次の方針
「・・・さて、茶番はこれぐらいにするか」
唐突に、冷静に、賢者のように我にかえる俺。
「急に素に戻らないでくれる?」
「こっちが恥ずかしくなってきました」
だって、アスターたちが来たし・・・恥ずかしいんなら離れれば良いんじゃないの? なんで引っ付いたままなの?
「皆さん、こっちに来たんですね」
「向こうの様子はどうだったのだ?」
「すごかったっすよ!」
「大盛況だったのです!」
・・・ちょっと待て。なんで皆、普通に会話始めてるの? 特にアスター、アヴァン。この状況が異常だとは思わないのか?
「こっちもすごいですよ! あのトラクターのおかげで農業がはかどるはかどる」
「おお! カッコいいっす!!」
「ふふん! 我の自信作なのだ。動作も問題なかったのだ」
「さっすがアヴァン君なのです!!」
・・・なんだろう? 体を張ったボケを全スルーされた気分。いろんな意味でむなしくなってきた。
「それで、アルクさん。ラングさんから情報は聞けました?」
アスター! 良かった、俺のことを無視していたんじゃないんだね? ・・・いや、俺の状況を無視して話しかけてきてるけど!
「・・・ああ、【火炎草】は【精霊界】のエリア5南の火山地帯にあるんだそうだ。他の薬草の入手場所は調査中のようだが、薬草自体は時折マーケットで高値で売りに出されているようだ。多分、偶然手に入ったか、入手場所を隠しているプレイヤーがいるんだろう」
回復系の【ポーション】と違って【ブーストポーション】や【レジストポーション】は必須アイテムとはいえないのだが、絶対数が少ないこともあって結構な高値らしい。それでも売りに出されるとあっという間に完売してしまうそうだが。
俺たちなら金額は問題は無いのだが、如何せんどのタイミングで売りに出されるかわからないからな。まさかマーケットに張り付いているわけにもいかないし、購入は厳しいだろう。やはり自力で見つけるしかないようだ。
もっとも、俺たちの場合は一度入手できればクランファームで栽培できるはずだから、見つけさえすればあとはそれほど労力はかからないはずだ。
さらに栽培した薬草を売りに出せば大儲け・・・クックック。・・・既に大金があるだろうって? 金なんていつかはなくなるもんだよ?
「ついでにクラン同士の連携についても聞いてきたが・・・どうやらすぐに、とはいかないようだ」
クラン間の連絡、調整役をラングに押し付け・・・もとい、委託したのだがあまり順調では無い模様。
「ええー!? 明日ぐらいに【ヤマタノオロチ】に挑むんじゃないんすか!?」
どうやらそのことが不満な様子のアシュラ。血気盛んなのは大変結構なのだが皆それぞれ都合っていうものがあるのだよ、アシュラ。というか昨日99人抜きするまで戦ったっていうのにまだ暴れ足りないのか。
「やはりこれもトーナメント効果なんだろうな。【インフォガルド】や【アイゼンガルド】がそうだったように、他の有名クランにも続々とプレイヤーたちが集まってきているそうだ」
昨日、ポロンとミューズが持ってきたPVが一般公開されて大変な反響を得ているらしい。そのPVに出ているのが運営の用意したゲームキャラではなく、普通にゲームをプレイしているプレイヤーだっていうのも話題性抜群なんだそうだ。
多分その影響もあるんだろう・・・PVに出ていた強豪プレイヤーの所属するクランに入りたがるプレイヤーが続出しているんだと。まあ、ある意味で強くなる一番の近道だから、それも無理は無い。
それにアバターとはいえ強くなって活躍すればゲーム・リアル問わず有名になれるからな。・・・現に俺の、アルクの名前とか顔写真とかを到るところで見るようになってしまった・・・当然見なかったことにしているが・・・まあ、そんな感じで有名になりたいプレイヤーとかも多いのだろう。
「つまり、そういう人たちが押しかけてきているのでミーシャちゃんたちも忙しくなってるってことなのです?」
「そういうこと」
