遭遇
さて、どうするか・・・と悩みそうになるが、実の所、俺たちには選択肢が無いんだよね。だって、あの溶岩巨人を倒す目処が全然立ってないから。最低限、あの溶岩巨人に通用する手段を考えなければこの場に残っていてもジリ貧になるだけだ。
というわけで、溶岩巨人からさらに距離を取る。ある一定の距離まで離れると、今度は火鳥たちが襲いかかってきた。当然、撃退はするが意識は溶岩巨人から離さない。
・・・溶岩巨人は追ってこないようだ。それどころか攻撃を止めてこっちの様子を伺っている様子。・・・ふむ、どうやら溶岩巨人には行動範囲と攻撃範囲が決められているようだ。その範囲外まで離れればとりあえず、溶岩巨人の攻撃からは逃れられる、と。
まあ、代わりに火鳥たちが襲い掛かってきてるわけだが・・・あの厄介な溶岩巨人に比べると倒し方がわかっている分、相手をするのはこっちの方が楽だ。
と、いうわけで【術書アーディグリフ】を取り出し、【魔法】で火鳥たちを撃退しながら溶岩巨人対策を考える。
「さて・・・どうすればあの【溶岩の上級精霊】を倒せると思う?」
相談相手は当然、この場にいる俺以外の唯一のプレイヤー、アスターである。
「うーん、物理攻撃は勿論ですが、【兵器】【魔法】まで効かないとなると・・・正直お手上げじゃないですか?」
・・・しかし、その唯一の相談相手は既に若干諦めかかっていた。おいおい。
「何言ってんだアスター!『死ぬまで戦え』が我が【アークガルド】のモットーじゃないか!! 諦めるのはまだ早いぞ!」
「え? 何時からそんなアシュラみたいな物騒なモットーが?」
・・・アシュラって死ぬまで戦うタイプだって認識されているのか。まあ、俺もだけど。
【アークガルド】のモットーはいつもリーダーたる俺が唐突に閃いて突然に決まる物だから悪しからず。これで【アークガルド】のモットーは・・・いくつだっけ? 忘れちった(笑)
まあ、それはともかく・・・アスターよ。諦めからは何も産まれない。今こそ死中から活を見出す時じゃないだろうか?
「別に僕だって諦めたわけじゃないですよ。これだけ色んな攻撃をして効果が無いとなると普通の方法では倒せない・・・今、僕に考えられる攻略手段は三つですね。
1.まだ試していない手段や属性で攻撃
2.弱点を探してそこを突く
3.助っ人を呼ぶ
これくらいですか。アルクさんだってそれくらい思いついていたんでしょう? それを確かめるために攻撃手段をコロコロ変えてたんですよね」
・・・うーむ、アヴァンといいアスターといい、うちの男性陣は中々鋭いな。俺の考えを的確に見抜いてくるとは・・・あれ? そういえば他の女性陣もそんな感じだったっけ? ・・・深くは考えない事にしよう。
しかし・・・フッ、アスターもまだまだ甘いな。完璧に俺の考えを捉え切れていない。
「俺は
4.ひたすらフルボッコ
まで考えたぞ?」
「・・・効果が無かった場合、ただの時間の無駄ですよね、それ」
・・・その可能性が高いから4を試すのは止めようと思ってたんだ。ならなんで口にしたのかって? なんか考えが読まれて悔しいからだよ。
「ではどうします? 僕としては1、2辺りをある程度試して効果がなければ撤退を推奨しますが」
ふむ、中々堅実な作戦ではある。3の助っ人を呼ぶのも有効かどうかは疑わしいしな。仮に【アークガルド】メンバー全員がこの場に揃ったとしても、そもそもあの溶岩巨人が特殊な方法でしか倒せないとなったら意味無いし。
「そうだな・・・それを確かめるために一か八かの特攻を仕掛ける!」
・・・いかん、アスターが『何言ってんのコイツ?』っていう冷たい目で俺を見ている。しかし、俺にもちゃんと言い分はある。
「まあ、聞けよアスター。パッと見、あの溶岩巨人の弱点らしい弱点と言えば下半身・・・下の溶岩の海に繋がっているパイプみたいなやつだと思うんだよ。あのパイプみたいなやつを切り離せば溶岩巨人も倒せる・・・かもしれない。それにプラスして俺には全属性を付加するスキルがある」
【全天の属性】を使って攻撃を行い、有効であったなら、それは俺が所持している属性の中に、あの溶岩巨人に有効な属性があるということがわかる。
弱点箇所と弱点属性、両方を一度に調べる事ができるってわけだな。
一度に調べることに拘るのは2次被害を懸念してだ。溶岩巨人からの攻撃を直接食らわなくても、撒き散らす溶岩や火の粉は確実にアークカイザーにダメージを蓄積していく。時間をかけて調べるのはリスクが高い。それなら一か八かの一発勝負に賭けようってわけだな。
「なるほど・・・一応聞きますが、それでも駄目だった場合は?」
「完全にお手上げだな。今の俺たちには溶岩巨人を倒す術は無い。大人しく撤退して調査しなおした方が良い」
ここまでやってダメージすら与えられないとなると、もう他の手段があるとしか思えない。少なくともノーヒントで倒せるような敵じゃないってことだろう。
