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裏は生誕す

目の前の異常事態に対して少年は嬉々として解析を進めている。


「しかし、ここの倉庫に保管されていた【ガティアス】たちは貴重な物だったのでは?」


まるで気にしていない様子の少年に対し、アニスが心配の声をかけるが、彼女の言う通りこの倉庫に収められていたのは強力な武器、防具、兵器、そして生物に取り憑き、強大な力を持つ・・・()()()()()【ガティアス】たちだった。


「まあ、そうなんだけどねー。集めたのは良いけど、この倉庫の【ガティアス】たちはどいつもこいつも休眠していて役に立たないしね。かといって【ガティアス】は【収納箱(アイテムボックス)】にも収められないから、倉庫に仕舞ってただけで・・・結果オーライじゃない?」


【ガティアス】はどんなものにでも取り憑き、支配する。それは()()()()()()()()()()()()()()。故に【収納箱(アイテムボックス)】ですらも取り憑かれるリスクがあるのだ。


本来であれば【ガティアス】に触ることですら危険を伴うのだ。アニスがアルクに植え付けようとした【ガティアスコア】を持つことができたのは、【封印の精霊】であるアニスの力で【ガティアス】の力を抑え込んでいたからに他ならない。それでも短時間しか効果がなく、長時間触れていればアニスも取り憑かれていただろう。


それほど危険な【ガティアス】だが、対抗策が無いわけでは無い。


【ガティアス】に唯一対抗できるのは、生物の持つ強い意思や思念。その最たる力である【固有(オリジナル)能力(アビリティ)】を持つが故に、アルクが【ガティアス】からの支配をはねのけることができたのだ。


例え【固有(オリジナル)能力(アビリティ)】を持たず、【ガティアス】に取り憑かれたとしても、強い意思・思念を持っていれば、【ガティアス】の支配に抵抗し、さらに打ち破る事もできる。


この倉庫に保管されていたのは、そんな強い意思を持った生物、もしくは持ち主の強い思念が宿った武器、防具、兵器たちなのだ。強い意思・思念が【ガティアス】の支配に抵抗し、拮抗した結果、休眠状態となったものたちである。


とはいえ、その休眠状態・・・均衡がいつ崩れるともわからない。仮に強い意思・思念が勝てば【ガティアス】ははじき出され、また別のなにかに取り憑くだろう。そのため、休眠状態の【ガティアス】といえど【収納箱(アイテムボックス)】にしまうことができず、特殊な()()が施された箱の中に保管されていたのだ。


当然、その封印を施したのもアニスであり、定期的に彼女は封印をかけ続けていた。そのため、必然的にアニスはこの倉庫の管理者になっていたのだ。


しかし、その封印も変異した【ガティアスコア】によって破られ、【ガティアス】も強い意志・思念を宿したものたちも、丸ごと取り込まれてしまった。


だからこそアニスは人一倍、責任を感じていたのだ。


それを察していた少年は、話題をそらすように話を始める。


「・・・君たちはこの【ガティアスコア】がこれからどうなると思う?」


それは話題をそらすのと同時に、他の者の意見を聞きたいという思惑もあったのだろう。


しかし・・・


「・・・興味ない」


カオスは興味がない様子でつれなく答え、


「ヒャハハハ! やっぱ、チョー強い【ガティアス】になるんじゃ・ね・ぇ・の?」


ボレアスはさも面白そうに答える。正直な所、まともな答えではなかったのだが、少年は割と真剣にそれを聞いている。


「ふむふむ、君たちはどうだい?」


「そうですわね・・・内部に力を溜め込んでいるように見えますわね。内部で何か起こっているのでしょうか?」


アニスは【ガティアスコア】を見ながら真剣に答えた。確かに彼女の言う通り、少年のモニターにもそのことがありありと映し出されていた。・・・ただし、計測器が振り切れそうなほど巨大な反応が、だが。


続いて少年がアギラの意見を聞こうとした時、それは起こった。


「・・・! エネルギーの収束を確認!! 膨大な生命エネルギーを検知しました!!」


焦った様子のアギラの声に全員が【ガティアスコア】に目を向けた。


・・・【ガティアスコア】の胎動は止まっていた。


代わりに・・・


ピシッ!


【ガティアスコア】にはヒビが入っていた。


「・・・何が起こる?」


ピシッ! ピシッピシッピシッ!


