが・・・確かに一度試してみましょうか。カリン!【精霊憑依】!!」
「ふぁい!!」
アスターの言葉にカリンが元気良く声を上げると、カリンが赤い光を放ちながらアスターの体の中に吸い込まれてく。
その結果、赤いオーラに包まれたアスターがその場に立っていた。
「おお! 見た目強そう・・・その【精霊憑依】の効果は?」
「【火属性耐性】と攻撃時の【火属性】の自動付加だそうです」
ふむ、つまり対【邪霊】戦においてはいちいち【魔法付加】をつけなくても戦えるようになったっていう事か。これは確かに便利だな。
「あい! あーいー!!」
お、ミコトが騒いでいる。多分、私も私も!って言ってるんだろうな。
「はいはい。ミコト!【精霊憑依】!!」
「あい!!」
今度はミコトが緑色の光を発しながらアスターの体の中に吸い込まれていった。
そしてアスターは、赤と緑が交じり合うオーラを放っている。ますます強そうになったな。
「・・・で、どんな感じ?」
「うーん、確かに消耗が激しいですね。おそらく5分もこの状態を保てないと思います。あと、頭の中でミコトとカリンの言葉がガンガンに響いてきます」
ふむ、数分しかその状態を維持できないんじゃあ、探索は無理があるな。数分おきに【LPポーション】を飲み続ければ一応は長時間維持もできるんだろうが・・・いくら数があっても足りなくなるだろう。
・・・ミコトとカリンはアスターの体の中で何をやっているのだろうか? まさかケンカしているわけじゃないよな?
確認が済んだ所で、アスターは【精霊憑依】を解除し、ミコトとカリンがアスターの体の中から出てくる。
「うーん・・・やっぱりミコトも僕たちと一緒にアークカイザーに乗った方がよさそうだね。ミコト、悪いんだけど僕たちと一緒に来てくれるかい?」
「あいー・・・」
ミコトは残念そうだが・・・今度は嫌とは言わないようだ。実際に試してみてアスターの負担を知ったからだろうな。頭では分かっても納得は出来ないといった所か。
「だう! だーうー!!」
「・・・あいー」
「ふぁい! ふぁいふぁい・・・ふぁいー!!」
「・・・あい!!」
・・・どうやらアウルとカリンの説得を受けてようやくミコトも納得してくれたようだ。なんかこうして見るとカリンの方がお姉ちゃんっぽいな。・・・いや、待てよ? カリンって四百年前に生まれたんだよな? ミコトが何時生まれたのかは知らないが、もしかしたら本当にカリンの方が年上なんじゃ・・・考えないようにしよう。
「ミコトちゃんは主想いの良い【精霊】ですねー」
「あい♪」
今まで見守っていたアニスがミコトの頭を撫でている。ミコトも褒められているのがわかったようで機嫌も戻ったようだ。フ、ミコトもまだまだ子供だな。
と、ここで偵察中の【ガタック君】から連絡が。
「・・・【ガタック君】が何か見つけたみたいだ。それじゃあ、さっそく行ってみようか」
「分かりましたわ」
「了解です」
【封印の結界】を張ったアニスと、再びカリンと【精霊憑依】したアスターが熱い海へと飛び込む。
続いて【クランメカロイド】となったアークカイザーにアーテル、アウル、ミコトが乗り込む。
そして最後に俺が乗り込もうとした所で・・・マルコ村長に聞いてみた。
「そういえばマルコ村長、村長の【精霊】は一緒に来ていないんですか?」
俺の質問にマルコ村長は渋い顔をしながら応えた。
「・・・実はワシの【精霊】は・・・家出中なんじゃよ」
「・・・は? 家出?」
なんか今、予想外の言葉を聞いたような気が・・・
「ほれ、今はワシのことを気にしている暇はないじゃろう。早く行ってくるんじゃ」
なにやら誤魔化そうとしている雰囲気だが・・・確かに先行しているアニスやアスターを待たせるわけにも行かないか。
俺はアークカイザーに乗り込み、熱い海の中へと潜っていった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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