かつての伝説の海へ
===移動===>【レッドフィル海】沖合い
新たな仲間を迎えた俺たちはあらためて海底に沈んだという【サラマンデル島】を目指していた。
現地へはマルコ村長が所有の船を出してくれるとのことで、その好意に甘えさせてもらうことにする。
村長の話だと現地へは30分ほどで着くそうなので、それまでの間、俺たちは短い船旅を満喫していた。
「ふぁい! ふぁうー・・・ふぁい!!」
「ふむふむ・・・ゴメン、よくわからないや」
「ふぁい!?」
とはいえ、移動中の時間も無駄には出来ない(暇とも言う)のでアスターが【火炎の精霊】であるカリンにどんな力を持っているか聞き取り調査を行っていた。・・・ただし、状況は芳しくない。言葉の壁は厚いようだ。
なんとかカイザーの翻訳でカリンの言っている内容は分かると言えば分かるんだが・・・
『火をブアァってだせる』
『火をおっきくしたりちっさくしたりできる』
『火をクネクネさせることができる』
と、こんな感じの抽象的な表現ばかりで、いまいちよく分からない状況だった。とりあえず火を使って色々できる事だけは分かったが。
マルコ村長の話だと【火炎の精霊】は【火の精霊】と同じ系統・・・その亜種らしい。標準的な【火の精霊】より強い力を持っているそうだが・・・詳しくはマルコ村長にも分からないそうだ。
だからこそ、アスターはカリンに色々聞いているわけなんだが・・・この様子だと、カリンの方も自分の力をよく把握していないんじゃないかと思ってしまう。
試しに何かやってみてとお願いすると・・・カリンは指先から火を出した。さらにその火をゴムのようにうにょーんと伸ばしたり、ハート形や星形に形を変えたり、火で空中に文字を書いたりと、かなり器用な芸当をやって見せてくれた。
「だうー!!」
「あいー!!」
「クルー!!」
それを見たアウル、ミコト、それにアーテルまで一緒になってはしゃいでいる。そんな彼らを見て、カリンもドヤ顔している。
「さすが【火炎の精霊】ですわね・・・ここまで見事に火を操るなんて・・・」
「そうだね」
確かにアニスの言うとおり、カリンの火さばき(?)はすごかった。
ゲームの掲示板でも議論されているらしいが、どうも【精霊】が作り出す火と、俺たちが使っている【火魔法】の火は別物らしい。
俺たちが【火魔法】を使う場合は【ファイアボール】や【ファイアランス】など、予め決まった形の物を放つ事になるのだが、【精霊】が作り出す火は【精霊】の意思次第で自由に形を変えて出すことが出来るのだそうだ。
つまり、今カリンがやったように火の形を自在に変えるというのは【火魔法】では出来ないということだ。出来るのはせいぜい大きさや威力を調節したり、ラングが以前使用していた【魔力操作】で遠隔操作したりするくらいだ。
しかし、【火の精霊】はスキルも使わず同じ事ができる。しかも、まるで自分の手足を扱うかのように簡単に。
勿論、威力云々は話が別だ。威力に関しては本人の【魔法攻撃力】に依存するし、使用するスキルやそのレベルによっても差ができるからな。
しかし、火の操作という点においては【火の精霊】の右に出る者はいない。まさに火を司る【精霊】というわけだ。
掲示板では、最終的に【精霊】が作り出す火と【火魔法】、どちらの方がより強力なのかという点が議論されているらしいが、当然、まだ結論は出ていない。なんでもその決着を付けるべく、【火の精霊】を【眷属】にした【精霊士】と【火魔法】を極めんとする【魔法士】との間で壮絶なバトルが繰り広げられているとかなんとか。
・・・カリンが通常の【火の精霊】よりも強い力を持っているのだとしたら、もしかしたらその議論に決着をつけられるだけのポテンシャルを秘めているかも知れないな。頼もしい限りである。
「ア、アルさん! どうやらカリンは【乾燥】のスキルを持っているみたいですよ! これでドライフルーツもあっという間にできそうです!!」
・・・アスターよ。注目するポイントはそこなのか? いや、確かに便利なスキルであるとは思うよ? しかし、戦う力よりもそっちに注目するとは・・・どうやら、ポテンシャルはあってもカリンが議論に参加することはなさそうだ。
まあ、そもそもアスターはあんまり積極的に戦いに出るタイプじゃないからな。・・・武器を持ったら豹変してしまうけど。
まあ、それは本人たちの問題だから任せるとして・・・そういえば、戦う力っていうキーワードで一つ思い出した。
「・・・そういえばアニスお姉ちゃんってどんな戦い方をするの?」
よくよく考えてみれば俺はまだアニスが戦っているところを見ていない。
最初に会った時、アニスは【封印の鎖】とやらをジャラジャラ出してきてこちらの動きを封じてきた。
アニスの力が相手の力を封印するものだというのは分かっているんだが・・・【封印の鎖】はあくまでスキルのようだし、封印はあくまで封印。相手を倒すまでには至らないはずだ。
となればアニスにはモンスターや【邪霊】に対する他の攻撃手段があるはずだ。
「そういえば皆様にはまだお見せしていませんでしたわね。私の武器は・・・これです」
そう言ってアニスが見せてくれた武器は・・・フレイル型の【モーニングスター】だった。
「・・・」
「・・・」
「・・・あら? どうなさいました?」
・・・いや、どうもこうも・・・マジかい。
見た目や仕草から、どこか上品なお嬢様感をかもし出しているアニスの使っている武器が・・・まさかの【モーニングスター】だとは・・・いや、【モーニングスター】は確かに良い武器だよ、うん。
「普段はこの【モーニングスター】に【属性付加】をかけて戦っておりますのよ。少々扱いにくい武器ではあるのですが・・・慣れてくればどんな敵も木っ端微塵ですわ!」
アニスが持っている【モーニングスター】は短い柄の先に鎖が繋がっており、鎖の先にはトゲが生えた鉄球が繋がっている。確かにこんな物騒な物をぶつけられたら相手は木っ端微塵だろうね。
しかもアニスには例の【封印の鎖】もある。
【封印の鎖】で相手を縛り、何も出来なくなった所をあの鉄球で・・・
ガクガク((( ;゜Д゜)))ブルブル
「フフフ、どうなさったんですの? アルさん?」
・・・なんかアニスの笑顔が怖い。
アニスって上品な見た目とは裏腹に・・・意外と過激なのか? いや、過激なのは最初に会った時からだが・・・もうちょっとおしとやかな感じかと思った。
人っては見た目からは分からないもんだなぁ(遠い目)。
「・・・お客人がた。もうすぐ着くぞい。前を見なされい」
ほっ、良かった。話が逸れた。
これ幸いとアニスから目を離し、船前方を見る。
そこにあったのは・・・
「霧・・・ですか?」
そう、船の前方には深い霧が立ち込めていた。まったくと言っても良いほど霧の中が見えない。
「違うぞい、お客人。あれは霧ではなく・・・湯気じゃ」
「「「はい?」」」
・・・そういえば【サラマンデル島】は火山島・・・それが海に沈んだという事は・・・
「海底に沈んだ【サラマンデル島】じゃが、火山の動きは未だに健在じゃ。まあ、四百年前ほど被害が出るほどではないが・・・海底火山と化した元【サラマンデル島】の熱によってこの近海の海は沸騰しておるのじゃよ」
・・・マルコ村長? 俺たちにそんな煮えたぎった海に飛び込めって言うんですか?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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