仲良くなる為には
「ほほう、これは珍しい・・・あの子が他の【精霊】と仲良くしているとはの」
ボーっとしている【精霊】3人を見てマルコ村長がそう言っているが・・・あれを仲良くしていると言うのか? いや、確かに3人仲良く並んでいるように見えるけど・・・会話もせず空を見上げているだけじゃないか。
「アーテル? カイザー? 一体何が・・・何してんの」
説明を求めるべくアーテルとカイザーを探したが・・・【成体】化したアーテルとカイザーが大量の【精霊】たちに埋もれていた。比喩でもなんでもなく文字通りに埋もれていた。もしくは大量の【精霊】たちを体にへばりつけているとも言う。
「クルー・・・」
「マスター・・・」
辛うじて顔だけが見えたが・・・その顔には疲労と共に『助けて』と言っている様な気がする。
「おお! これはすまんのう・・・ここの【精霊】たちは刺激というものが少ないせいか、どうも珍しい物に目が無いようでのう。これ、お前たち・・・お客人たちが困っておるじゃろう。離れなさい」
【精霊】たちはマルコ村長の言葉を聞いて素直にアーテルとカイザーから離れていった。
そして今度は村長に群がっていく。
・・・村長の姿が見えなくなってしまったが、下手に声をかけると自分もそうなってしまうだろうと察して俺たちは何も言わないことにした。
「大丈夫? アーテル、カイザー」
「クルッ!!」
「動作ニ支障無シ・・・シカシ、初メテ疲労トイウモノヲ実感シマシタ」
どうやらアーテルは疲れはしたもののそれなりに楽しかったようだ。カイザーは・・・うん、君にはいつも苦労をかけるね。というかロボットに疲労を感じさせるとはここの【精霊】たちはどんだけ元気なんだ。
「それで、あれは一体どうしたの?」
俺が指差したのは、この騒ぎの中でも未だにボーッとしているアウル、ミコト、謎の幼女の三人だ。
君たち、マイペース過ぎじゃない?
なぜこれだけ騒がしい【精霊】たちの中であの三人だけ静かなのか。せめてもうちょっと・・・今も揉みくちゃにされているマルコ村長を気にかけてやって欲しい。
二人と一緒にいる【精霊】の影響だろうか?
その【精霊】は見た目はアウルやミコトと変わらないくらいの幼女で、赤い髪に赤いドレスを着た、いかにも活発そうな雰囲気なんだが・・・本人は至って静かなものである。
「ドウモ二人ハ、アノ【精霊】ノコトガトテモ気ニナルヨウデ、積極的ニ話カケテイタノデスガ・・・アノ【精霊】ハ全クノ無反応デ・・・試行錯誤ノ末、自分タチモボーットスル事ニシタヨウデス」
・・・どういう試行錯誤?
いや、相手と仲良くなるには有効なのか? 確かラングの奴が前に言っていたな。相手と手っ取り早く仲良くなる秘訣は共通点を見つけることだと・・・共通の友人、共通の話題、共通の趣味などなど・・・もしやアウルたちもそれが分かっていて・・・?
「だうー・・・」ボー
「あいー・・・」ボー
「ふぁいー・・・」ボー
・・・うん、絶対そんな事考えてないな。ただボーっとしているだけだ。
しかし、どうしたものか・・・アウルたちに新しい友達(?)が増えたのは喜ばしい事だが・・・俺たち、そろそろ出発しようとしているんだが? というかアウルたち、俺たちが来たことも気づいてないんじゃないか? どんだけボーっとしてんだよ。
こんな状況じゃあ、無理に引き離すのも忍びない。
「アルクさん、ここは僕に任せてください」
と、ここで名乗りをあげたのがアスターだった。
そんなアスターが取り出した物・・・ってそれはまさか!?
