冒険の必需品
「ハッハッハー! どんどん行くぜ、オラァ!!」
・・・元気だなぁ、アスターは。
あの後、さっそく【農業ギルド】へ行って畑を拡張、その畑をアスターが【グランディストラクター】を使って試運転がてら耕している。・・・それにしても、アスターよ。その性格豹変、トラクターに乗っても起こっちゃうんだな。
「おー、どんどん耕されていくなぁ・・・」
「うむ。どうやら【グランディストラクター】は上手く動作しているようなのだ」
この調子なら畑が使えるようになるのはあっという間だろう。
あとは【生命の精霊】であるミコトに種を創造してもらい、植えた後に成長促進のスキルをかけてもらえば、とりあえず完了だ。あとは水撒きをしながら収穫を待つのみとなる。
・・・さすがにこの規模を一辺に、となるとさすがのミコトでも厳しいかもしれないが、まあ無理をしない範囲でやってもらえれば良いか。
「いやー、良いですね! これ!! 収穫量も一気に増えそうですよ!!」
元の性格に戻ったアスターが興奮気味に戻ってくる。このギャップはもう俺たち【アークガルド】メンバーはなれてしまったので誰も突っ込まない。
「そうか。なら以前から頼んでいたが【ポーション】素材を優先して栽培を頼む」
トーナメントは回復アイテム禁止のルールがあったためまったく出番はなかったが、冒険に出るとなると【ポーション】は必須アイテムだ。
特にアスターの畑から取れる【体力草】、【気力草】、【魔力草】、【霊力草】は効果の高い各【ポーション】の原料となる。
これまでも相当お世話になったし、今後は更に重要になってくるだろう。
それに数が用意できれば他のプレイヤーに売ったり、クエスト時に他のクランに提供したりできるはず。俺たちにとっても助けになり、利益にもなる。
「頼むぜ、アスター。冒険には【ポーション】が必要不可欠だからな」
「ええ、わかっています・・・ああ、そういえば新種の【ポーション】の話、聞いてますか?」
「新種の【ポーション】?」
なにそれ? そんな情報いつの間に? ・・・ああ、もしかして昨日の宴会で聞いたのかな?
「【ブーストポーション】と【レジストポーション】だそうです。一例で言うと・・・【火炎草】という薬草から、火属性効果を強化する【ファイアブーストポーション】と火属性の耐性を強める【ファイアレジストポーション】が作れるそうです。勿論、時間制限付きですが。他にも【水流草】、【氷結草】なんていう物もあるそうです」
ほうほう、要は【魔法】を始めとした属性攻撃の強化アイテムと対属性攻撃用の対策アイテムと言った所か。
どれほどの効果があるかわからないが確かに重要そうだ。それを使えば装備やスキルに無い属性の攻撃が出来たり、属性攻撃ができるってことだよな? 弱点を補うという意味でも有用だろう。
「わかった。その【火炎草】とやらを始めとした素材を見つけてきて欲しいってことだな?」
「ええ。一度手に入りさえすればミコトの能力で種が作りだせるはずなので・・・」
・・・今更だが、ミコトの力ってすごいな。直接的な戦闘でなくとも、こうして俺たちをサポートしてくれてるわけだからな。縁の下の力持ち、【アークガルド】の生命線と言っても過言では無いかもしれない。
なお、当の本人であるミコトは【レギオンガルド島】で猫をモフモフしていらっしゃいます・・・主であるアスターをほっぽって。恐るべし、猫の魅力。
「・・・【ポーション】素材もわかるのだ。でも今までどおり、果物や野菜の栽培も頼むのだ」
アヴァンの目線の先・・・そこには青々とおおいしげるリンゴやミカン、イチゴの数々が。
「ああ、それは当然だな」
俺もアヴァンの意見に完全に同意である。今更、この畑で取れる【精霊界】産の作物がなくなることなど考えられない。それこそ冒険をほっぽって畑仕事に精を出しちゃうくらい。
・・・軽く中毒のようになっている気がするが気のせいだ。モチベーションを高く維持するには【精霊界】産の作物はなくてはならない食材なのだ!!