「・・・どうやら、それが最善のようですね。わかりました」
どうやらアスターにも納得して貰えたようだ。
「というわけだ、カイザー」
「了解デス。・・・タッタ今、本機周辺ニ集マッテイタ【邪霊】ヲスベテ排除シマシタ」
カイザーのフォローのおかげで火鳥たちも片付ける事ができたようだ。と言ってもあくまで近くにいた連中だけだが。空白が空いた今がチャンスだ。
【ポーション】使って全回復した後、【豪剣アディオン】をアークカイザーに装備。
さらに・・・
「頼むぞアウル。【精霊憑剣】発動!!」
「だう!!」
【豪剣アディオン】とアウルが一体化し、【王剣アウルディオン】へと変化する。・・・今日はまだ【豪剣アディオン】を使っていなかったから消耗度は0%だ。あの溶岩の体を切っても一度くらいは大丈夫・・・なはず。
「良し! 行くぞカイザー!!」
「了解デス!!」
アークカイザーは真っ直ぐに溶岩巨人に向かって突撃して行く。溶岩巨人の攻撃範囲に入った途端、溶岩巨人は迎撃しようと拳を繰り出してくるが・・・
「【サイコクラッチ】!!」
アスターの【念動力】を使って溶岩巨人の動きを止める。
「【全天の属性】!」
【王剣アウルディオン】に全属性を付加、剣に虹色のオーラが宿る。これでMPを半分消費した。残るMPは・・・
「【韋駄天の俊走】!!」
超加速に使用する。
狙うは・・・下半身のパイプ!
「【勇天の一撃】!!」
超加速した勢いに乗せて、一気に溶岩巨人のパイプに向かって【王剣アウルディオン】を振り抜く!
ズバッ!!
と【王剣アウルディオン】は見事に溶岩巨人のパイプを切り裂いた!!
そのままの勢いで溶岩巨人を通り抜け、元いた位置とは反対側まで来たところで急停止。反転して溶岩巨人の様子を伺う。
溶岩巨人は泣き別れした上半身と下半身のパイプをそのままに、再生する事無く真下の溶岩の海へと落下していった。
・・・やったのか? と思ったが口には出さなかった。口に出したらまたフラグになっちゃいそうだし。
逆に言えば口にさえ出さなければフラグになったりしないのだ!・・・と思っていたが、世の中そんなに甘くなかった。
ザパァッ!!
と再び溶岩の海から姿を現す溶岩巨人。先ほど切り裂いたはずの、下半身のパイプは・・・しっかり繋がっていた。
「・・・」
「・・・」
「良し! 帰ろう!!」
「そうですね!!」
まったく、やってらんねぇよ! 俺の最強コンボを食らって平然とまた出てきやがって!!
こんな奴どうしろってんだよ!
・・・これはもうあれだな。コイツを倒すには他の特別な手段が必要なんだ。そうに違いない。
と、いうわけで帰ろう。現場は確認できたわけだし、また【精霊図書館】に行けば新しい情報が手に入るかも知れない。
幸い、溶岩巨人を倒すのはクエストでもなんでもないから逃げることは可能なはずだ。・・・むしろクエストにもなっていないって点が、溶岩巨人を普通の方法では倒せないっていうフラグなのかも知れない。
とにかく、このままエリア0に戻ろうとしたその時・・・
「ま、待ってくださいアルクさん。丁度真下にプレイヤーがいます!!」
「なに!?」
確かに良く見るとアークカイザーの丁度真下の地面で【邪霊】と戦っている人影が。しかもどうやらソロプレイヤー・・・つまり一人っぽい。
・・・マジか。この辺りは俺たちがやって来た方向とは真逆の場所。火山が邪魔になってこちら側の状況まで見えてなかった。
何よりまずいのは・・・この場所だ。
この場所は噴火口に近い・・・おそらくこのプレイヤーは俺たちとは反対方向から火山を登ってきたのだろうが・・・今はまずいんだ。もうすぐ溶岩巨人の攻撃範囲に入ってしまう。
あ、溶岩巨人が俺たちから視線をずらした。その先は当然、真下のソロプレイヤーだ。ソロプレイヤーは追いかけてくる【邪霊】たちから逃れる為か、噴火口に向かっているようだ。なんてこったい。
溶岩巨人がソロプレイヤーに向かって・・・拳を振り下ろした!!
「ちぃ! 【堅牢の鉄盾】!!」
考えるより先に行動に出た。
急いでアークカイザーをソロプレイヤーの前に出し、【堅牢の鉄盾】を出して溶岩巨人の拳を防いだ。身の丈を越すほどの巨大な盾だ。2次被害もある程度防げるはず!
「おい! 今のうちに!!・・・!?」
逃げろと言おうとしてソロプレイヤーを見て・・・言葉を失った。
「え? あの人は・・・なんでここに?」
同じくソロプレイヤーを見たアスターが見知った顔を見つけたように言うが・・・違う。
ソイツは・・・アスターが知っているアイツらじゃない。
アイツは・・・アニス!?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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