幻獣界の海
===時間経過===>1時間後
それから一時間ほど、群がるモンスターたちを撃退しつつ海中水泳を楽しんだ。
【幻獣界】・・・つまり、モンスターたちの世界なだけあって人の手で汚されていない海というのは大層綺麗だった。こうしてみると、人間の愚かさみたいなものを見せ付けられるな。・・・ん? そんな海で【兵器】をブッパしている俺も、この海を汚している事になるのか?
・・・ふ、深く考えないようにしよう。ここはゲームの世界だしな!
それはともかく【幻獣界】の海は本当に綺麗で幻想的だった。
・・・うん、本当に幻想的な海だよ。
急に海流が強くなって散り散りにされそうになったり、急に異常に水温が下がって凍えそうになったり、なんの脈絡も無く海底火山が爆発したりと・・・うん、やっぱり【幻獣界】は過酷だね。
もっとも、環境の変化に関しては【マキナ】である俺はへっちゃらだったが。同じくラグマリアとカイザーもだ。ドラゴン系のモンスターであるブラン、ノワール、テール、そして【天龍馬】であるアーテルと【精霊】であるアウルも割りと平気そうだった。
大変だったのは生身であるアヴァンとアーニャだ。
いくら優秀な防具や【兵器】に守られているとはいえ、やはり生身の体ではきついようだ。唯一救いがあったとすれば、海中がいくら過酷でも海面から上空へ逃げ出せば苛酷な環境からは逃れられるという事だ。つまり、退避さえできればあまり問題にはならないということだな。
ちなみに俺たちは方角的にはエリア5の方へ向かっている。【幻獣界】は各島をエリアと呼んでいるが、厳密にはその周囲の海も含めて一つのエリアなのだ。なので今いる海もエリア4ということだ。
ではエリア同士の境目がどうなっているのか? というのを確認しようと思ってエリア5へ向かっているわけだ。もっともわかりやすい境目なんてものは無く、気がついたら次のエリアに入っていた、なんてことになるかもしれないが。そうなると境目近くで戦闘してたらうっかりエリアをまたいでしまう、なんてこともありうるわけで・・・高レベル帯でそんな事態になるのは命取りだし、確認しておこうと思ったのだ。
そうそう、道中でもたくさんのモンスターたちと遭遇したぞ。
どうも海中のモンスターたちは水深が深ければ深いほど強力なモンスターが出現するようだ。
先ほどまでは浅い水深で活動していたのでLv.40ちょっとの魚型しか出てこなかったが、深く潜っていくほどにイカ型、タコ型、サメ型、カニ型など様々な種類とレベルのモンスターが出現した。
ただし、【幻獣界】の海は自然の海そのものなので水深が浅い所もあれば深い所もあってまちまちだ。要するに海中で高レベルモンスターを狙いたかったら、水深が深いところを探せってことだな。
なお、俺が一番驚いたのは水深が深そうな海溝を見つけ、中を覗き込んだら中からいきなりでっかいカニ型モンスターが出てきてハサミを突き出してきた事だ。あの時は驚いた・・・危うく串刺しになる所だったぜ。
まあ、華麗に避けて瞬殺したんだけどね。おかげでドロップ品のカニ肉を手に入れることが出来た。・・・フフフ、今から食べるのが楽しみだ。
・・・おっと、脱線したな。話を戻そう・・・何の話だっけ?
「アルクさん、アルクさん」
俺が思考の海に(文字通りに)溺れようとしているとアーニャから声をかけられた。なんだ?
「アレを見てくださいなのです」
アーニャが指差す先を見ると・・・なんだ? あれ?
海底の地面に・・・バカでかい穴が空いている?
