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最初の転身

いつの間にやら会議室は俺たち以外にアテナ、アルマを始めとしたクランメンバー全員がいた。ついでに表で遊んでいたはずのアーテルたちも。・・・何故?


偶然? たまたまログイン時間が被っただけ? ・・・本当は隠れて出待ちしてたんじゃないだろうな? いや、さすがに皆そこまで暇じゃないだろうが。


・・・まあ、良いだろう。そこまで見たいと言うのなら見せてやろうではないか!


俺の【転身】を!!


俺はゆっくり立ち上がり、皆の前に立つ。


背筋を伸ばし胸を張り、足は肩幅ほどに開きどっしり構える。


そして、左手を天高く掲げた後、渦を巻くように両手をゆっくり回しながら・・・


「てん~~~~~~しんっ!! セット! オープ「「「ちょっと待ったー!!」」」」


・・・いよいよ決め!って所で待ったがかかった。


「いやいやいや! アルク、何してるのよ!?」


「なにって【変身】・・・じゃなかった【転身】ポーズだけど?」


「今、【変身】ポーズって言おうとした!?」


何言ってんだ、アテナ。姿が変わるときはポーズを取るのがお約束だろう。


「仮にそうだとしても、何でビーストな魔法使いさんのポーズなんです? ライオンさんになるんですか?」


「がおっ!?」


・・・良く知ってるじゃないか、アルマ。そしてなぜか反応するレオーネ(笑)。


「いや? 単に特徴的で好きだっただけだ」


ちなみに「レ~ッツ! てんしん!!」と迷ったのはここだけの秘密である。


「「「・・・」」」


・・・何言ってんだ?コイツ?という目で見てくる皆と、なぜかほっとした様子のレオーネ。大丈夫、俺がライオン系の獣人になったからって君のアイデンティティは無くなったりしないから。


それにしても、皆からそういう目で見られるのは心外だな。せっかく場を盛り上げようとしたのに・・・


「さっすがアニキっす! わかってるっすね!!」


いや、一人だけ盛り上がってる奴がいたな。アシュラ、お前だけはわかってくれると思ってたよ。


「寸劇は良いから、早く見せてくれないかい?」


冷酷にあっさりさっくりばっさりざっくりと先を促すラング。ノリの悪い奴である。


「やれやれ、仕方が無いな。じゃあ、行くぞ・・・ご唱和下さい! 我の名「「「だからそれはもう良いって!!」」」・・・わかったっての。【転身】!」


せっかく、ポーズを止めて最新(2020年10月現在)の名乗りだけにしようと思ったのに、邪魔されてしまったぜ。仕方なく普通に【転身】する。


俺の言葉と共に俺の体が光に包まれ、変化する。


その変化は一瞬で済み、光が弾けて新しい俺の姿があらわになる。


「「「「「おお~~~~!!」」」」」


両手足・・・肘から先と膝から先が【人間】のそれではなく機械の手足となり、さらに俺の瞳(俺自身からは確認できないが)もまた、機械のそれになる。


それ以外に見た目上の変化は無いが、中身は違う。今の俺はアンドロイド・・・そう、つまり・・・


「おお! アルクが【マキナ】になったのだ!!」


そう、アヴァンが言うとおり、アンドロイド・・・もしくは機械人とも呼ばれる【マキナ】となったのだ!


・・・【人間】がそんな簡単にアンドロイドになって良いのか、とかアンドロイドからお手軽に【人間】に戻れて良いのか、とか突っ込んではいけない。ここがゲームの世界だから。


「・・・マスターアルク、ソコマデ私ノ事ヲ・・・」


ラグマリアさん? 別に貴方はなんにも関係ないですよ? そもそも君は【ヴァルマキナ】であって【マキナ】じゃないだろ?


「・・・ふーん」


「・・・むぅ」


アテナさん、アルマさん、不服そうにしないでもらえます?


