厄介極まりない
敵は複数だが、それ以上にこちらの方が数が多い。となると乱戦を仕掛けてくるかと思ったが・・・少し違った。
こちらに向かってくるのはゼルエルとケナズと呼ばれた男性のみ。
ケレズと呼ばれた女性は何をしているのかというと・・・その場から動かず、持っていた棒のようなものを口元に・・・あれはもしかして・・・
「ピュルルルル~♪」
そして発せられる高らかな音色。あれは・・・フルートか?
なんでこんな時に? ・・・と一瞬思ったが、理由はすぐにわかった。
「うおっ!?」
「ええ!?」
「きゃあ!?」
か、体が急に重く・・・あのフルートの音色のせいか!
「アハハ! 隙だらけだよ!!」
「クッ!?」
ガキンッ!!
ゼルエルが振り下ろしてきた大剣を【豪剣アディオン】で受け止める。
「そこっ!!」
そこにすかさず、ケナズが持っていた刀で切りかかってくる。
「アルクさん!!」
ガキン!!
そこへアルマが割って入り、【魔杖ブルーゼブル】で刀を受け止めてくれた。
それは良かったのだが・・・体に上手く力が入らない。それに動きも鈍くなってる。いつもだったら避けるなり押し返すなりできる程度の攻撃に、こうして足止めを食らってしまっている。
ここはやはり・・・
「【ラピッドアロー】!!」
俺と同じことを思ったのか、膠着状態の俺たちを無視して、アテナが【聖弓レッドセラフ】の矢を放つ。狙いは当然、音色の元凶のケレズだ。
だが・・・
「ピュル~♪」
曲調が変わると共にケレズの周囲にバリアのようなものが展開され、アテナの矢が弾かれた。・・・一見すると無防備に見えるがやはり防御スキルで対策していたか。
それにしてもアテナの矢があんなにあっさり弾かれるとは・・・やはり、俺たちの攻撃力が落ちてる?
このままだとまずいな。
「【グランディスバンカー】!!」
そこへカイザーも攻撃に参加する。狙いは・・・ケナズだ。アルマに代わり、カイザーがケナズの相手をすることでアルマの手が空いた。
この好機を逃さずアルマが【上級魔法】の詠唱に入る。半端な攻撃が通用しないバリアなら【上級魔法】の火力で一気に押し切ろうとする算段だろう。
「我が敵対者よ、凍れる時の中「ピュッ♪」・・・え?」
がしかしアルマは途中で詠唱を止めてしまった。
「どうしたんだ、アルマ!!」
「ま、【魔法】の使用がキャンセルされてしまいました!!」
な、なんだって!?
「アハハ! ケレズの【音撃魔法】は相手の【魔法】詠唱を妨害してしまうんだ、よ!!」
「ぐおっ!?」
鍔迫り合いの状態から徐々に追い込まれていく。なんつーパワーなんだ、ゼルエルの奴。1階の時とはまるで違う。さらにこっちはパワーダウンしている。
このままじゃあ・・・
「クルー!!」
「だうっ!!」
と、そこにアーテルの【レーザーダイブ】とアウルの【オービットソード】がゼルエルに向かう。
「おっと」
しかし、ゼルエルは余裕でそれを回避、後退する。・・・正直、助かったぜ。
「・・・カイザー! みんな! 少し頼む!!【ブレイブ】!」
「了解デス」
【勇戦術】による強化を全員にかけ、カイザーの指揮のもとアーテル、アウル、レオーネ、フィオレたちに足止めをお願いする。
対策を考える時間が欲しかったからだが・・・参ったな。ここに来てまた新しいタイプの敵か。
音を使った攻撃・・・しかも【アコースティックバット】の超音波と違って様々な効果がある攻撃ができるみたいだ。さらに、だ。
「・・・アルクさん、気がついていますか?」
「・・・ああ」
体が重くなる弱体化効果・・・それは今もなお継続中だ。さっきバリアを展開したり、アルマの詠唱をキャンセルした時もだ。
つまり、複数の効果を同時に繰り出すことができる攻撃・・・厄介極まりない。
ここはケレズを優先して倒すべきか? だが、弱体化効果の影響かアテナの矢も簡単に弾かれたし、詠唱が必要な【魔法】も封じられる・・・完全に遠距離が得意なアテナと【魔法】が得意なアルマを封じに来てるな。もしや今までの塔内の戦いを見られていたのか?
