予期せぬ再会
どういうことだ?
なんでアニスがここにいる?
アニスはかつて俺を襲ってきた奴らの一人だ。目的は未だに不明。
なぜか知らないがアニスはアテナやアルマと同じ顔と声をしているが、髪と瞳の色が紫で、紫のドレスを着ている。ついでに宙にふわふわ浮いている。
本人曰く、『3人目』。アテナとアルマが二重人格である事を踏まえると3人目の人格という意味なのだろうが・・・どういうわけかアテナもアルマもアニスのことは知らないようだ。
ただし、それが本当なのかどうかはわからない。なぜならアニスには・・・他人の記憶を封印することができるからだ。【封印の精霊】だから、らしいのだがプレイヤーが【精霊】になれるという情報は入っていないのでこちらも詳細不明だ。
かく言う俺も記憶を封印されてしまい、アニスたちのことは一時的とはいえ忘れてしまっていた。
しかし、【固有能力】とかいう謎パワーによって俺は記憶を取り戻した。【固有能力】についても良くわかっていないので放置状態なのだが・・・わかっているのはアニスたちは俺に敵意を持っているということと、また俺の前に姿を表すだろううということだけだ。
そこで俺は下手にことを荒立てたりせず、アニスたちを忘れたままだという体でゲームをプレイした。アニスたちからすれば、俺は『全てを忘れてゲームを楽しんでいる』という事になっているはずだ。そう思わせておいて、連中の出方を見つつ戦力増強を行う・・・つもりだった。
つまり、何が言いたいかというと・・・現時点でアニスと接触するのは色々まずいという事だ。実際、あの時はアニスたちには手も足も出なかった。今はどうかと言われれば・・・まず無理だろうな。
なによりまずいのは・・・
「あれは・・・アテナさん? それともアルマさんですか? いつの間にイメチェンを?」
何も知らないアスターがこの場にいるという事だ。
アスターには事情は話していない。話した所で信じてもらえるかどうか疑問だったし、話したら話したでアスターを巻き込むことになるからだ。
しかし、今はそれがかえってまずい状況に陥らせている。
アスターもアニスの顔をばっちり見てしまったようだし、もう誤魔化しは・・・いや、待てよ?
よくよく考えたら・・・そうでもないか?
「いや、違うぞアスター。あのプレイヤーはアテナでもアルマでもない。なぜなら・・・」
「え?・・・なぜなら?」
「あのプレイヤーは・・・二人より胸が小さいからだ!!」
「・・・アルクさん。またぶっ飛ばされますよ? というか普通にセクハラ・・・」
・・・いや、違うんだアスター。必死に誤魔化そうとしてついつい出ちゃったでまかせなんだ。本気で思ってるわけじゃないんだ。
「はぁ・・・でもあのプレイヤーさん、お二人にそっくりですよ? 他人の空似とは思えませんが・・・」
「忘れたのかアスター。ここはゲームの世界だぜ? アバターの外見は自由に変更できるわけだし、容姿をそっくりにすることだって出来るはずだろ? アテナもアルマもバトルトーナメントでベスト16まで残って有名にもなったし、非公式ファンクラブまで出来てるって話もある。あの二人の容姿を真似するプレイヤーが出てきてもおかしくない」
アイツらの前では言わないけど、アテナもアルマも外見だけ見ればモデルや女優をやっていてもおかしくないほどの美女だ。真似する奴が出てきてもおかしくは無いはずだ。調子に乗るから本人たちの前では絶対に言わないけど!
・・・というごり押し設定でどうにか誤魔化せないだろうか!?
「・・・なるほど。確かにアテナさんやアルマさんがこんな所にいる理由もありませんし・・・お二人のファンの方なんですかね?」
よっし! アスターは上手く(?)誤魔化せたぞ!
「マスター!【堅牢の鉄盾】ガ限界デス!!」
って暢気に話してる場合じゃなかった! 俺たちは今、溶岩巨人から攻撃されてる最中だっての!!
くそっ! ガット謹製の【堅牢の鉄盾】でも溶岩巨人の拳を止めることは出来ないのか。盾が高熱で赤くなって溶け始めている。このままじゃ長くは持たない。
・・・仕方が無い。
「おい、そこのプレイヤーさん!!」
「え? あ、え?」
アニスは・・・突然の事態で混乱しているようだ。
・・・その様子から見てどうやらアニスは俺たちの後をつけて来たというわけではなさそうだ。つまり、アニス自身が【サラマンデル火山】に用があったってことか?
