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偶然か必然か

「・・・普通に使えたな」


俺が記憶を取り戻したとき、頭の中に流れてきたメッセージ・・・【固有(オリジナル)能力(アビリティ):天醒者】の効果で発動した【天醒:浄化(ピュリフィケイション)】とやらのおかげで記憶の封印が解かれたことはわかっていた。


ただの【浄化(ピュリフィケイション)】ではなく【天醒:浄化(ピュリフィケイション)】が発動した辺り、アニスの【封印】も普通では無いということなんだろう。


ただし、なぜか俺のステータスのスキル欄の中には【浄化(ピュリフィケイション)】はあっても【天醒:浄化(ピュリフィケイション)】というものは存在しなかった。


なので俺の意思で発動できるのかどうかは不明だったのだが・・・問題ないようだ。・・・本当に問題ないか? 録画を見る限り、アーテルたちのスキルを強制発動させる事ができるみたいだし、なんか俺だけゲームシステムから逸脱した力が使えるみたいで、トンデモな事態な気がするが・・・後で検証しておいた方が良いな。


「・・・ちょっと? そこで考え込まないでくれるかい?」


「そうじゃ、いきなり何をするんじゃい」


俺が思案していると、実験台・・・いや、被験者・・・いや、相談に乗ってくれていたラングとガットから話しかけられた。二人を包み込んでいた光はすぐに収束し、消えた。見たところ異常は無いようだ。


「・・・ふむ、どうやら二人は本物のようだな」


「なにを言っておるんじゃ、お主は?」


ガットは怪訝な顔をしていたが、ラングは得心が言ったような表情をしていた。


「・・・ああ、なるほど。たしか録画の中であの偽ジェスターは変装して君の前に現れていたとか言っていたね。となると僕たちに変装して君の前に現れても不思議じゃないってことかい?」


「なんと・・・」


そう、不意打ち気味に【天醒:浄化(ピュリフィケイション)】を使ったのは、万が一にもジェスター(偽)が化けていないとも限らないからだ。・・・まあ、これは理由の半分だが。


「それも理由の一つだが、理由なら他にもある・・・二人とも、なんか思い出したりとかしていないか?」


「「???」」


・・・二人ともとぼけた顔してやがる。何のことか分からないって顔だな。


「・・・さっきラングも言ったな? アニスたちの襲撃はなにかのイベントみたいだったと。同じようにイベントみたいなだなぁと思ったことがあったの覚えてないか?」


このゲームを始めた頃、かなりテンプレなイベントだなぁと思ったことを覚えている。


「アテナくんとアルマくんと初めて出会ったときだね? ジェスターくんたちにナンパされていたのを君が助けに入ったんだったけど・・・確かに今にして思えばイベントっぽいし、もっと言えばわざとらしい感じがしないでもないね。ことここに来て当時からジェスターくんが偽者だったというのなら・・・作為的なものまで感じるね」


「なんじゃと・・・あの時の出来事まで何者かの陰謀じゃったというのか?」


本当に今にして思えば、だが・・・ジェスター(偽)やアニスたちのことを考えればそう疑ってしまうのも無理は無いことだと思う。


・・・ただし・・・だ。


「仮にあの時のことが罠だったとしても・・・罠に引っかからなきゃ意味がないだろ?」


「・・・ああ、そういうことか」


「・・・? どういうことじゃ?」


俺の言いたいことを察したラングと、まだ分かっていない様子のガット。


「・・・あの時、アテナたちを助けるように言ったのは・・・ラング。お前だったよな」


「・・・」


「!?」


ガットが驚愕の表情で俺とラングの顔を見比べている。


「今にして思えば、チンピラに絡まれている女性二人を自分で助けず俺に助けさせたのも不自然だったし、警戒心の強いお前が得体の知れないプレイヤーたちとクランを組むことに反対しなかったのも妙といえば妙だ」