「とりあえず、この弱体化をどうにかすべきだが・・・アテナ!」
「わかったわ!【浄化】!!」
アテナの【浄化魔法】により、弱体化効果も解除され体が軽くなった。
「ピュルルルル~♪」
・・・が、やはり駄目だった。一時的には解除されてもあのフルートの音色が聞こえている限りはまた弱体化にかかってしまうようだ。
「・・・ちぃ、やはりあのケレズって子を直接叩くしか「そうはさせん!!」うおっ!?」
俺たちが相談していた所にケナズが再度切りかかってきた。
カイザーたちの足止めを突破してきたっていうのか? ・・・いや、それもあるがゼルエルの奴が1対5であるにも関わらず、互角以上に戦っているようだ。
ケレズだけじゃない・・・ゼルエルもケナズも十分に厄介だ。
「アテナ、アルマ。こっちは俺が相手をする。向こうは任せた」
俺は【豪剣アディオン】をしまい、代わりに【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】を取り出した。
「・・・わかったわ」
「ご武運を」
二人が去り、残された俺とケナズがにらみ合う。・・・どうやらケナズは二人を追う気はないようだ。さすがにそれで俺に隙を見せるほど間抜けではないか。
すると、ケナズは刀を俺に向けながら言った。
「・・・アルク殿。ここは一つ、手合わせを願います」
・・・なんか丁寧にお願いされた。しかし、殿って・・・いや、それより初対面であるはずの俺の名前を知っている所を見ると、やはり塔内での俺たちの戦いを見ていたか、ゼルエルから話を聞いているのか?
「いえ、【人間界】で行われたバトルトーナメントでの貴殿の戦い振りを見てから手合わせ願いたいと思っていました」
・・・また普通に心を読まれたよ。俺ってそんなに顔に出やすいのか?
「いえ、表情から推察したのではなく、本当に心の声を聞いたのですよ。それが僕の力なので」
・・・ほわっつ?
「申し訳ありませんが、貴方相手に手加減も油断もするつもりはありません。【読心】のケナズ・・・参ります!!」
まさに俺に考える隙は与えないと言わんばかりに切りかかってくるケナズ。
「【双刃・疾風連斬】!!」
そんなケナズを迎撃しようと大量の斬撃を飛ばす俺。だが・・・
「・・・なんだと!?」
まるで全て読んでいるかのように、全ての斬撃を無傷で避け、俺に迫るケナズ。
まさか、本当に俺の心が読まれているというのか!?
「そうですよ」
目前に迫ったケナズが俺の心の声に応えると同時に刀を振り下ろしてくる。
ガキンッ!
それを【霊刀ムラクモ】で受け止めるが、やはりそれを読んでいたかのように即座にもう一方の刀で突いてきた。
今度は【妖刀オロチ】でそれを弾くが、それと同時に・・・
「グッ!? 【バックステップ】!」
無防備になった俺の腹にケナズの蹴りがめり込んでいた。とっさに使った【バックステップ】で距離を取る俺。
・・・今のは明らかにおかしかった。同時に攻撃なんて相手の動きを見てからでは間に合わない。予めどう対処するかわかっていないと無理だ。
「素晴らしい反応と勘の良さです。だからこそ、手加減はしません!!」
再び迫ってくるケナズ。
フルートの音色はいまだ聞こえてくる。
・・・本当に厄介なヤツラだ。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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