噴火口
やはり【邪霊】の数が多いな。まあ、それは遠目で見た時点でわかっていたし、対処できない程の数というわけでもないから別に良い・・・わけではないのだが、それはいい。
問題なのは【邪霊】たちの動きだな。
元々、遠目で確認する限り空と地上に大量の【邪霊】たちがうようよしていたのは分かっていた事だ。俺とアスターが懸念していたのはその大量の【邪霊】たちが一斉にこちらに向かってくる事だったんだが・・・どうもそんな様子は無い。
勿論、ある程度まで距離を詰めれば向こうから襲ってくるのだが、逆に距離のある【邪霊】はこちらには我関せずでウロウロしている。
どうにもおかしな動きだ。少なくとも侵入者を排除しようだとか、何かを守ろうだとか、何か意図した動きには見えない。
どちらかと言うと目的はな特になく、ただ何かに惹かれて集まってきただけ、というような感じがする。まあ、元々【邪霊】という存在自体、理性を失って暴れている状態なんだから明確な目的みたいなものは最初から無いのかもしれないが。
とはいえ、偶然集まっているにしては数が多すぎる。ここの場に来るまでの道中でエンカウントした【邪霊】たちとは比較にならないほどの数だ。何かに惹かれて集まっているのだとしたら・・・状況と話の流れから考えても【火の大精霊】である可能性が高い。
そうなると次に問題なのは肝心の【火の大精霊】がどこにいるかなんだが・・・【火の大精霊】も【邪霊】たちを警戒しているだろうし、どこかに隠れている可能性が高い。少なくとも【邪霊】たちが目的もなくウロウロしているってことは【邪霊】もまだ見つけられていないということだろう。
逆に言えば【邪霊】たちがおらず、かつ隠れられそうな場所に【火の大精霊】はいるという事になる・・・まあ、セオリーで考えれば三つの火山の噴火口の奥深くか、中心部の溶岩の海の中とかかな。なぜかは不明、三つの火山の山頂と溶岩の海辺りには【邪霊】がいないみたいだし。
・・・逆にそれが罠っぽいとも思えるのだが、かと言って他にそれらしい場所があるわけでもないしな。
「【サイコスラッシュ】!・・・アルクさん! もうすぐ噴火口に着きます!!」
「【アイスランス】! わかってる。とりあえず噴煙も溶岩も吐いてない山の噴火口から調べるぞ!!」
「わかりました!」
「クルッ!」
群がる火鳥たちを駆逐しながら、俺たちはとりあえず一番安全そうな火山の噴火口から調査することにした。案の定、ここまで来ると火鳥たちは追いかけてこなくなった。・・・やっぱり罠っぽいなぁ。
俺たちはまず、噴火口の中には直接は降りず、火口の入口に降りて穴の中の様子を伺う。
穴の中は・・・特に変わった様子は無い。【邪霊】もいないようだ。だた、穴の底の方は真っ暗で何があるかはここからじゃ確認できないな。
「・・・やっぱり直接降りて確認するしかないみたいだな。まあ、ここが火山である以上この下はマグマの海なんだろうが」
ちなみに余談だが、『溶岩』と『マグマ』は意味が違うからね。地中をドロドロに流れる液体をマグマ、それが地上に流れ出た物を溶岩って言うんだそうだ。
「でしょうね。懸念があるとするば・・・僕たちはマグマ対策なんてしていないってことでしょうか。マグマの罠なんてあったらかなりヤバイですね」
確かにアスターの言う通り、このゲームでは罠に引っかかって死に戻るケースも少なくない。それはレベルによる強さとはまた別の問題だ。引っかかったらレベルに関係なく即死、なんて罠も少なくない。いかに俺たちといえどマグマの海に落ちれば一環の終わりだろう。
「とは言っても他に手がかりが無いですからねぇ。死に戻り覚悟で確かめに行くしか・・・!? ア、アルクさん! あそこを見てください!!」
