世界魚バハムート
===移動===>【バハムート】体内
「うにゅー・・・何が起こったのです?」
「端的にわかりやすく言えば・・・デッカイ魚に食われた?」
「・・・15文字にも満たない簡潔な説明で理解できなかった事象は初めてなのだ」
安心しろアヴァン。説明した本人にも理解出来てないから。
現在、俺とアヴァン、アーニャ、そしてアーニャに抱きかかえられているテールはボートの上で現状確認と作戦会議を行っていた。なお、このボートはアヴァンが用意した新【兵器】とかではなく、普通に市販のボートだ。
アーテルたち【眷属】の皆はボートの周囲を飛びながら警戒中である。何が起こるかわからないからな。
・・・ここで疑問に思う人たちもいるだろう。俺たちはともかく、なぜテールだけが警戒に加わっていないのかと。勿論、理由はある。
それは、俺たちの現在いる場所だ。
俺たちがいる場所・・・最初は周囲が真っ暗で何も見えなかったのだが、【ビートル君】と【ガタック君】を全機発進させ、ライトを点灯させることでなんとか周囲の状況を確認することができた。
・・・確認出来たとは言っても、俺達が現在、巨大なトンネルのような場所にいるということくらいだが。
幸いというべきか、このトンネルは半分くらいは沈没しているが、残り半分には水の無い空間があった。強力な海流によって流されてきた俺達にとって水中からの脱出は当然の行動といえるだろう。ただし、上陸でできる場所はどこにも無かった為に仕方なくボートを出して落ち着いているということくだいだが。
とはいえ、ボートは【眷属】を含めて全員が乗れるほどの余裕は無く、また周囲の警戒も必要とのことでテール以外の【眷属】が空を飛んで警戒に当たってくれているのだ。
その結果、テールは・・・うん、翼がないし飛べないんだよね。【空歩】スキルを使うっていう手もあるのだが、今は消耗は避けるべきだからな。消費無しで飛べる組に警戒してもらっている。テールに関しては・・・もう少し我慢してくれ。大丈夫、君にも活躍の場面があるさ。きっと。多分。
と、とにかく俺達が【世界魚バハムート】とやらに飲み込まれたのは間違いない。それは直前の状況からもそうだし、実はこんなメッセージも来ていたのだ
『緊急クエスト【世界魚バハムートからの脱出】が発生しました。制限時間内に【世界魚バハムート】の体内から脱出してください』
緊急クエスト【世界魚バハムートからの脱出】
勝利条件:【世界魚バハムート】体内から脱出
制限時間:120分
緊急クエスト来ちゃったよ。つまり、今の俺たちの状況はトラブルではなくクエストってことだ。
しかし、それで「はいわかった」と納得できるかと言われたらそうでもない。
「そもそもおかしいのです! アーニャたちがいたのはエリア4なのに、なんでLv.100のでっかいモンスターさんが出てくるのです!?」
そうだな、アーニャ。俺が【看破】で確認した【世界魚バハムート】のレベルは100、そんな怪物が出てくることなんて誰が予想できようか。運営に苦情申し立てても良いレベルだ。
「我々がいた海は水深100~200m程度だったはずなのだ。あの黒い海溝が口だったとして・・・全長何十キロもある魚が泳げるはずが無いのだ。一体、どうやって潜んでいたのだ?」
そうだな、アヴァン。リアル思考なこのゲームにしては理屈に合わない酷い初見殺しのトラップだった。奇襲くらいなら予想できるが、まさか食われるなんて予想できるか!