うちのクランと違って他のクランはメンバー募集をしているところばかりなので、加入してくれるプレイヤーはウェルカム! と言わんばかりに受け入れているそうだ。問題なのはその数が多すぎる上に日々増えていってることだ。しばらくすれば落ち着くのだろうが、今はとても他のことに手が回らないらしい。
「・・・それはもしや【アークガルド】に加入できなかったプレイヤーが他のクランに流れていった、というのもあるのだ?」
「・・・」
・・・ラング曰く、クランの中では【アークガルド】が一番人気らしい。優勝した俺が所属しているのは勿論のこと、アテナやアルマもベスト16まで残っていたし、アシュラだって実力者なのは明白。その人気と実力にあやかろうって奴も大勢いるそうだ。・・・残念ながらうちは少数精鋭クランなので受け入れはしていないが・
次いで、準優勝のカオスのクラン【カタストロフィ】が二番人気。ただし【カタストロフィ】は元々カオス一人のクランな上、カオス自身とも連絡手段がない。ぶっちゃけ【インフォガルド】に【カタストロフィ】のことを聞きにくるプレイヤーも大勢いるとか。勿論、何も知らないのでUターンでお帰りしてもらってるらしいが。
まあ、そんなわけで【アークガルド】、【カタストロフィ】に加入できなかったプレイヤーが他のクランに流れていくのは当然の流れだ。・・・流れだけに。しかし、これ・・・見方によっては【アークガルド】が余所のクランにプレイヤーを押し付けた、ととれなくもないんだよな。
「と、とにかくクラン合同でのクエスト挑戦はしばらくお預けってことだな」
少なくとも1、2週間は身動きは取れないだろうとのこと。まあ、こちらとしても無理強いは出来ないから素直に諦めてくれ、アシュラ。
「残念っす・・・」
アシュラは残念そうだが・・・これって、案外俺たちにとっても由々しき事態なんだよな。
「落胆している暇はないぞ、アシュラ。人が増えるっていうことはクランとしての力が増すってことだ。いざクラン合同でクエストを受ける時に、クランとしての力の差が開いていると・・・」
「僕たち【アークガルド】の方がお荷物になるってことですね?」
アスターの言葉に神妙に頷く俺。
数もまた力である。クエストにもよるだろうが、個人の力では俺たちの方が強くても数が揃えば力関係が逆転する可能性は大いにありうる。そうなれば発起人とはいえ、それって寄生行為なんじゃないの? なんて言われかねないのだ。
「なるほど・・・それは確かに屈辱ね」
「というか普通に嫌ですね」
アテナとアルマも深刻な顔をして事態を憂いでいる。・・・いい加減、離れてくれない?
「つまり・・・もっと強くならなきゃ駄目ってことっすよね!!」
「その通りだ、アシュラ」
若干、単純だなぁと思わなくも無いが言っていることは間違いではない。むしろ、間が空いたことは俺たちにとってもチャンスでもあるってことだ。
「それでアルクよ・・・今後の方針はどうするのだ?」
「え? 今までどおり自由にやって良いぞ?」
がっくりとうな垂れるメンバーたち。
「【アークガルド】の基本方針なのはわかっていますが・・・それで良いのです?」
HAHAHA! なにを今更!!
「その方針でトーナメントを優勝した男が目の前にいるだろ?」
「「「「「「すごい説得力!!」」」」」」
実際、俺たちにはそれぞれやりたいことと、やるべきことがあるからな。各世界の攻略とか新しい素材の入手だとかレベリングだとか神様からの試練とかな。
ここはゲームの世界なんだ。自分のやりたいようにやって強くなるのが一番だ。
俺もまだ行きたい所があるし、【勇者】クラスの検証もしたいからな。
「というわえで各自解散! それぞれの目標に向かって頑張ろう!!」
こうして俺たちは再び、それぞれの道を歩みだしたのであった。
・・・解散って言ってるだろ!? いい加減離してくれ、アテナ! アルマ!!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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