カオスの言葉に応えるようにヒビが大きくなる。


「・・・ヒャハハ! まるで卵が割れるみ・た・い・だ・な」


ボレアスが、そう軽口を開いたが・・・


「・・・なるほど、卵・・・生命エネルギー、ね」


少年は何かに納得している様子だった。


「「・・・」」


一方でアニスもアギラも一心に【ガティアスコア】を見つめている。


・・・()()()()()()()()()。そんな予感と共に。


ヒビはやがて【ガティアスコア】全体に広がっていき、そして・・・


ピシッピシッピシッ! パリィィィンッ!!


【ガティアスコア】は砕け散った。


少年はモニターから目を離さず、残りの四人も臨戦態勢を取りながら状況を見る。


砕け散った【ガティアスコア】の破片が飛び散る・・・その中に浮かび上がるシルエットがあった。


その正体が徐々にあらわになっていく。


「・・・む?」


「・・・んん?」


どんな怪物が生まれるのかと身構えていたカオスとボレアス。だが、そのシルエットは思ったよりも小さかった。


大人の【人間】サイズだ。


いや、サイズだけではなかった。手、足、体、頭・・・そのシルエットは明らかに【人間】のものだった。


やがてその姿が完全に視認できるようになって・・・その場の全員が再度驚いた。


「・・・まさか!」


「・・・!!」


その姿にアニスもアギラも驚いた。


しかし、一人だけ冷静に・・・


「なるほど、そうきたか」


少年はその姿を見据えると、ツカツカと倉庫の中に入っていった。


「・・・おいおい」


「ヒャハハ! 随分、怖い物知・ら・ず・だ・な!」


慌てて少年をおいかける四人。


【ガティアスコア】から現れた()()は・・・見た目は【人間】だった。


見た目は成人男性といった所だが・・・、肌も髪も()()という明らかに普通の【人間】とは異なる姿だった。


さらに胸には小さな【ガティアスコア】が埋め込まれていた。そのことが、()()が【人間】ではなく【ガティアス】だということを物語っていた。


そんな【人間】の形をした【ガティアス】が目を閉じたまま、佇んでいた。


しかし・・・その場にいる全員にとって問題なのは、何よりもその容姿だった。なぜなら全員が見覚えがあるからだ。


「なるほどねぇ・・・おそらくだけど、【ガティアスコア】がアルクくんに埋め込まれた時に、アルクくんの()()()()()()()()()()ようだね。そして今度は、この倉庫の中の物を使って・・・()()()()()()()()()()


そう、肌と髪の色こそ異なるが・・・その姿はアルクとうり二つ、いやアルクそのものだった。


そんな()()()()()()()()()()()()()】に、少年は臆することなく話しかける。


「やあやあ! 誕生おめでとう!! ・・・君は【ガティアス】なのかい? それとも・・・アルク?」


少年の声に反応したのか【ガティアス】はゆっくりと目を開く。


・・・瞳の色も、灰色だった。


「・・・【ガティアス】・・・? ・・・アルク・・・?」


【ガティアス】がゆっくりを発した言葉・・・その声もアルクと全く同じだった。


そのことにも驚きだったが、それよりも当の【ガティアス】は、何を言われたのかわからないといった様子なのが問題だった。


「・・・ふむ、アルクくんの記憶までコピーしているというわけではないみたいだね。多少の知識はあるみたいだけど、生まれたばかりだし、ほとんど何もわかってないってことかな? ・・・まあ、詳しいことはこれから検査してみないとね!!」


少年は新たな研究材料を見つけたといわんばかりに喜んでいる様子。


「一応、彼も【ガティアス】みたいだし・・・アニス、アギラ。君たちも彼の調査を手伝ってもらうよ?」


「・・・わかりました」


「了解」


得体のしれない何かを見る様子のアニスとアギラ。しかし、少年の言うことに逆らうつもりは無いようだ。


「とにかく彼を・・・うーん、名前が不便だね。どうしようか・・・」


少年が名前をどうしようか悩んでいると・・・


「・・・名前・・・俺の・・・名前」


「うん?」


名前という言葉に反応したのか、【ガティアス】は話し始めた


「俺の・・・名前・・・は・・・ゼルク」


舌足らずの言葉だったが、はっきりと自分の名前を口にした。


「・・・なるほど、君の名前はゼルク、だね」


少年はその【ガティアス】をゼルクと呼ぶことに決めたのであった。


こうして(ゼルク)が生まれた。


そのことを(アルク)はまだ知らない。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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