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楽園の結末

マルコ村長はあくまで淡々と過去にあった出来事として話しているが・・・彼にとって、そして当時の住人たちにとってどれほどの苦渋の決断だったのかは・・・想像に難しくない。


「幸いと言うべきか、その頃は周囲の戦争や紛争も小康状態にあった。

まあ、火山の噴火による被害が広範囲に少なからず出たから、戦争どころではなくなっただけかもしれんがの。

おかげでワシらがこの地まで逃げ延び、住み始めるのには問題は無かった。

無論【サラマンデル島】ほど豊富な自然があったわけではなかったから苦労はしたがな。

少なくとも人的な被害や妨害を受ける事も無かった。

それどころか、噂を聞きつけた冒険者たちがこの地を訪れ、援助までしてくれたんじゃ」


そういえば冒険者エルクスの著書にもそんな記述があったな。過去に勇敢な冒険者が【サラマンデル島】を調査したとかなんとか。


冒険者は傭兵ではない。なので戦争に加担する事も無い。


しかし、それ故に冒険者は戦争地域に大手を振ってやってくる事も出来ないのだ。例え人助けが目的であったとしても、力を持つ冒険者がやって来たとなれば難癖を付けてくる奴が必ず出てくる。下手をすればかえって戦火を広げかねない。


なので冒険者は、()()()()戦争に首を突っ込んだりはしない。・・・あくまで表向きは、だ。戦争への加担は禁止されても人道支援を禁止されるいわれは無いのだ。


というわけで、戦争被害者たちをこっそり支援する冒険者たちは結構いるらしい。


「冒険者たちの手助けもあってなんとか我らはこの地で生活し、島に残ったポーロ師匠たちにも物資を送る事ができた。

そして島の方じゃが、ポーロ師匠たちの尽力もあって噴火の被害もそれ以上広がる事は無かった、

・・・が、ワシも島には何度か足を運んでこの目で確かめて来たが、島は酷い有様じゃったよ。

いくら【火の大精霊】の力があったとしても、とても人が住めるような場所ではなくなっていた。

冒険者たちから送られてたアイテムや彼らから教わった【魔法】が無ければ早々に手詰まりじゃったじゃろう。

だからこそ、ワシらもポーロ師匠たちも冒険者たちの協力に感謝しているのじゃよ。

この村の住人たちはお主らに対して好意的じゃったじゃろ?

それは今になってもなお、冒険者たちへの感謝を忘れておらぬからじゃよ」


つまり、俺たちがこうして話を聞くことができるのも、その先輩冒険者たちのおかげだってわけだ。しかもこの話って五百年くらい前のものだろ? なのに今もって感謝を忘れないとは・・・ここの住人たちはどんだけ義理堅いんだ。


「それから百年ほどかけてポーロ師匠たちは災厄を鎮めていった。

最初の頃は災厄を島に押しとどめるだけで精一杯じゃったが、時が経つにつれて【精霊】と【精霊士(エレメンター)】たちの力も増していき、徐々に災厄を押し返すことができていったのじゃ。

ワシが最後に確認した時は、三つの火山の内、一つは完全に沈静化、残る二つの内の一つは噴煙が上がる程度にまで抑えられ、残る最後はまだ噴火しておったが、それも時間の問題という所まで行っていたはずじゃ」


三つの火山の内、一つが沈静、一つは噴煙、最後の一つだけ噴火状態・・・同じだな、【精霊界】の【サラマンデル火山】と。その当時の状況を再現しているのか?


「そう・・・時間こそかかったがこのまま順調に行けば元通り、とは行かずともまた平穏な暮らしに戻れる・・・そうワシらもポーロ師匠たちも思っておったのじゃが・・・そこに邪魔者が現れた。

その時には既に各地の噴火の被害は収まり、時勢は再び戦争の気配を出し始めておったのじゃ。

戦争を望む良からぬ者たちが再びワシらの前に姿を現したのじゃ。

しかもじゃ・・・よりにもよって【火の大精霊】を狙ってな」


・・・この周辺の事情は知らない。知らないが・・・そこまでして戦争をしなければいけないのか? そこまで追い込まれるような何かがあったっていうのか?


