小さい事は気にしてはいけない
「失敬だなアスター。今の俺は【リリットエルフ】っていう種族であって、決して子供なわけじゃないぞ?」
「どこからどう見ても小学生くらいの子供にしか見えないんですが?」
それはそういう種族だから仕方が無いのだ。
今の俺は【戦人】から【リリットエルフ】という種族に【転身】している。
【リリットエルフ】というのは【ハーフリング】と【エルフ】の中間くらいの能力を持つ種族だ。【ハーフリング】ほどではないが【眷属】との親和性が高く、【エルフ】ほどではないが魔力が高い。
【ハーフリング】と【エルフ】の良いとこ取り・・・というか足して2で割った感じ? アーテルたち【眷属】との連携を重視しつつ、自らも戦闘力を残すよう考慮した結果選択した種族だ。
見た目はぶっちゃけ小学生くらいの男の子だ。【ハーフリング】と同じくらいの背と容姿、そして【エルフ】の特徴である耳がとがっていて、一見すると俺がアルクだとは思わないだろう。
いつもの見た目が違い過ぎるからアスターもミコトも最初は戸惑ったのだようだが、話をしたらすぐに俺だと気が付いたみたいだ。
「その服はどうしたんですか?」
「ヴィオレがハーフサイズの戦闘服を作ってくれた。ガットの奴がさっき持ってきてくれてな」
ヴィオレが作ってくれたのは【黒天の戦闘服 ☆10】、性能は【黒天の戦闘服】と全く同じで、いわゆる半袖短パンの服なのだが、今の俺のように子供が着れば普通の長袖長ズボンのように見える。・・・まあ、さすがにちょっとぶかぶかなのだが。
元々は【マキナ】用に用意してもらおうとしたものだが、【リリットエルフ】でもこうして役立ってくれている。
ただし、【勇気のハチガネ】は装備したままだが。【功鎧アルドギア】はさすがにサイズが合わないので装備はしていない。
「・・・とりあえず、【魔法】を主体にして【眷属】との連携を意識して選んだ種族だというのはわかったんですが・・・他の種族では駄目だったんですか? 正直、見た目が変わりすぎてよく似た別人にしか見えないんですが?」
「まあ、もちろん、それにも理由がある」
俺が【リリットエルフ】を選択したのは能力だけの問題ではない。ちゃんとこの姿にならなければいけなかった理由がちゃんとある。
「・・・実は、昨日の緊急クエストに関してある程度の情報を掲示板に流したら、俺を見つけたプレイヤーたちが情報を聞こうと詰め寄ってくるんだよね」
「・・・ああ、なるほど」
【バハムート】のクエストに関しては俺一人ではどうにもならないし、大人数が必要だろうということから人集めしやすいようにある程度の情報を流すことに決めた・・・までは良かったんだが、信憑性を高めるために俺の名前を出したのはまずかった。
マナーの良い奴は勿論いるんだが・・・中には悪い奴とかもいるんだよなぁ。直接質問に来る奴はまだ良いほうで、中には後を付けてくるような奴までいたり・・・情報を出すのは少し早まった選択だったかもしれん。・・・まあ、【幻獣界】の海で俺たちを目撃したプレイヤーが大勢いたみたいだし、時間の問題だったとは思うが。
「で、その姿になって撒いてきたってわけですか」
「そうだ。【転身】スキルはまだ仲間内にしか公表していないからな・・・誰も子供の姿になったとは思わないだろう」
正確には【エイジア】のように年齢と見た目が変化する種族もあるが・・・そこまで考えて気づく奴も多くはあるまい、多分。
「・・・というのは建前で本当はただやってみたかっただけ、なんてことはないですよね?」
「・・・」
・・・さすが、アスター。俺のことよくわかってるな。
「ま、まあそれはともかく! さっそく【サラマンデル火山】って所に行ってみようぜ!!」
別に誤魔化す必要はないのだが、なんとなくこの会話を続けるのは不毛だと俺の直感が言っているのでさっさと切り上げて現地へ向かった方が良いと思うんだ
「・・・はぁ、まあ良いですけど。・・・【サラマンデル火山】はエリア5みたいですが、今のアルクさんのレベルで大丈夫ですか?」
