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昔と今

今回もそうだったが、前回も【試練の塔】に挑んだのは腕試しの意味が大きかった。ただし、前回はトーナメントに向けて、という前提があったので、より本番に近づけようと戦闘中に回復アイテムを使わないでどこまで行けるか、というのも試していた。


・・・今にして思えばこれが()()()()()()()でもあり、()()()()()()()と言えるだろう。


回復アイテムを使わない以上、回復手段は俺の【回復魔法】()()である。それもアテナやアルマほどの回復量は無い上に、MPを消費するので【俊天の疾走(アーク・アクセル)】や【韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】の使用時間にも影響が出る。


さらに言えば、当時の俺たちは防御スキルというものをほとんど持っていなかった。俺は勿論のこと、アーテルもアウルもイケイケ攻撃スタイルだからな。


そう・・・だからなのだろう。


()()()()敵を倒すのに苦労は無いが、()()()()苦戦する。


前回の【試練の塔】での挑戦でわかったのは、こちらの戦い方にはまらない、もしくは対抗する手段を持つ相手には、()()()()()()()()()()()を用意しておく必要がある、ということだ。


トーナメント前にそれに気がつけたのは確かに幸運だっただろう。問題はそのためにアーテルやアウルを必要以上に追い込んでしまったということだ。


結果論だけで言えばここで【魔龍覚醒】の事が知れたのも幸運だった。ぶっちゃけミーシャやカオスとの戦いでは【魔龍覚醒】が無ければ負けていただろうしな。


とはいってもそれは俺の実力不足で準備不足が原因でもある。アーテル自身は【魔龍覚醒】を使うことを忌避しているようだし、いくら追い込まれたとはいえそんなスキルを使わせるのは本意では無い。ならばこそ【魔龍覚醒】を使うことなくトーナメントを勝ち残れるよう準備していたのだが・・・本番はそんなに甘くは無かったわけだが。


もっともそういった諸々の教訓を事前に得ていなければ優勝はできなかったかもしれない。そういう意味では、目の前の【バイコーンブラウ・レガル】にも感謝しなければいけないのかもしれない。


・・・とはいえ、今は倒すのみだが。


「【ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」


【王鎧アウルドギア】の効果でパワーもスピードも増した拳の弾幕を放つ。だが・・・


「ヒヒーン!!」


それら全てを余裕で避ける【バイコーン】。


しかし、それはフェイントだ。


「クルーッ!!」


「ヒヒン!?」


【バイコーン】の避けた先に待ち構えていたアーテルが体当たりを食らわせる。その力強い当たりにさしもの【バイコーン】もわずかによろけ、体を鈍らせる。


その隙を逃さず、


「【ミーティアルスラッシュ】!!」


【豪剣アディオン】による一閃。しかしそれすらも避けられてしまう・・・いや、わずかだが切っ先がかすった。


距離を取ろうとする【バイコーン】。


「クルーッ!!」


それを許すまいと【シャイニングフェザーインパクト】で牽制するアーテル。


光の弾丸を避け続ける【バイコーン】。


その隙に俺も【バイコーン】の背後に回りこみ、決して逃がさないようにする。


そう・・・【バイコーン】に苦渋を舐めさせられて以来、俺たちは訓練に訓練を重ねた。連携を重視し、いかなる敵に対応できるよう、様々な状況を想定して訓練を続けてきたのだ。そのかいもあって今や俺たちはツーカーの仲、言葉を交わさなくとも状況と戦術を理解し、合理的に、徹底的に敵を追い込めるほどの連携攻撃ができるようになったのだ!!


