火の邪霊たち
三つ子山っていうのはリアルにも存在するが・・・三つ子火山なんて聞いたことねぇよ。なにより三つの山の中心部・・・山の渓谷が煮えたぎる溶岩の海になってんじゃん。これはこれで幻想的な光景だが・・・凶悪な、という注意書きが必要そうだ。
三つの山は・・・どの山も噴火の影響か木や草などと言った自然の緑は一切見えない。ただゴツゴツした大小さまざまな岩がいたるところに存在していて、見た目岩山のようだ。そして三つの山の内、一つが噴火口から大量の煙を吐き出していて、一つは山の至る所から溶岩が流れ出しており、最後の一つは・・・特に何か起こっているように見えないが、逆にそれが不気味な感じだ。
これ・・・ホントに【人間界】に存在した場所なのか? とてもじゃないが人どころか生物が生きていける環境じゃない。
「大自然の驚異ってやつか・・・」
「ですね・・・そんな環境だからこそ、【精霊】たちの住処としてはもってこいなのかもしれませんけど・・・」
森羅万物に宿る存在である【精霊】・・・特に火に関する【精霊】にとっては居心地の良い場所なんだろう。
「さて・・・ここのどこかに【火の大精霊】がいるらしいが・・・それらしい姿は見えないな」
現在、俺たちは【サラマンデル火山】・・・から少し離れた上空から山全体を見渡して観察している状態だ。さすがに無計画にあの中に突っ込む気はさらさら無い。なにせ・・・
「・・・そもそも、これだけ大量の【邪霊】がいたら見つけられないと思いますよ?」
そうなのだ。
【サラマンデル火山】は空も大地も大量の【邪霊】がひしめいていたのだ。さすがに山を埋め尽くすほどではないが、明らかに何百、何千って数だ。ただし、かなり広い山々に適度に分散しているようなので、一度に全部を相手にするという事態にはならないと思うが・・・連戦は覚悟しておいた方が良いな。
「どうします、アルクさん? この調子では、探索するにしても相当時間かかりそうですが・・・」
・・・あの数を見て怖気づいたりしないあたり、アスターも中々肝が据わっていると思う。さすがアシュラの相棒。・・・あれ? そういえば・・・
「そういえばアシュラはどうしたんだ? 一緒に来なかったのか?」
アスターとアシュラはいつも一緒・・・と言うわけではないが、戦闘目的の場合は大体アシュラがでしゃばって・・・もといアシュラと一緒だと聞いたことがあるが・・・
「ああ、アシュラは今【神仏界】の【試練の塔】に篭ってますよ。ほら、アルクさんたちから【真なる武具】の話とか、塔で出てきた敵の話を聞いて俄然やる気になったらしいです」
・・・なるほど、いかにもあの戦闘狂らしい。まあ、それは良いのだが・・・
「一人で行ったのか? 誘ってくれたら俺も一緒に行ったのに」
俺としても【不朽の武器】はまだまだ欲しいと思っているし、また【試練の塔】には挑戦するつもりだった。・・・まあ、今はレベリングを優先しているわけだが、時間が取れないってことでもないしアシュラと一緒に塔に行っても問題ないんだが。
「僕も一緒に行こうとしたんですが・・・『自分の限界に挑戦してくるっす!』と言って一人で・・・まあ、正確には【眷属】のルドラとですが・・・とにかく自分たちだけで挑戦したいらしいです」
「・・・ますます戦闘狂っぷりに磨きがかかっているな」
アスターとアシュラは連携が取れているコンビに見えるが、その実は猪突猛進なアシュラをアスターが上手くフォローする事で成り立っている。それはそれでコンビの一つのあり方ではあるのだが・・・アスターがいつも大変そうなんだよなぁ。
「しかし、確かにこの状況ではアシュラにも来てもらったほうが良かったかもしれません。・・・ここは一度引いてアシュラないし誰かに助っ人に来てもらったほうが良いでしょうか?」
・・・こういう慎重で冷静な所もアスターらしいな。これがアシュラだったなら『いやっほおおうっす!!』とか言いながら突っ込んでいくだろうに・・・しかし、今回はアスターが少し慎重すぎるな。