「・・・」


「そういえばお前、俺がジェスターたちとPvPをしている間にいなくなっていたな。どこに行ってたんだ?」


「・・・」


・・・奇妙な沈黙が周囲を包み込む。その沈黙を破ったのは・・・ラングだった。


「・・・ふぅー・・・なるほど。確かに僕にも疑わしい点があるようだね。・・・でもアルク、本気で僕を疑っているのかい?」


「いや、全然」


俺は即答で答えた。ガクッとガットがずっこける。


「どうしたんだ? ガット」


「どうしたじゃないわい! なんじゃったんじゃ! 今の緊迫したやり取りは!!」


・・・やだなぁガットさん。ちょっと思った疑問を並べてみただけですよ。


「確かに思い返してみれば怪しいなぁと思う点はあるってだけで・・・ほとんど言いがかりレベルだろ? 多少、疑いはしても・・・なぁ?」


「まあ、そうだねぇ。ちなみにあの時は本当に面白そうだと思ってたきつけただけで他意は無いよ」


と、言う事らしい。少なくともラングまで実は連中の仲間だった、というオチはなさそうだ。・・・まあ、口ではなんとでも言えるかもしれんが。


「お主らなぁ・・・ふぅ、ならばさっきのアルクがワシらにかけた()()はなんじゃい」


ああ、俺が二人に【天醒:浄化(ピュリフィケイション)】をかけたもう一つの理由か。


「例えば、既にアニスがラングに接触していて俺をあの場に誘導するよう仕組ませた上で記憶を封印した、なんてこともあるかと思ってな。ジェスターが知らず知らずのうちに接触してきたのならアニスだってそうだった可能性も捨てきれない。記憶を封印すれば証拠隠滅も簡単だしな」


だからこそ、俺の身近にいた二人の記憶が封印されていないかどうか確認したかったというわけだ。


「残念ながら、そんな記憶は無いなぁ・・・仮にあったとしてもアルク? この僕がそんな得体の知れないプレイヤーの頼みを聞くとでも?」


ラングは心外だといわんばかりの顔をしているが・・・


「俺に対してなら・・・面白そうだっていう理由でやりかねないな、とは思ってる」


「・・・否定できないね」


出来ないのかよ。


まあ、しかしそうなるとあの時の出来事はまったくの偶然ということになる。


となると何故、ジェスター(偽)はジェスターの変装なんてしていたのか?


ジェスター(偽)はアテナたちを勧誘してどうしようとしていたのか?


そして何故、ゲーム初心者の俺にPvPで負け、その後、今の今まで手を出してこなかったのか?


そもそも当時、アニスとアギラはどこにいたんだ?


疑問ばっかりだ。


疑問といえばアテナたちはあの時、何故あんな強引に俺とクランを作ろうとしたのかも気になるな。あの時は本人たちの言うとおり、うっとおしい勧誘避けの為だと納得したが、今にして思えば・・・


うーん、ますますアテナたちが怪しく思えてくるな。後で本人たちにそれとなく確認してみるか。


そうそう、怪しいといえば・・・


「ラング、【ハーヴェスト】ってクラン、知ってるか?」


「ああ、確か強引な勧誘ばかりしていて、通報された挙句解散させられたクランだね。・・・そう言えば、アニスって子も自分のことを【収穫者(ハーヴェスト)】って言っていたね」


そうそう、偶然かもしれんが【ハーヴェスト】って単語が出てきて気になってたんだ。


「ジェスターもその【ハーヴェスト】の一員だったんじゃないのか? あと【ハーヴェスト】っていつ解散したんだ?」


思えばその名前だけは何度か聞いたことはあったが詳しく調べたことは無かった。そもそも既に解散していて終わった事だと思っていたからな。


「お察しの通り、ジェスターくんは【ハーヴェスト】のメンバーだったよ。そして【ハーヴェスト】が解散したのは・・・君がジェスターくんたちと揉めた翌日だよ。僕はてっきりジェスターくんがアテナくんたちに絡んでいるのを見られて通報されたのが原因だったと思っていたんだけど・・・」


・・・偶然の一致・・・とは思えないな。


それにアーニャ、アヴァン、アスターたちも【ハーヴェスト】の被害を受けてたっぽいし・・・これも偶然なのか?


「・・・ラング。【ハーヴェスト】ってクランの情報を集めてもらえるか?」


「了解だよ。もしかしたら偽ジェスターくんの正体が分かるかもしれないしね」


・・・とはいえ、もう既に存在しないクランだから大した情報は集まらないとは思うが・・・今は少しでも情報が欲しい所だ。


「それはそれとして、アルク。そろそろ本題に入ってほしいね」


「本題だと?」


何言ってんだ? 今話してるのがまさに本題じゃないのか?


「君が意識して話題を逸らそうとしているのかは知らないけど・・・僕が気になってるのは1点だけだよ。・・・アテナくんとアルマくんをどうするつもりだい?」


作者のやる気とテンションを上げる為に


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