「どうしたんだ、アスター?」
突然慌てだしたアスターが指差したのは穴の中の壁の一点・・・火口から約30mほど下った場所に何やら赤く光る物が・・・【邪霊】ではないな。あれは・・・草か? 燃えるように赤い草が壁から生えている。
「【火炎草】ですよ、あれ!」
「【火炎草】?」
すかさず【鑑定】で確認。
【火炎草 ☆8】
火の力をその身に宿した薬草。
火に対して力を増す薬や耐性を与える薬の原料となる。
あれがアスターが言っていた【ブーストポーション】や【レジストポーション】を作る原料か。これは場所的に考えても【ファイアレジストポーション】を作れっていうフラグかな。ここ、とてつもなく蒸し暑いし。
「こんな所で見つかるとはラッキーだったな。・・・【邪霊】もいないし今のうちに【採取】してしまえ、アスター」
「はい!」
「あい!」
ふわっと空を飛びながら【火炎草】の元へ向かっていくアスター・・・とそれについていくミコト。アスター、何時になく嬉しそうだな。アーニャやアヴァンもそうだが、生産職としては新しい素材が手に入るのは嬉しい物なんだろう。
それにしても・・・穴の中は断崖絶壁で足場らしい足場は無いし、空を飛べなかったら【採取】にとてつもなく苦労しただろうな。アヴァンの作ってくれた【兵器】に感謝だ。
アヴァンが【火炎草】の元までたどり着き、いざ【採取】を始めようとした・・・その時。
ゴゴゴゴゴッ!!
唐突に地面が大きく揺れ始めた!
「うおっ!? 地震・・・じゃない。噴火か? やっぱり罠だったか・・・アスター!!」
アーテル、アウル、カイザーに上空へ避難するよう指示を出しながら、【採取】中のアスターに声をかける。
「待ってください! もう少しで・・・【採取】できました!! 行くよ、ミコト!」
「あい!」
無事に【火炎草】を【採取】したアスターはミコトを連れて上空へ避難する。やっぱり空を飛べると避難も楽だな。
噴火口から距離を取って様子を見る俺たち。揺れはドンドン大きくなっているようだ。
しかし・・・
「エネルギー反応増大。タダシ、直下ノ噴火口カラデハアリマセン」
「なに?」
どうやらカイザーのセンサーにも反応があったようだが・・・ってことは噴火ではない?
「なら、どこから反応が出ているんだ?」
「中央ノ渓谷部分、溶岩地帯カラデス」
カイザーの指差す先・・・そこは三つの火山に囲まれた渓谷に溜まっていた溶岩の海だった。
って良く見ると、なんか渦を巻いてるんだけど・・・まるで何か出てくるかのようだ。そして・・・
ザパァッ!!
「うおっ!?」
「・・・火柱ならぬ溶岩柱ですかね?」
アスターが言うとおり、まるで噴火でもしたかのように溶岩の海から巨大な溶岩の柱が空高くまで上っていく。さらにその溶岩はウネウネと形を変えていって・・・その姿は、人間の上半身のようだった。
巨大な腕、巨大な頭、巨大な体・・・上半身だけで100mを超えようかという溶岩の巨人であった。一方で下半身の方はと言うと、足はなく代わりに溶岩で出来た巨大なパイプのような物が下の溶岩の海へと伸びていた。
・・・うーむ、何となく予想はできるがとりあえず【看破】!
【溶岩の上級邪霊 Lv.60】
理性を失った溶岩の精霊。火と岩の両方の性質を併せ持っている。
・・・おうふ、出ちゃったよ【上級邪霊】。しかもコイツ、明らかにボスモンスターだろ。
噴火口付近に【邪霊】たちがいなかったのはコイツがいたからか!
「・・・デ○ルガン○ムみたいですね」
「アスター、そういう事は思っても口には出すな」
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