「・・・へぇ・・・なるほどねぇ」


ラングの奴が関心した様子で人様の腕をコンコン叩きやがる。・・・機械に対してはやってしまいがちだが、やられる側になってみると意外と不快だな。俺も今度から注意しよう。


「・・・確かに体が金属のように硬くなっているね。見た目はそんなに変わらないけど・・・文字通り別人みたいだ」


ラングはそう言っているが、中身の俺の方はというとあんまり変わったように思えないんだよな。いや、見た目は確かに変わったよ? でもだからと言って体を動かす分にはあんまり変わったようには思えないんだよなぁ。ちょっと関節が硬くなったか? と思うくらいだ。 多少の違和感はあるが・・・すぐに慣れると思う。


「・・・ふむ、その体でも防具は今まで着られるみたいじゃの」


ガットの指摘の通り俺は今、ヴィオレが作ってくれた【黒天の戦闘服】・・・つまり、長袖長ズボンの服を着ているのだが・・・機械の両手足部分が露出していて、服の袖や裾が勝手に捲し上げられている状態になっていた。なぜか戻すことができず、このままにするしかないようだ。・・・どうやらこの機械の手足は自己主張が激しいらしい。


「これはヴィオレに半袖半ズボン版の服を用意してもらった方が良いかもしれんのう」


「ああ、そっちの方が良いだろうな。後で材料を渡すからヴィオレに頼んでおいてくれないか? ガット」


別にこのままでも問題ない気がするが、見栄えがね。腕の方はともかく足の方・・・ズボンの裾をまくり上げて半ズボン風にしているのが正直、かっこ悪い。沼にでも足を突っ込むのか? と言われそうだ。


「わかったぞい。・・・それで【功鎧アルドギア】を装着した場合はどうじゃ?」


ガットに促されるまま、今度は【功鎧アルドギア】を装備・・・したは良いのだが両手足、つまりグリーブとバンブレースが未装着状態になった。ブレストの部分は装着できたのだが・・・やはり、機械の手足の上に鎧を着ることはできないようだ。


「ふむ、なんとも中途半端な感じじゃのう・・・ワシとしても残念じゃが、鎧も合わせて新調するか?」


どうやらガットはこの姿向けの鎧を作りたいようだ。職人の意地ってやつかな? しかし・・・


「それも考えたんだがな。この種族は元々、アヴァンの作った【兵器】をフル活用するために選んだ面もあるんだ。・・・アヴァン、例の【兵器】はもう完成したんだろ?」


「む? 勿論なのだ・・・ああ、なるほど。確かに()()を使うなら【マキナ】の体の方が都合が良いのだ」


そういうことなのだ。


せっかく様々な種族になれるんだから、それぞれの種族の特徴を厳選した上で選ぼうと考えたわけだ。その一つが【兵器】使用に特化した【マキナ】というわけである。


「というわけでガット、【マキナ】の時の装備はアヴァンの【兵器】で固めるつもりだ。だが、それはそれとしてお前には頼みたいことがある」


「なんじゃい?」


クイックイッとガットを招き寄せると耳元でごにょごにょと用件を伝える。


「ごにょごにょ・・・で種族は・・・だから・・・に合わせた・・・ごにょごにょ」


「ふむふむ、なるほど・・・面白そうじゃな。良かろう。引き受けてやろう」


良かった。どうやら引き受けてくれるようだ。


・・・何を頼んだのかって? それはまだナ・イ・ショ(はあと)。


と、言うわけでさっそく【ミスリルタイト】を始めとした大量の素材をガットに渡す。


「・・・これだけの素材を・・・服の材料まで・・・お主、以前からこの事を考えていたのか?」


「まあ、そうだな」


案だけなら【転身】スキル関係なく、トーナメント前から考えてはいた。ただし、大量に素材が必要になる上、時間もかかるだろうから先送りにしていた。しかし、【転身】というドンピシャなスキルを手に入れ、時間もできた今、遠慮なく俺は俺の望みのために動く事に決めたのだ!!・・・作るのはガットだけど。


「隠し事とは気に入らないけど・・・まあ、その内わかるみたいだね。 それでアルクはこれからその種族とアヴァン君の新【兵器】を試しに行くってわけだね?」


「ザッツライト!」


その通りだ、ラング!


せっかくここまで準備したんだ。さっそく試してみないとな!!
















・・・なお、余談だが。


「クルー・・・」


「だう・・・」


多少見た目が変わった俺を心配してか、アーテルとアウルが寄って来た。


「俺は変わってないぞ?」


という意味を込めて二人の頭を撫でてやったのだが・・・どうやら、硬い機械の手で撫でられるのが嫌なようだ。


まさか【マキナ】種族にこんな欠点があったとは・・・確かに【マキナ】は【眷属】との相性が良くないと聞いたことはあったが・・・ガッデム!


幸い、元の【戦人】の姿に戻ったら二人とも安心してくれたようだ。・・・今回は【転身】だから良かったが、今度【転生】するときは注意した方が良さそうだな。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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