「アーニャさん特製野菜カレーです!!」
そう・・・それはこれまでにも何度も登場したアーニャが作ってくれたカレーだ。
しかし、アスターが持っているカレーは今までのカレーとは一線を画すシロモノだ。なにせカレーに使われている野菜は全てアスターの畑で収穫された【精霊界】産の極上の素材。
それをふんだんに使われたカレーはまさに至高。
その香りは例え三途の川を渡ろうとする死者ですらこの世に呼び戻してしまうだろう。そして一口でもそれを食べればたちまち幸福の後に昇天してしまうだろう。・・・生き返ったり昇天したりで忙しいが、まあそれだけ美味しいってことだ。
現に俺たちはアーニャが作ってくれたそのカレーをその日の内に・・・というか10分もしないうちに食らい尽くしてしまった程だからな!
しかし、アスターの奴・・・ここでその最終兵器を出してくるとは!
「だうっ!?」
「あいっ!?」
「ふぁいっ!?」
案の定というか、その匂いに釣られてアウルとミコトと・・・赤髪の幼女【精霊】まで一緒になってアスターの元にやって来た。
うむ、素晴らしい瞬発力だ。アスターがカレー鍋の蓋を開けてから反応するまでコンマ1秒もかからなかったのでは無いだろうか? そして同じく反応した赤髪の幼女【精霊】も・・・できる。
「はいはい。慌てなくてもあげるからね。これを食べたら出発だよ」
「だう♪」
「あい♪」
アウルもミコトもご機嫌だな。二人も味を良く知ってるからな。
「・・・ふぁう?」
そして一人だけ部外者の幼女【精霊】は『私にはくれないの?』と言わんばかりに可愛らしく・・・もしくはあざとく・・・首をかしげながらアスターを見る。
「勿論、君も食べて良いよ」
「ふぁい♪」
アスターが笑顔でカレーをよそってあげると・・・おお、喜んでる。喜んでるよ、幼女【精霊】。先ほどまでボーっとしていたのが嘘のようだ。
・・・しかし、分かっているのかアスターよ。そのカレーはお前にとって諸刃の刃だという事を・・・
「あの・・・アスターさん?」
「はい? あ、アニスさんも食べますか?」
「それはありがたいのですが・・・その・・・後ろに・・・」
アニスの言葉にアスターが振り返ると、そこには先ほどまでマルコ村長に群がっていた大量の【精霊】たちが・・・というかマルコ村長も一緒になってアスターを・・・否、アスターが手に持っているカレー鍋をこれでもかというくらい凝視している。
これはもう全員に分けなきゃいけない流れだろう。
・・・アスターよ。俺も食い物で釣る作戦は頭に浮かんでいたんだよ。ただな・・・多分、こうなるだろうと思って自重したんだが・・・まだまだアスターも見通しが甘いな。
「あ、アルさん・・・」
はいはい、わかってるよ。
アスターの持ち分だけじゃこれだけの人数をまかないきれないからな。
俺の分も出してやる事にしよう。元々アウルの分は俺が出さなきゃいけないもんだしな。
こうして急遽開催されたカレーパーティによって出発が遅れたことは言うまでも無い。
・・・
・・
・
「だうー♪」
「あいー♪」
「ふぁいー♪」
・・・カレーを食べて満足げな声を出すアウルとミコトと幼女【精霊】。っていうか君たち、すっかり仲良くなってるじゃん。やっぱりカレーは偉大だな。
「いやはや・・・このようなご馳走を分けてもらって申し訳ない、お客人」
「いえ・・・」
アンタも【精霊】たちに負け劣らずカレー食いまくってたからな、マルコ村長。その分、しっかり働いてもらうぞ。・・・とりあえず、その口についたカレーをちゃんと拭け。
「しかし・・・あの子があのような表情を見せるとは思わなんだ」
そう言ったマルコ村長の視線の先には幼女【精霊】の姿が。
確かにアウルたちと並んで(* ̄ω ̄)な表情をしているが・・・そういえばあの子ってさっきまで無反応でボーっとしてたんだっけ?
「あの子が何か?」
どうもマルコ村長はあの子を特別扱い・・・とまでは行かないが、気にかけているように思える。
「うむ。あの子はな・・・四百年前、【サラマンデル島】が海に沈む直前で生まれた・・・【火炎の精霊】なのじゃよ」
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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