・・・回復スキルや防御スキルを増やさなかったのかって? やだなぁ、俺たちの持ち味は特攻スタイルですよ? 受けに回るなど言語道断! 攻め続けることこそ我が本懐!! ってなもんですよ(笑)。


とまあ、俺たちの完璧な連携により徐々に追い詰められていく【バイコーン】。


そして・・・


「【マキシマムスラッシュ】!!!」


「クルーッ!!!」


「ヒヒーーーーン!?」


俺の剣とアーテルの【レーザーダイブ】の挟み撃ちにより、とうとう倒れ、消えていく【バイコーン】。


「よっしゃあ! 俺たちの完全勝利だ!!」


「クルーッ!!」


『だうーっ!!』


勝利を喜ぶ俺たち。前回の借りは返せたな。


特に今回のアーテルの動きは良かったな。一度経験している事もあるだろうが、【バイコーン】のスピードに翻弄されず、ちゃんと俺の動きに合わせてくれた。


俺はご褒美と言わんばかりにアーテルの頭を撫でてやる。


「良くやったな、アーテル。これで俺たちは着実に強くなっていることが証明されたぞ。いつまでも昔の事をくよくよしてないで前を見ろ。俺たちはもっともっと強くなれる」


「クルッ!!」


うむ、良い返事だ。


『だうっ! だうっ!!』


「おっと、勿論アウルもだぞ。ハハハ」


いやー、一時はどうなる事かと思ったが【魔龍覚醒】も使わず勝てて良かった良かった。アーテルも前回のことを吹っ切れたようだしな!


「・・・もう、何がなんだかわからない戦いだったわね」


「ええ、目で追いかけきれませんでしたから・・・」


「それに前回って言ってもほんの1、2週間ぐらい前の話よね?」


「そんな短期間で相手を完封できるようになるものなんですかね?」


「マスターアルクタチノ成長ニハ目ヲ見張ルバカリデス。データトシテ記録シテオキマス」


・・・なんかアテナとアルマとカイザーが戦々恐々としている。


アーテルと【精霊憑鎧アーマー・ポゼッション】を解いたアウル、レオーネとフィオレは和気藹々としているのに・・・


まあ、これでどんな相手でも戦い方次第で勝てるということががはっきりしたな。それも短時間で仕留められたから、消耗も少ないし。


トーナメントと【試練の塔】との違いは、こっちは連戦扱いになるということだ。つまり、戦いが終わってもHPやMPは回復しない。


となると、万全の状態で上階へ向かうためには自然回復を待つか、回復アイテムを使用するしかない。自然回復は時間的な問題で却下、となると後は回復アイテムだが当然数に限りがあるわけだ。そうなると極力消耗を避けて戦う必要があるわけだが、かといって手を抜いて負けたらどうしようもない。


ようするに見極めをしっかりしろってことだ。


今後、各世界をまわる際・・・とくに高レベルダンジョンなんかに入るときなどはそういう機会も増えていくだろう。


そういう意味では規則的に戦闘と休息をはさむ事ができるこの【試練の塔】は良い練習にもなる。


あとは今の俺たちでどの階まで行けるのか見極められるのか、だな。


「・・・良し! 回復も終わったし次の階へ行こうぜ」


「わかったわ」


「はい」


「クルーッ!」


「だう!」


「がお!」


「ピュイ!」


「了解デス」


とうとう俺たちは前回の記録を塗り替えて次の階へと進むのであった。













「そういえば・・・」


俺はふと疑問に思っていたことを口にした。


「どうしたの? アルク?」


「いや、リアルでは【バイコーン】って【ユニコーン】とは逆で純潔の乙女には懐かないって言われてるらしいんだが、このゲームだとどうなのかなーっと思って・・・」


「・・・それはつまり、女性プレイヤーと戦うときにどうなるのか気になるということですか?」


「・・・もしかして【バイコーン】の反応で純潔の乙女なのかわかるなー、とか思ってない?」


・・・やばい。二人が氷点下を軽く下回るような凍えた目で俺を見てくる。


「・・・アルクさん、知ってますか?」


「ん?」


アルマさん、目も声もなんか怖いんですけど。


「・・・【バイコーン】って善良な男性を襲って食べるって話もあるみたいですよ?」


「・・・」


・・・おうふ。物騒すぎる。この話はもう止めよう。


(*・ω・)*_ _)ペコリ


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