しかも・・・


「そんな・・・【火の大精霊】たちは被害を広げないよう食い止めているんですよね。なのに【火の大精霊】が島を離れたら自分たちの首を絞める事になりかねないのに・・・」


言ってしまえば、自分たちを守ってくれている防波堤を自ら取り外すようなものだ。とてもじゃないが正気とは思えない。


「はて・・・良からぬ者たちはその事を理解していなかったのか、そうまでして戦争を行うほど追い込まれていたのか・・・・誰が犠牲になろうが自分たちには関係無いと思っていたのか、今となっては分からんよ」


「「「・・・」」」


・・・一つはっきりしているのは、その戦争で犠牲になるのは罪の無い一般人たちだってことだよな。


「無論、そんな事はワシらも許容できん。

ワシらも総力を以て迎え撃ったのじゃが・・・良からぬ者たちもただやって来たわけではなかった。

奴らは異世界よりもたらされた【魔法】や【兵器】を使ってきおった。

さらに言えば・・・これは言い訳かもしれんがワシらの中でもより強い力を持つ【精霊】と【精霊士(エレメンター)】たちは【サラマンデル島】で災厄を抑える役割を担っていた。

戦力的に劣っていたワシらは・・・奴らに囚われてしまった。

そして人質として【サラマンデル島】へ連行されてしまったんじゃ」


・・・これは・・・この先の展開は何となく読めた。だが、その事を話させて良いのだろうか。マルコ村長にとってもトラウマのはずだ。


・・・いや、わざわざ話すという事は何か理由があるはずだ。


「【サラマンデル島】に着いた奴らはワシらを人質としてポーロ師匠たちの前に差し出しだ。

そしてこう言ったのじゃ。

【火の大精霊】を差し出せ、と。

当然、ワシらもポーロ師匠たちもそんな事をすればどうなるか説得しようとしたのじゃが、奴らはまったく耳を貸さなかった。

ワシらが人質として囚われている以上、ポーロ師匠たちは手を出す事はできん。

かといって【火の大精霊】はポーロ師匠にとって六百年以上を共にした家族以上に大切な存在じゃ。

そんな【火の大精霊】を良からぬ奴らに渡す事もできん。

ポーロ師匠が苦悩しているのはワシらにも良く伝わった。

じゃから、ワシらも決意したんじゃ。

このまま人質として利用されるくらいなら・・・自決しようと」


・・・!? マルコ村長たちはそこまでの決意を・・・


「しかし、それも無駄じゃった。

ワシらが自決しようとしている事を察した奴らの一人が、苦悩しているポーロ師匠を撃った。

突然の事に誰も反応できず・・・ポーロ師匠は凶弾の前に倒れてしまった。

おそらく、奴らは主さえいなくなれば【火の大精霊】を捕らえるのも容易じゃと思ったのじゃろう。

しかし、実際にはそうは無かった。

契約した主を失った【火の大精霊】は・・・怒り狂った。

怒りに我を忘れた【火の大精霊】は【火の大邪霊】へと変貌し、敵味方問わず暴れ始めた。

ワシらの中にも犠牲者が出てしまい、さしもの奴らも危険と判断したのか、ワシらを置いて逃げようとしたのじゃが・・・【火の大邪霊】がそんな事を許すはずも無く、次々と奴らを葬っていった。

それが逆にワシらが逃げ出すチャンスとなってしまったのは皮肉じゃが・・・異変はそれだけではすまなかった。

隕石と共に飛来し、島の奥深くで根を張っていた悪意ある天災・・・【ガティアス】が【火の大邪霊】に取り憑いてしまったのじゃ」


「「「!?」」」


【ガティアス】が隕石と共に飛来していただと? しかも島に根を張っていた?


「【サラマンデル島】の噴火は隕石によるものではなかったのじゃ。

全ては()()()()()()()()()()()【ガティアス】の仕業じゃった。

それでも【精霊】たちの力によって【ガティアス】の力は少しずつ弱められていったのじゃが・・・【火の大邪霊】の怒りに反応し、主を失った【火の大邪霊】に取り憑きよったのじゃ。

悪しき存在に囚われてしまった【火の大邪霊】は溶岩の巨人へとその姿を変えた。

その力は凄まじく、良からぬ者たちは全滅、ワシらも多数の犠牲者を出しながら島より逃げ出した。

そして、悪しき存在に囚われた【火の大邪霊】の力に耐えられなかったのじゃろう、【サラマンデル島】は・・・海の底へと沈んでいった」

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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