しかし、今はそこに突っ込んでる余裕は無い。俺はアニスの事を知らない体で話を進める。
「アンタ、この巨人と戦う気はあるのか!? あるのなら俺たちは退散する! 邪魔して悪かったな。だが戦う気が無いなら撤退を推奨するぞ!!」
こんな回りくどい言い方をしているのは一般的なプレイヤーへの配慮だ。相手に溶岩巨人に挑むつもりが無いのであれば俺たちが助けには行った事になるが、挑むつもりだったのであれば俺たちはかえって邪魔をしていることになる。そうであれば速やかに退散すると言っているのだ。
「・・・!」
どうやらアニスもようやく現状を把握したようだ。その様子から見て溶岩巨人のことは知らなかったようだ。が、アニスもこの火山に用がある以上、行くべきか引くべきか悩んでいるようだ。
しかし、それも一瞬のこと。アニスはすぐに決断したようだ。
「・・・確かに私一人ではこの状況はどうにもできませんわね。わかりました。ここは撤退させて頂きます」
・・・どうやらアニスは引くことを選んだようだ。この状況では賢明な判断だ。・・・もっとも俺たちに自分の力を見せるのを嫌がっただけなのかもしれんが。
だが・・・これは俺にとってもチャンスかもしれない。
「なら丁度良い! 俺たちも撤退する所だ! アークカイザーの手の上に乗れ!!」
そう言って俺はアークカイザーの掌を向けながらアニスの前へと差し出す。
「・・・え? しかし、私は・・・」
おー、戸惑ってる戸惑ってる。しかし、俺としてもここで逃がす・・・もとい見捨てるわけには行かないだよねぇ。
「急げ! 盾がもう持たない!!」
急かすように俺が叫ぶとアニスはしぶしぶと言った様子でアークカイザーの手の上に乗った。
「良し。このまま離脱するぞ!【韋駄天の俊走】!!」
手の上にいるアニスを庇いつつ、その場から高速で離脱する。
こうして俺たちは【サラマンデル火山】から脱出したのであった。
・・・突然の加速にアニスが若干苦しそうな顔をしたが・・・決して前回の意趣返しにわざとやったわけじゃない。ホントだよ?
===移動===>エリア6
【邪霊】たちを強引に押しのけて飛んでいたら、いつの間にか次のエリア・・・エリア6まで来てしまったようだ。
既に火山地帯を抜けて、この辺りは森になっているようだ。近くに【邪霊】たちもいないようだし、【転移装置】もある。
・・・ここまで来ればもう大丈夫だろう。
俺はアークカイザーを【転移装置】の前に着地させ、アニスを降ろした。・・・アニスの顔色が悪そうだがナンデカナ?
・・・さてと・・・ここからが問題だな。
俺は外部スピーカーをオフにしてアスターとミコト、アーテルと【王剣アウルディオン】を解除したアウル、そしてカイザーに向かって話かける。
「いいか、皆。これからアークカイザーから降りて、あのプレイヤーから話を聞いてみようと思うが・・・くれぐれも注意してくれ」
「注意、ですか?」
アスターが疑問符を浮かべながら首を掲げている。
「良いか。あのプレイヤーがあそこまでアテナやアルマにそっくりなのは多分、二人の相当なファンなんだろう・・・だからって必ずしも良い奴とは限らない。ファンだと言ってプライベートな事まで根掘り葉掘り聞き出そうとする輩だっているしな。下手に口を滑らせると二人に迷惑がかかる可能性もある」
と、それっぽい事を言ってはいるが要はアニスに注意しろ、ということだ。
アニスを置いて逃げるという手もあったのだが・・・アニスはアークカイザーの姿を知っているからな。中に乗っているのが【アークガルド】のメンバーだという事はわかっているはずだ。となると下手に逃げ出せば不審感を・・・ひいては俺が記憶を取り戻した事に感づかれるかもしれない。
そうなったら連中がどんな手を仕掛けてくるかわかったもんじゃない。上手く切り抜けて、出来ればアニスたちの情報も手に入れたい所だ。もっともアスターたちに危害を加えるようであれば即逃げるが。
「・・・なるほど。確かにあそこまでそっくりだと逆に悪意を感じますね。まるでお二人に近しい人を騙そうとしているようにも思えます。・・・なら、ここで注意を?」
「・・・まあ、話を聞いてみてやんわりと、だな。垢バンされていないのなら問題行為は起こしてはいないんだろうが・・・俺たちに対してはどうかわからんな。アテナたちのことを無理矢理聞いてこようとするかもしれないし・・・まずは俺が話してみる」
という感じで皆を説得して、まずは俺が話すということで一人でアークカイザーから降りる。
さて、俺と対峙したアニスはどんなリアクションをするかな?
当のアニスはと言えば俺をジーッと見て、こう言い放った。
「えっと・・・貴方は誰ですか?」
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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