体内の敵
===時間経過===>残り時間 110分
現在、俺たちはお魚さんの体内をエラに向かって進んでいる最中である。・・・言っといてなんだが状況が意味不明だな。
【バハムート】脱出の目処として、俺達はエラ呼吸によって体内の水を体外へ排出していると推理し、水の流れる方向へと進んでいる。
ただし、水の流れは非常にゆったりだったので、【成体】化したブランにボートを引っ張ってもらっている状態なのだが。残りの皆は引き続き周囲を警戒中である。
そして俺たちはボートの上で作戦会議・・・一応言っておくが俺たちだけ楽しようとしてるとか【眷属】たちをこき使ってるとかそんなことはないからな? ちゃんと理由があるからな?
色々確認した結果、次々と重大な事実が判明していったのだ。
まず最初に発覚した問題は・・・外部と連絡が取れないということだ。
きっかけはアヴァンからなされたこんな提案。
「外部のプレイヤーに助けを求めて、外から攻撃を加えてもらえば内部にも変化が現れるかもしれないのだ」
なるほどと思ったね。もしかしたら既に不可能だと諦めた、口部分からの脱出もできるかもしれないと思いさっそく連絡を取ろうと思ったら・・・『貴方は現在、電波の届かない所にいる為、通信できません』などという律儀にもふざけたメッセージが出てきてコールもメールもチャットも使用することが出来なくなっていたのだ。
同様にしてネットや掲示板にもアクセスできなくなっていた。つまり、助っ人も来ないし外部から情報を仕入れることも出来ないというわけだ。
もう一つ、では内部のプレイヤー同士ならどうかと試してみたら・・・短距離なら連絡はできるようだが、距離が離れると・・・具体的には100mぐらい離れたらもう駄目みたいだ。一度はぐれてしまったら合流するのは困難になるだろう。
どうやら【世界魚バハムート】の体内では外部との繋がりは一切隔絶、内部間でも離れたらアウト、ということらしい。謎の電磁波でも出ているのだとうか?
・・・この時点で嫌な予感がしていたんだよなぁ。
ここまで確認したと所で俺はふと思った。じゃあ、例えばカイザーをホームに【送還】して、直接アテナたちにこっちの情報を伝えてみるのはどうか? と。
正直、ルールの裏をかいたせこい手段だと思ったが・・・結論から言えば、できると言えばできるようだ。
ただし、一度【送還】したカイザーをこちらに再【召喚】することは出来ないらしい。
一度試してみようとカイザーを【送還】しようとしたら、『一度【送還】すると二度と【召喚】出来なくなりますがよろしいですか?』とまたまた律儀にメッセージが出てきやがったのだ。
再【召喚】が出来ないということは、カイザーたちのHPが0になって【強制送還】された場合も呼び出す事が出来ないということ。つまり、この中では【眷属】といえどHPが0になればリタイアという事だ。
それはプレイヤーも同じで、HPが0になっても蘇生されれば問題ないらしいが、クエスト参加者が全滅したらクエスト失敗、ホームに戻され再挑戦することは出来ない。
一応、この場からでもログアウトはできるようだが、その時点でクエストリタイア扱いされて次のログインホームになってしまうそうだ。
つまり、今の俺達の状態を端的に言うと・・・孤立無援の一発勝負、といった所か。
俺達が慎重に、かつ消耗を恐れて行動している理由が分かってもらえたかと思う。
別にアーテルたちを使い潰そうなんて微塵も考えていないのだが、リトライ不可と言うのが厳しい。
アーテルたちもそうなのだが、アイテム関連も補充できないわけで・・・今あるアイテムのみでやりくりしてクエストクリアを目指さなければならないわけだ。
そんなわけで俺達の消耗を防ぐ意味も兼ねて、移動及び周囲への警戒をアーテルたちに任せているわけだ。
・・・本当はそこまでしなくても良いって言ったんだけどなぁ・・・ラグマリアの奴が、
「マスター達ガ倒サレテシマッタラ私達ノ負ケナノデスヨ? マスター達ノ盾トナリ剣トナルノガ私達ノ責務デス」
というような事を言いやがって、さらにアーテルたちもそれに同調してしまった為に、俺達は黙って引かれるボートの上で休息しつつ作戦会議をしているのだ。
・・・それにしてもラグマリアの奴、普段毒舌なクセに良い事言うじゃないか。普段あれでも立派に【眷族】してるんだな。
と思っていたら、
「特ニマスターハ貧弱ナノデスカラ、絶対ニヤラレテハイケマセンヨ?」
「うっさいのだ! 言われなくてもわかっているのだ!!」
・・・訂正、やっぱり毒舌は毒舌だった。
「・・・うにゅー・・・それだとアーニャも足手まといなのです」
いかん! ラグマリアの毒舌にアーニャにまで被弾した!?