「いや、引くには早いさ。ここの敵の特徴も判っていないうちは下手に援軍を呼んでも文字通りに焼け石に水になるかもしれん。次に生かす意味でも、ここは死に戻り覚悟で探索した方が良い」
そう言って俺は【グランディススナイパーライフル】を取り出し、構える。遠距離用の【兵器】だ。この距離からでも十分、敵の【邪霊】を狙うことができる。・・・子供の姿で持つにはちょっと問題ある絵づらだが。
「・・・アシュラが猪突猛進タイプな戦闘狂なら、アルクさんは確実に冷静に敵を殲滅するタイプの戦闘狂ですね」
「よく分かってるじゃないか」
と言いつつ、発砲する。ライフルから放たれた弾丸が【サラマンデル火山】の上空を飛んでいた【邪霊】の一体に命中した。
そのまま倒せた・・・なんてことはなく、こちらに向かってくる。まあ、予測していたが。【火の邪霊】を始めとした属性系の【邪霊】は物理攻撃ではダメージを与える事はできない。【魔法】かエナジー系の【兵器】、もしくは属性を付加した攻撃じゃないとな。
今のは【邪霊】を一体だけ、こちらに招き寄せるためにわざと実体弾を撃ったのだ。敵の【邪霊】の詳細を探るために。
案の定、こちらにやってくる【邪霊】を【看破】で確認する。
【火鳥の中級邪霊 Lv.50】
理性を失った火の中級精霊、本来あるべき姿を歪められている。
・・・こちらにやってくるのは文字通り火の鳥だった。より正確には鳥の形をした火の塊というべきか。
今までは遭遇した【邪霊】は大抵、人型だったのだが・・・こういう形の【邪霊】もいるのか。
「火の鳥、ですか。まさか不死身だったりしないですよね」
「さすがにそんな事があったらお手上げだ。【グランディスフライザッパー】!」
俺は【グランディスフライザッパー】を飛ばす。なお、今の俺は【マキナ】では無いので1個飛ばすのが限界である。
エナジーブレードを展開して火鳥に真っ直ぐに飛んでいく【グランディスフライザッパー】だったが・・・火鳥はバサッと大きく翼を動かして急旋回、【グランディスフライザッパー】をかわした。
「中々素早いな。アスター!」
「はい!【サイコクラッチ】!!」
アスターが発動した【念動力】によって火鳥は見えないなにかに掴まれたかのように、その動きを止めた。その隙を逃さす【グランディスフライザッパー】が飛来、火鳥を切り裂いた。
「・・・しぶといな。【アイスランス】!」
さらに俺は【術書アーディグリフ】にストックしておいた【氷魔法】を発射。氷の槍に貫かれた火鳥は・・・光となって消えていった。
「・・・姿が変わってもエナジー系や【魔法】が有効なのは変わらず、か。レベル相応にしぶといようだが・・・戦えるな」
あと強いてあげるなら人型より素早いくらいか。それも俺たちに捉えられないほどではない。
「そうですね・・・来ましたよ」
見ると、【サラマンデル火山】の方から多数の火鳥が向かってくる。・・・さすがに気づかれるか。1体だけおびき寄せようっていうのは虫が良すぎたな。
「・・・せっかくだ。このままあの火鳥たちを突破して、山頂まで接近しよう。情報は少しでも多く欲しいからな」
「了解です。【エナジーフェザーマント】!」
アスターがアーテルの背から飛び降りると、背中にマントが出現、それを翼に変えて自力で飛行し始めた。空中戦ならこれ! ということでアヴァンからアスターとアシュラに送られた贈り物だ。
さらにアスターは【地鎌ガイアサイズ】を取り出し・・・
「【暗黒の大鎌】! 行くぞオラァ!!」
自身の武器に闇属性を付加して火鳥の群れに突っ込んでいく。・・・アスターのアレ、ひさしぶりに見たな。アレを見るとアスターも十分に戦闘狂じゃないか? と思ってしまう。
「おっと、アスターだけを戦わせるわけには行かないな。俺たちも行くぞ、アーテル、アウル、カイザー、ミコト」
「クルッ!」
「だうっ!」
「了解デス」
「あい!」
こうして俺たちの【サラマンデル火山】での戦いが始まった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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