化かし合い
こんにゃろう・・・以前、そっちから襲ってきたくせにまさか俺の顔を忘れたっていうのか!
と、瞬間湯沸かし機のごとく沸騰しかけたが、よくよく考えてみれば今の俺は【リリットエルフ】・・・見た目子供な種族に【転身】中だった。
普段とはかけ離れた姿・・・アスター曰く面影はあるから近しい人間ならわかるだろうとの事だが、一度しか会った事が無いアニスには今の俺とアルクが同一人物だなんて考えには至らないだろう。
・・・なんて考えるにはいささか都合が良すぎるか。
アニスたちがこのゲームの運営の誰かと繋がっているのであれば【転身】スキルの事を知っていてもおかしくない。【エイジア】のような年齢を操作できる種族だってあるわけだし、見た目が幼くなったくらいで誤魔化せると考えるのは・・・楽観過ぎるな。
しかし、今の所アニスは俺のことをアルクだと分からないという体で行くようだ。
なら俺もそれに乗らせてもらって一芝居うたせてもらおう。
ここから先は・・・化かし合いだ。
「フフン! 僕が誰かって? 良くぞ聞いてくれた! 僕こそがあの【アークガルド】の新メンバー! その名もアルだ!!」
「「ええ!?」」
俺は敢えて見た目どおりの子供っぽい喋り方で自己紹介する。勿論、新メンバー云々はでっちあげの嘘っぱちだ。
案の定、アニスは困惑の声を上げた。おそらく【アークガルド】に関して自分の知らない情報に戸惑っているのだろう。・・・アークカイザーのコクピットからも戸惑いの声が聞こえてきたが気のせいだろう。
しかし、アニスは戸惑いつつも・・・
「まあ、そうなのですか!? 貴方がたがあの高名な【アークガルド】なのですわね! お会いできて光栄ですわ! 私、ソロプレイヤーのアニスと申します。助けて頂きありがとうございます!」
と、捲したててきた。フッ、アニスも乗っかってきやがったな。しかもさらっと嘘言ってるし。アニスにはアギラやカオスたち仲間がいるだろうが。
しかし、俺はそんな考えはおくびにも出さずに話を続ける。
「えーっとアニス・・・さん? 色々聞きたいことがあるんだけど・・・良いかな?」
「ええ! 勿論ですわ!!」
・・・おお、アニスの奴・・・てっきり適当な言い訳を並べて逃げ出すのかと思ったが、こっちの質問に答えてくれるらしい。中々良い度胸してやがる。
「じゃあ、聞くけど・・・その姿、アテナお姉ちゃんやアルマお姉ちゃんとそっくりだけど・・・二人の姉妹か何か?」
アイツらをお姉ちゃん呼びするのは正直笑ってしまいそうになるが・・・それはともかく、アニスにとっては核心を突く質問だと思うが・・・どう答える?
「いえいえ、とんでもない! 私、ただお二方の大ファンで、お二方に少しでも近づきたくて形から入ってみました! ・・・どこかおかしいですか?」
「・・・うーん・・・おかしくは無い、と思うんだけどねー」
いや、おかしいよ・・・と言ってやりたい。いくらなんでもそっくり過ぎる、と。
しかし、ゲーム上問題があるかと言われれば俺としても何も言えなくなる。そもそも厳密に言えば髪の色など異なる箇所もあるわけで、たまたま似たような顔つきになったと言われればそれまでだ。
リアルならともかく、外見が弄れるゲームの世界においては容姿については強く攻めることが出来ない。
・・・ならば攻める方向を変えようか。
「・・・ちなみにアテナお姉ちゃんやアルマお姉ちゃんと会ったことは?」
「面と向かってお話したりした事はありません。せいぜい遠目で眺めた事があるくらいです。私としては機会さえあれば是非お伺いしたい所ですが・・・」
「・・・ふーん。じゃあ僕のほうからアテナお姉ちゃんとアルマお姉ちゃんに話してあげようか? アニスさんのことを知ったら二人も是非会いたいって言うと思うよ!!」
さあ、これならどうだ? わざわざ俺たちの記憶を消すような真似をしたんだ。アニスだって二人には会いたいとは言わないはず。
「本当ですか! それなら是非お願い致します!!」
しかし、アニスは予想に反した反応を見せる。その仕草には戸惑いこそあるものの、不自然な点は見受けられない。・・・いや、不自然なまでに自然に振舞っていると言うべきか。
これはいざとなったら記憶を消せば良いと思ってる余裕から来るものなのか? それとも本当にアテナやアルマに自分の存在がばれても構わないと思っている?
アニスの態度からは判断出来ないな。
・・・なら、ちょっと変化球を投げてみるか。
俺はジッとアニスの事を見つめる。
何かを伺うように・・・疑うように・・・
「えっと・・・何か?」
俺の不躾な視線に居心地悪そうにするアニス。子供の目っていうのは純粋で嘘を見抜こうとするからな。・・・今の俺もそうなのかはわからんが。
そして口を開く。無邪気に悪事を暴こうとする子供のように。
「一応聞くけどお姉ちゃん・・・悪い人じゃないよね? アテナお姉ちゃんやアルマお姉ちゃんのフリをして悪い事とか・・・してないよね?」
変化球かつド直球な質問をしてみる。聞きにくいこともズバッと聞いてしまうのは子供ならではだよな。
案の定、アニスは慌てだしだ。
「め、滅相もありません! そもそも 私はつい最近ゲームを始めたばかりでして・・・ソロプレイヤーでお友達もおりませんし・・・そんな悪事なんて・・・」
・・・まあ、否定するよな。
若干、ボッチ自虐も入ってるが・・・しかし、この慌てようは俺が想定していたものとはどうも違う。
もうそろそろ俺に対して不審感を抱き始めてボロを出してもおかしくないはずだ。
そもそもアニスはなんでこうも長々と会話しているんだ? 以前やったように俺たちの記憶を封印して何事も無かったかのようにすればそれで良いはずなのに。
なにか、それが出来ない理由が? それとも・・・
「・・・うーん。何も悪い事してないんだったら良いや。お姉ちゃんたちに会わせても・・・あ! でも僕たちのリーダーのアルク兄ちゃんにはちゃんと許可を取ってからだけどね!!」
これならどうだ? アニスからすれば俺は・・・アルクはもっとも接触したくない相手のはず。
「ええ、勿論大丈夫ですわ。 私には何もやましいことはありませんし・・・」
・・・これでも駄目か。アニスには動揺する気配が微塵も無い。これが演技だって言うんならホントに女優賞ものだ。
「あ、でも・・・」
ん? なんだ? 急にアニスが顔をしかめだしたぞ?
「・・・いえ、実は以前、あの方がアテナさん、アルマさんと両手に花で腕を組んで歩いているのを目撃したので・・・その・・・女性に対してあまり誠実な方では無いのかと・・・」
グハッ!?
お、思わぬ所で俺にダメージが・・・そういえば確かにそんな事があったが、まさかアニスに見られていたとは・・・いや、もしかして監視していた?
だが、仮にそうだったとしても・・・それを俺に、【アークガルド】メンバーに言うか? メンバーに言うという事はまわりまわって俺の、アルクの耳に入ることくらい想定できるだろうに。
どうにもアニスの様子がおかしい。
俺を襲ってきた時とは雰囲気が違うし、演技らしい演技をしている様子も無いし、あえてリスクのある接し方をしているようにも思える。
・・・そこで俺は一つの可能性を思いついた。
もしやアニスは・・・自分の記憶すら封印しているんじゃないかと。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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