「イエ、アーニャ様ハメンバー全員ノ士気ヲ上ゲル【料理】ヲ作ッテ下サル最重要人物デス」
・・・最重要人物って、主のアヴァンより上ってこと? ・・・アンドロイドのクセにアーニャに餌付けされてるな。
しかし、口は悪いがラグマリアが言っていることはその通りで、アヴァンもアーニャも元々は戦闘を【眷属】に任せるタイプで自身は後方から指示を出すスタイルだ。
守るべき対象という意味では二人が優先であり、さらに言えばアヴァンは自身が作成した【兵器】で自分の身を守るくらいは出来るかもしれないが、アーニャは違う。もっと言うなら今のメンバーの10分の4がアーニャとその【眷属】、アーニャを失えば戦力的にも大ダメージだ。
つまり、アーニャを最優先で守る必要があるという意味ではラグマリアの言う通りなのだ。こうなるとテールがアーニャの傍に控えているのはかえって都合が良い。状況的に全力は出せないかもしれないが、それでもきっとアーニャを守ってくれるだろう。
頼んだぞ! テール!! という目をテールに向けると・・・
「キュウ!!」
わかってます! と言わんばかりに返事をしてくれた。フッ・・・さすがテール。俺が忠告するまでも無いか。
「どうしたのです、テールちゃん? 突然・・・あ、お腹空いたのです? クッキー食べるのです?」
「キュウ~♪」
・・・やっぱりわかっていないかもしれない。ちゃんと言葉にしないと伝わらないよね、うん。
「マスター」
「キュア!」
む? 水中を警戒していたカイザーとノワールが頭だけ水面から出してこちらに語りかけてきた。
「カイザー、ノワール。お疲れさん。水中はどうだった」
二人には水中の様子を探ってもらっていた。俺達がボートに乗って移動している関係上、ボートの真下が一番危険だし、なによりエラへと続く道が水中にある可能性もある。このトンネルを一気に駆け抜けないのはそのためだ。
・・・いくら俺でも魚の体の構造にまでは詳しくないし、どこになにがあるかわからないからな。
「我々ト同様ニ飲ミ込マレタト思ワレルモンスター達ト遭遇シマシタガ、撃退シマシタ。出口等ハ見ツカッテイマセン」
ふむ、予想はしていたがやはりモンスターも紛れ込んでいたか。まあ、【バハムート】の巨体ならクジラだって丸呑みできそうだし、体内に何がいてもおかしくはないな。
「わかった。引き続き、水中を警戒してくれ。・・・っと、その前にアーニャ、二人にもクッキーを」
「勿論なのです!!」
ねぎらい、というわけではないが何が起こっても不思議ではない状況だからな。士気を上げるためにも食べれる時に・・・って、これじゃあラグマリアの言ってることそのまんまだな。
「アリガトウゴザイマス」
「キュアー!!」
アーニャのクッキーをおいしそうに食べた二人は水中へと戻っていった。
にしてもこのトンネル・・・食道みたいだが、なげぇなぁ。一体、何キロあるんだよ。
「このまま進むとエラかもしくは胃にたどり着くと思うのだ・・・アルク、このまま何事もなく着くと思うのだ?」
「・・・いや、全然」
今の所、危険らしい危険は無いが、ここはわざわざ緊急クエストになっている【バハムート】の体内だ。
クリア条件が脱出となっている以上、一筋縄でいくはずがない。
そんな予想を裏付けるかのように・・・
「「「ピッギャッギャッギャッギャ!!」」」
「む?」
なんとも耳障りな声を上げながら何かがこちらに向かってきていた。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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