「緊急クエストのおかげで種族レベルは40まで上がったよ。【転生】した今の俺ならLv.10差ぐらいはなんとも無いさ」
緊急クエストのおかげで今の俺のレベルは【戦人】がLv.40、【勇者】がLv.5まで上がった。足手まといにはならないだろう。
「わかりました。それじゃあさっそく行きましょう」
「よし。行くぞー、皆!」
「クルッ!」「だう!」「了解デス」「あい!」
元気よく駆け寄ってくるアーテルたちを連れて俺たちは【精霊図書館】を後にした。
「図書館ではお静かに願います」
・・・なお、【精霊図書館】から出る際に、ここの司書さんであるミミングさんに注意されてしまった。ごめんなさい。
===移動中===>【精霊界】エリア4
「ストック乱れ撃ち三昧!!」
「・・・なんなんですか、それ」
「あいー!!」
現在、俺たちはエリア5に向けて移動中である。
俺とアスターは【成体】化したアーテルの背に、アウル、カイザー、ミコトはその周囲を飛んでいる。
そして、俺はついでとばかりに、道中で襲い掛かってくる【邪霊】たちに向かって新しい武器を試している。
今、俺が試しているのは【術書アーディグリフ】、あらかじめストックした【魔法】を撃ちまくっているわけだが・・・いやー、便利だねこれ。消費無しで強力な【魔法】を連続で放つことができる。勿論ストックの続く限りで、だが。
それから色々試してわかったのが・・・【魔道書】にストックした【魔法】に対しては【強化】の効果がないようだ。
例えば俺自身に魔法攻撃力を上げる【強化】をかけた状態でストックした【魔法】を放っても、その【魔法】の威力は上がらない。ストックした【魔法】というのはストックされた時点で威力が固定されているようだ。
つまり、後から威力を上げることはできない。まあ、【弱体化】も効果が無いようだから威力が下がることもないようだが。
だから【弱体化】によって魔法攻撃力が0になったとしても、通常の【魔法】の威力は0だが【魔道書】にストックされた【魔法】なら通常の威力のままで使用できるってわけだ。
これは中々便利だ。実質、【弱体化】を無効化できるわけだし。
では【強化】で魔法攻撃力を上げた状態で【魔法】をストックした場合はどうか? という疑問もあったので試してみたのだが・・・これも効果無いみたいだ。
これは多分、ストックできる【強化魔法】と攻撃用の【魔法】との合わせ技だから、ストックできるのは攻撃用の【魔法】のみ、ってことなんだろう。どうしてもというのなら【強化魔法】と別々にストックして同時に使用しろって事みたいだ。
というわけで当然ながら【魔天の叡智】も効果が無い。・・・まあ、仮に効果があったとしたら【魔天の叡智】で最大限まで威力を上げた【魔法】を何発も撃ち放題になってしまうからな。そうなったらもう完全にバグだろう。
便利である分、気を付けなきゃいけないこともあるってことだな。
「アスターは【魔道書】を使わないのか? 倉庫に突っ込んでいただろ?」
「ええ、連絡を貰って持ってきてはいますが・・・まだ【魔法】をストックしていないんですよね。そもそも僕、あんまり【魔法】が得意ではないので」
「なら俺が後でストックしておいてやる。いざっていうとき使えるからな」
「お願いします」
===移動===>【精霊界】エリア5【サラマンデル火山】
「見えてきたぞ。あれじゃないか?」
ようやくエリア5やってきて見えてきたのは確かに火山だった。噴火口から黒い煙が立ちこめ、それが雲のように周囲を覆っている。おかげでこの辺りだけ異様に暗い。
この場所のどこかに【火の大精霊】がいる・・・らしい。
「・・・おいおい、火山って一つじゃないのかよ」
「いわゆる三つ子山ってやつですかね」
どうやら【サラマンデル火山】というのは三つの火山の総称らしい。三つの火山が正三角形上に並んでいるようでその中心が・・・溶岩の海と化していた。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