「フフフ、わかってますよ。食材のほうも次々と新しい物が発見されているそうですし、これだけの広さがあれば十分な量を収穫できますよ」
おお! さすがアスター。その辺りの情報も抜かりなく収集していたか。
「頼むぞアスター! 俺たちの・・・【アークガルド】の未来はお前の手にかかっている!!」
「そんな大げさな話でしたっけ?」
・・・案外、大げさでもないかもしれないんだなぁ・・・【精霊界】産の作物がなくなったら【アークガルド】内で暴動が起こるかもしれん。それぐらいインパクトのある食材だからな。
実際、マーケットなどで確認する限り【精霊界】産の作物は高騰しているようだ。どうもトーナメントの出店などで【精霊界】産の作物の美味しさを知ったプレイヤーが購入に走っているとのこと。
ある意味当然の行動ではあるのだが、そのため、元から数が出回っていない事もあって値段が高騰している、と。
・・・今、俺たちで【精霊界】産の作物を売り出せば大もうけできるかもな。【レギオンガルド島】に無人販売所でも置いてみるか?
まあ、それはこの畑の収穫量次第だな。最優先なのは俺たちの分だし(笑)。
「さて、それじゃあ俺はさっそくラングの所に情報を買いに行くが・・・お前達はどうする?」
「僕はもう少しこのトラクターを試してみますよ。今ある分の種も植えておきたいですし、収穫できる物も試しておきたいですしね」
「ならば我も残ってトラクターの調子を見るのだ。何かあればその場で調整するのだ」
・・・なんとも頼もしい二人だ。あっちで犬猫たちに夢中な女性陣たちに見習って欲しい。
「わかった。じゃあ、また後でな」
===移動===>【レギオンガルド島】
こうして俺は一人、【レギオンガルド島】まで戻って来たわけなのだが・・・
「ウフフ、かわいい・・・」
「こら、そんな所を舐めてはいけませんよ?」
「癒されるのです~」
「ホントっすねぇ」
・・・うちの女性陣はまだ正気に戻っていなかった。【インフォガルド】、【アイゼンガルド】のメンバーもいまだ虜になったままのようだ。
「クルッ!」
「だう!」
お、アーテル、アウル。レオーネたちも・・・お前達は正気に戻ったんだな。それは良かったんだが・・・問題はアテナたちだな。
正直、ほっといても良いような気がするが、もうすぐ一般開放の時間だ。そして彼女達がいるのは各クランホームのまん前、道のど真ん中なのである。・・・端的に言って邪魔なのだ。
・・・クックック、ここは俺が体を張って何とかするしかないようだ。
まずはアーテルたちを【精霊界】のクランファームへ避難・・・もとい、アスターたちのお手伝いに行くよう指示する。
【眷属】たちがいなくなった所で行動開始だ。
ここで取り出したるはとあるアイテム。掌にころころ転がるビー玉程度の小さな玉だ。
これは【香煙玉】。使用すると煙幕が発生し、さらにとあるにおいを撒き散らすアイテムである。
では、さっそく・・・の前に【エナジーフェザーマント】を使用して空へと避難。
そして【香煙玉】を・・・投下!!
【香煙玉】がアテナたちの近くの地面へと落ちると同時に、ボンッ! と破裂。アテナたちは煙に包まれた。と、同時に・・・
「「「「ふぎゃああああ!?」」」」
「「「「くっさ~~~~!?」」」」
・・・うむ、効果は抜群のようだ。
ちなみにこの【香煙玉】・・・正確には【香煙玉・激臭】だが、材料に【フシューラフレシア】と【バッドノーズスカンク】というモンスターの素材を使っていたりする。どちらのモンスターも(におい的な意味で)強敵で、(におい的な意味で)近寄る事すら難しく、その素材も(誰も欲しがらないので)大変貴重なのだ。
・・・なぜ、そんな素材を俺が持ってるかって? ・・・フッ、人間誰しも好奇心は抑えきれないものなのさ。・・・おかげでひどい目にあったが。
なお、この【香煙玉・激臭】・・・くさい以外に特に効果は無い。
ダメージも状態異常も何も起こらないのだが、そのせいかフレンドリーファイア無効とか一切関係なく誰にでもくっさーいにおいが襲い掛かってくる。無論、使用者の俺にもだ。だから上空へ避難したのだ。
なお、におい自体は数秒で発散し、後も残らないので少しの間息を止めていればたやすく防止できる。トーナメントで使わなかったのもそれが理由だ。・・・まあ、どうみてもネタアイテムだからっていうのもあるが。
とにかく、これでアテナたちも正気に戻っただろう。
良かった良かった。
・・・この後、正気に戻ったアテナたちに見つかり、ドナドナされたことは言うまでもないだろう。
orz
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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