影がもたらす災厄
この男は、俺がゲーム開始2日目にトラブった、いわゆる悪質プレイヤーだった。
コイツを含めたガラの悪い三人組がアテナとアルマにちょっかいかけていた所を俺とラング、ガットが通りかかり、ラングの野郎にけしかけられて・・・じゃなかった。通行の邪魔だったからどかそうとしたんだった。
そこでゴショゴショあった結果、三人組とPvPをすることになってコテンパンにしてやったのだった。
さらにその後でアテナとアルマとゴニョゴニョあった結果、クラン【アークガルド】が誕生したんだった。
ある意味において【アークガルド】ができるきっかけとなったのがこの男と言っても良いかもしれない。無論、感謝の欠片も存在していないが。
なにせこの男、聞いた話では中堅プレイヤーだったにも関わらず、問題ばかり起こして大手クランから追い出されたという曰くつきだったからだ。
そういえばコイツラはPvPが終わった後、いつの間にかいなくなっていた。とっくの昔に誰かに通報されて、垢バンされて消えたと思っていたのに・・・
「なぜ、お前がここにいる!?」
「ヒャハハハハ! 決まってんだろ? ア・ル・バ・イ・ト・だ・よ!!」
・・・何言ってんだ、コイツ? 第一、キャラ変わりすぎじゃないか? 以前会ったときはなんちゃって不良キャラではあったがそれなりに話が通じていたのに・・・今は完全なイカレキャラじゃないか。
・・・ふぅー・・・落ち着け、俺。もはや怒りに任せてどうにかなる状況ではなくなった。ここで冷静さを欠いたら取り返しのつかない状況になる気がする。
「・・・アルバイトってことは雇われてるってことか? アニスたちにか?」
正直、まともに会話も通じなさそうな気がするが・・・今の俺は文字通り、手も足も動かない。少しでも良いから時間稼ぎと情報が欲しい。
「ヒャハハハハ! 惜っしー!! 俺っちを雇ったのはもっと上の奴だよ。その二人のお嬢さんたちのエスコートを頼まれたってわ・け・さ!!」
・・・もっと上の奴だと? 他に黒幕がいるってことか? そいつがアニスたちをここに寄越したってことか?・・・一体何の為に・・・
「・・・やれやれ、余計な事を喋っていないで自分の仕事をして欲しいですわね?」
ふざけ通しのジェスターを軽蔑したような目で見るアニス。なんなんだコイツら・・・仲間なんじゃないのか? 少なくとも仲が良いように思えないな。
「・・・あーん? なーに俺っちに命令してんのよ? 別に俺っちにはアンタらの言う事を聞く義理はな・い・よ・なぁ!!」
「・・・」
人の頭上でにらみ合うアニスとジェスター。・・・ケンカするのならどっか余所に行ってやって欲しい。
「・・・まぁ? これもお仕事だから? きっちりやんないとい・け・な・い・よ・なぁ!!」
ガシッ!!
「ぐあっ!?」
・・・クッ、ジェスターの野郎、俺の後頭部を乱暴に鷲づかみして俺の体を持ち上げやがった!!
大の大人一人分を片手で持ち上げるとはなんてパワーだ。・・・しかも鎖の伸びるギリギリの範囲まで引っ張りやがって! 手足が引っ張られて痛いんだよ!!
「グッ!? ・・・前に会ったときとは随分とキャラが違うじゃないか、ジェスター」
どうも以前会った時のジェスターとは違いすぎる。この短期間で変わったにしてはまるで別人のようだ。
「ヒャハハハ! あん時はジェスターになりきってたからあんなキャラだっただ・け・さ! ほーんと、品の無いキャラを演じんのはつ・か・れ・る・ぜ!!」
・・・は? 何言ってるんだ、コイツ? 俺は掴まれている頭を無理矢理動かしてジェスターの顔を見る。雰囲気も服装も異なるが、その顔は確かに俺がコテンパンにしたジェスターそのものだ。だが、今の口ぶりでは・・・
「ヒャハハハハ! わけ分かんなーいって顔してんな? こーゆーこ・と・さ!!」
そういうとジェスターは自分の口元に空いているほうの手をもっていき・・・
ベリベリベリベリベリッ!!
自分の口周辺の皮を剥いだ。
「!!??」
・・・剥いだ皮の下から別人の肌と口元が見える。ということはつまり・・・
「・・・変装・・・だと?」
「ヒャハハハハ! そーゆーこと! 本物のジェスターはお前さんと会うずーっと前に、とっくに垢バンされていなくなってるっての! 俺っちはその顔を借りてるだ・け・さ!!」
・・・本物のジェスターじゃないだと? 前回会った時点から変装していた別のプレイヤー? 一体、何の為に!?
「こー見えて俺っち、変装が大!大!大!得意でねぇ!! ぶっちゃけ変装して何度かアンタたちの前にあ・ら・わ・れ・て・た・よーん!!」
「!?」
なん・・・だと? 変装したコイツに今まで会っていた? いつだ? 誰に・・・いや、待て。じゃあコイツ・・・いやコイツラは以前から俺たちの様子を伺って・・・いや、監視していたのか!!
「さあさあ3号ちゃん、やるならい・ま・の・う・ち・だ・よ?」
「・・・誰が3号ですか。私の名前はアニスです・・・アギラ」
「・・・」
アニスが苛立った様子でアギラを呼んだ。
アギラは・・・いつの間にか箱を持っていた。
両手で持てるサイズの鉄の箱。
厳重にロックされている事が分かる頑丈そうな箱。
その箱の蓋を開け、アニスがその中から何かを取り出した。
・・・それは赤く光る球体。
・・・それは黒いオーラを放つ不気味な物体。
つまり、それは・・・
「【ガティアス】か!?」
「フフフ、その通りです。正確には【ガティアス】の核、ですが・・・これの力は先日、貴方も見たでしょう?」
なんでそんな物をコイツラが持っているんだ!? いや、そもそも【ガティアス】ってそんな持ち運べるような物だったのか!?
しかも、そんな物をこの場面で出すってことは・・・
「・・・【ガティアス】を・・・俺に取り憑かせるつもりか!?」
「フフフ、その通りですわ。そうなれば貴方は・・・私たちの操り人形も同然」
・・・もうわけが分からない。
「一体、お前達は何者なんだ!?」
「・・・私たちが何者か、ですか・・・」
クスクスとは妖艶に笑うアニス。
しかし、その目は・・・まるで笑っていない。どんな感情を抱いているのかは分からないが・・・底冷えするような冷たい目をしていることだけは分かる。
「あの方から与えられた私たちの役目・・・それは力ある者たちを刈り取ること・・・そう、私たちは・・・」
そう言ったアニスは・・・手に持った【ガティアス】を俺の胸に押し付けた!
「【収穫者】、ですわ」
「・・・がっ!?」
【ガティアス】が・・・俺の体の中に・・・
・・・な、なんなんだ? これ・・・い、いし・・・き・・・が・・・
・・・
・・
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