クエストならせめて受けるか受けないかくらいプレイヤーに決めさせて欲しかったぜ。せめて回避できるくらいの予兆とか。
・・・いや、予兆らしきものはあったか。あのかすかに聞こえた歌声のようなもの・・・あれがもしかしたら【世界魚バハムート】の出現の予兆だったのかもしれない。とはいえ、俺以外の誰にも歌声が聞こえなかった以上、俺の気のせいの可能性もある。
【バハムート】といえば、良くゲームなんかで出てくるドラゴンの名前として有名だが、元々は中東の伝承にある、世界を支えているといわれるほど巨大な魚の事だ。多分、それがモデルのモンスターなんだろう。もっとも伝承では7つの大海すらも砂粒程度の大きさに感じられるほどの巨大な魚らしいからそこまでは再現されていないだろうが。
しかし、俺が知る限り【バハムート】の伝承の中に歌声云々の話は聞いたことがないし・・・やはり無関係なのかもしれない。
まあ、今は何故こうなったかよりもこれからどうするかだよな。
せめてもの救いなのは【世界魚バハムート】を倒せ! ではなく体内から脱出するだけで良いという所か。さすがにLv.100で、かつとんでもない巨体の【世界魚バハムート】を倒せと言われたらお手上げだった。
ただ、ここが【世界魚バハムート】の体内で、俺たちが餌として飲み込まれたというのなら・・・ここは一体、魚の体のどの辺りなのだろうか?
少なくとも、ここの水は酸ではなくただの海水である事から見ても胃では無いようだ。
先が見えないほどの長く巨大なこのトンネルの事を考えると・・・食道といった所か。このまま流されて行っていたら、もしかしら胃で消化されていたかもしれない。ゾッとするな。
「しかし、魚の体の中か・・・ピノ○オになった気分だな。あっちはクジラだったけど」
「あ! アーニャもその話、知ってるのです!! 確かお腹の中で火を起こして脱出したのです!!」
「ふむ、体内から攻撃なのだ? 確かに理には敵っていると思うのだ・・・が、通用するのだ?」
試しに俺達総出でそこら辺の壁? に攻撃を加えてみたが・・・うん、傷一つ付かないな。試しに壁を【看破】してみると、やっぱり【世界魚バハムート Lv.100】って出てくるな。
レベル差に加えて相手の巨体さを考えると、俺たちがいくら攻撃しても爪楊枝に刺された程度のダメージしか与えられないんじゃないだろうか。・・・気分はピノ○オじゃなくて一寸○師?
「強行突破が無理となると他の脱出方法を考えなきゃいけないわけだが・・・まず思いつくのは口だよな」
要するに来た道を戻るというわけだ。脱出方法に関しては特に言及されていないわけだし、入口が出口であっても不思議では無いと思う。しかし・・・
「飲み込まれる直前の様子を見るかぎり、【バハムート】は今、口を閉じているはずなのだ。我々が今から向かったとしても都合よく口を開けてくれるとは限らないのだ」
・・・だよな。それに口を開けたとしてもあの強力な吸い込みがある。あれに逆らって脱出するのは至難の業だ。逆にまたここまで戻されてくるのがオチだ。
口からの脱出は不可能と考えて良いだろう。
「・・・やはり、ここは脱出のお約束・・・なのだ?」
アヴァンが言いにくそうに、それについて言及する。・・・むう、やはりそれか・・・
「マスターハ我々ニ、魚のフンニナレ、ト言ウコトデスカ?」
「はっきり言うななのだ!!」
ラグマリアの奴、俺とアヴァンが言いよどんでいたことをはっきり言いやがった。ほら、アーニャも嫌そうな顔しているし・・・そりゃそうだよな。くそっ! これがクジラだったら潮を噴いた時にでも脱出できただろうに。
【世界魚バハムート】というくらいだからな。全容はまだ確認できていないが文字通り魚の姿をしているだろう。当然、潮なんて噴かないだろうし・・・いや、待てよ? 魚、か。
「待て・・・魚なら他にも脱出できる場所があるかもしれない」
俺の言葉にアヴァンがピンと来た様子で続きを話した。
「・・・む? そうか! エラなのだ!?」
そう、【世界魚バハムート】も魚であるはずならエラ呼吸をしているはずだ。つまり、取り込んだ水から酸素を取り出し、エラから二酸化炭素とともに外へ排水しているはず!
「ということはアーニャたちはフンまみれにならなくて済むってことなのです!?」
「そういうことだアーニャ!!」
あとアーニャ、フンまみれっていうの止めてくれ。想像しただけで気が滅入りそうだ。
とにかく目指せエラ! だな!!
・・・それにしても気になるな。
この制限時間・・・過ぎたらどうなるんだ?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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