一見すると黒い地面が何十キロにも渡って存在するかのように見えるが・・・あれも海溝なのか? しかし、よほど深い海溝なのか底が見えない。というか不自然なくらいに中が真っ黒だ。あれじゃあ、近くまで行っても何も見えないだろう。
・・・過酷な大自然の中に現れる不自然な場所・・・当然、俺たちには覚えがある。
「・・・海中のレアモンエリア、か?」
各エリアの中に突然現れるレアなモンスターが出現するエリア。エリアに不釣合いなモンスターが出現するが、それに見合うだけのレアなモンスターが出るだけあってプレイヤーは割りと血眼になって探し回っていたりする。
「ふむ・・・あれが噂のレアモンエリアなのだ? まさかこんな所で出くわすとは思わなかったのだ・・・それで、どうするのだ?」
・・・見た感じ、中は真っ暗だが俺たちにはこういった時のための対処手段がいくつかある。つまり、視界はクリアできるわけだから・・・
「行ってみるのです!!」
まあ、そうなるわな。アーニャは特にレアモンエリアに思い入れが強いみたいだし。まあ、それを言ったら俺もだけど。俺もアーニャもレアモンエリアでアーテルとノワールをゲットしたんだからな。
今回も、良い出会いが待っているかもしれない。
と、いうわけで俺たちはさっそく、その黒い海溝に近づいて行く。無論、警戒はしながら。
そして、黒い海溝の真上まで来たのだが・・・うーん、ここまで来ても中の様子が全然わからないな。それにかなり広大な海溝のようだ。これは隅から隅までくまなく探索しようと思ったら相当な時間がかかりそうだ。
まあ、今更怖気づいて引き上げるつもりはないんだけどね。
さあ、いざ突入! となった所で・・・
「・・・・・・・・・ラ~♪ ララ~♪」
「・・・む!?」
まただ・・・かすかだが、確かに・・・
「どうしたのだ? アルク?」
「いや・・・今、歌声のようなものが聞こえたと思ってな」
「歌声なのです?」
確かに聞こえたと思ったが・・・周囲にそれらしい声を発するものが見当たらなかった。
「・・・周囲100m圏内、センサーニ反応ナシ」
「該当音声モ確認デキマセン」
・・・ラグマリアやカイザーでも見つけられない? いや、該当音声が無いってことは・・・俺しか聞こえなかったってことか?
やはり、俺の気のせいか? しかし、用心するに越したことは無い。
俺は周囲をとにかく【看破】を発動させながら確認して行く。肉眼やセンサーに反応しない相手でも【看破】・・・つまり、スキルでなら見つけられるかも知れないからだ。
俺が周囲360度、くまなくさぐっていると・・・
いた!
【看破】に引っかかった奴が! それは・・・目の前の黒い海溝の中!!
【世界魚バハムート Lv.100】
??????????????
「・・・は?」
なんだ、これ? レベル・・・100? こんな奴が海溝の中に潜んでいるっていうのか?
・・・いや、待て・・・【バハムート】って魚はたしか・・・
俺は目の前の黒い海溝を凝視した。・・・真っ暗で深い闇、それはまるで・・・黒い何かが口を開けて獲物を待っているかのような・・・!?
「やべぇ! みんな早く逃げるんだ!!」
俺が叫ぶも・・・遅かった。
「きゃああなのです~~~!!??」
「なんなのだ~~~!!??」
「クルー!?」
「だうー!?」
「キュイー!?」
「キュアー!?」
「キュウー!?」
す、吸い込まれる!? 黒い海溝に!?
「うおおおお!!??」
「クッ!? ・・・離脱、不可能デス!!」
「吸イ込ム力ガ強力過ギマス!!」
【スクリューガジェット】すらもまるで役に立たず、どんどん吸い寄せられていく。
もう間違いない。【バハムート】は世界を支えると言われるほど巨大な魚・・・目の前にあるのは海溝なんかじゃない!
超巨大な魚が口を開けて待ち構えていたんだ!!
「カイザー!【クランメカロイド】だ!! 巨大化して全員を引き上げろ!!」
「駄目デス、マスター! 間ニ合イマセン!!」
その時、黒い影が動いた。
まるで山が動くように巨大な影が地面から盛り上がっていき、そして・・・
バクリッ!!!
と俺たちを飲み込んだ。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




