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動き出す影

===ログイン===>【アークガルド】クランホーム


おはようこんにちこんばんは。


・・・この挨拶、ものすごーーーく久しぶりな気がするな。


きっと昨日までの三日間・・・バトルトーナメントが濃すぎたせいだな。


そう!昨日は!バトルトーナメントで! まさかの! この俺が! 優勝した!記念すべき日となったのだ!!


ハーハッハッハッハ!!


・・・一人で高笑いしててもなんかむなしいな。


そう、昨日まで行われていたバトルトーナメントで俺は優勝した。アテナとアルマもベスト16まで残った。アシュラは惜しくもベスト16までには残らなかったが実力をしっかり示した。


そのためか俺たち【アークガルド】の名前が一気に有名になった・・・らしい。


まあ実際の所、昨日の今日であんまり実感が湧かないのだが、ラングの所の情報クラン【インフォガルド】には多くのプレイヤーたちがひっきりなしに訪れているらしい。


俺たち【アークガルド】の情報を聞きにくる奴がほとんどだろうだが、それと同じくらいクランに入れてくれ、という奴が続出しているそうだ。


情報はともかくとして、なんで【アークガルド】へのクラン加入の話を【インフォガルド】へ持っていくのかというと、基本的に【アークガルド】は少数精鋭のローカルな集まりであり、メンバー募集なども行っていないので接点が無い・・・つまり、まったく無関係のプレイヤーには連絡の取り様が無いのだ。クランホームもメンバーと招待者以外はシャットアウト設定にしているので直接尋ねることも出来ない。


なので同盟クランとして繋がりのある【インフォガルド】へとプレイヤーたちが押し寄せている、という状態になっているらしい。【インフォガルド】からすればいい迷惑かもしれないが、同盟クランの事を吹聴していたのはラングなので文句はラングに言って欲しい。


まあ、ラングのことだ・・・自分の所に来たプレイヤーを言葉巧みに誘導して情報を売りつけたり、自分たちのクランに取り込んだりしているだろう。


一方で、もう一つの同盟クラン【アイゼンガルド】にもひっきりなしにプレイヤーが訪れているらしい。こっちは俺たち【アークガルド】の武器・防具・アクセサリーなどを一手に引き受けているクランとして有名になってしまい、同レベルの装備を求めるプレイヤーが後を絶たないとか。


・・・という連絡をガット・・・ではなくヴィオレから来る時点で【アイゼンガルド】の職人連中の忙しさを推して知るべし、と言った所だろう。・・・ガットの奴はまたしばらく引きこもりかもな。・・・ヴィオレの苦労が目に浮かぶようだ。


とにかく、昨日の今日だっていうのに二人のクランは既に大変なことになっているそうだ。・・・皆、行動が早いねぇ・・・既にこの調子じゃあ日を追うごとにどんどん忙しくなっていくんだろうなぁ。まあ、二人にとっては嬉しい悲鳴って奴だろう・・・せいぜい頑張ってほしい。


対して俺の方はというと・・・静かなもんだ。せいぜいフレンド交換した連中から優勝おめでとうメールが来たくらい。それも数少ないから返信も直ぐに終わった。


・・・こら、そこ。友達少ないとか言うんじゃない。俺はソロや少人数プレイで満足しているから積極的にフレンド交換しに行かないだけだ。それにラーサーやミーシャたちトーナメントで知り合った連中とはフレンド交換したから数は増えたし、決して友達が少ないとかでは・・・いや、やめよう・・・なんかむなしい。


ま、まあ、そんなわけで俺の方は平和だ。他の【アークガルド】のメンバーからも特にトラブルなどの連絡は来てないから大丈夫だろう。


・・・今の所は、だが。


他のプレイヤーたちがいるエリアに行ったときはどうなるかはまだ分からないな。トーナメントで俺たちの名前や顔、所属クランも大々的にさらされてしまったわけだし、姿を見つけたら話しかけてくるプレイヤーとかもいるかもな。


さすがに強引にクラン加入とかを迫ってくる奴とかはいない・・・とも限らないか。強引にナンパされてた奴らもいたくらいだしな。


リアルだったら外出を控えるような事態かもしれないが、ここはゲームの中なので特に気にはしない。万が一やらかしそうな奴が来ても通報すれば良いだけだし、なんだったら俺自らPvPで叩きのめしてやっても良い。トーナメントで自分の実力がどの程度のものかは把握できたし、マナー違反者にトーナメント上位陣以上の実力者もいないだろうしな・・・もっともそれはそれで忙しくなりそうだから積極的にやるつもりは無いが。


・・・まあ、今日はどこかに行くつもりは無い。


今日は優勝賞品の確認と分配を考えるつもりだ。


賞金の百億Gは・・・どう考えても俺一人で使いきれるような金額じゃない。というか使い道がまったく思いつかないんだよなぁ・・・このゲーム中で一番高い買い物ってなんだろ? ホームオブジェクト? 装備? アイテム? ・・・高いと思った買い物はいくつもあるが、さすがに何億もあるような品物は見たことが無い。


とりあえず使い道も思いつかないので、俺一人では独占せずにクラン内で共有するつもりだ。俺たちのクラン内だと、お金がかかるのはアヴァンの【兵器】開発とかアーニャの【料理】器具とかアスター【農業】道具とかなので、無駄使いするよりそっちに使ったほうが良いだろう。俺にもリターンがあるしな・・・もっとも、いくら無駄使いしても有り余るくらいの金額だとは思うが。


あとは賞品の【獲得券チケット】か・・・俺がもらった優勝賞品の【獲得券チケット】の内訳はこんな感じになっている。


【ステータス獲得券(チケット)】×30枚

【スキル獲得券(チケット)】×30枚

【レアアイテム獲得券(チケット)】×15枚

上級(ハイ)クラス獲得券(チケット)】×10枚

特級(スペシャル)クラス獲得券(チケット)】×6枚

【シークレット獲得券(チケット)】×3枚

【トップシークレット獲得券(チケット)】×1枚


・・・大盤振る舞い過ぎると思うのは俺だけだろうか? 俺一人でこれ全部使ったら無敵になれるかもな。


とはいえ、これらも俺一人で全部使うつもりは無い。


そもそも俺が優勝できた理由も、アヴァンが製作してくれた【兵器】による所が大きいし、アスターの畑で採れた収穫物をアーニャが【料理】にして出してくれたことも大きい。三人にも分け前を渡すのが当然というものだ。アテナ、アルマ、アシュラもトーナメント前の模擬戦に付き合って貰ったから分け前を渡しても良いんだが、三人は自前の賞品があるからまずはアヴァンたちが優先だ。


それに・・・俺は結果より過程を楽しむタイプだから【獲得券チケット】を使って簡単にアイテムを入手とかクラスを取得なんていうのは正直、微妙だと思ってしまうのだ。【獲得券チケット】でしか入手できないとかだったら話は別なのだが・・・そうでもない限り、俺は自分で努力して過程を楽しみながら手に入れたいんだよね。


なので【獲得券チケット】で手に入るものを確認した上でみんなと相談、特に強い要望がある人に使ってもらおうと思っている。物によってはアヴァンたち生産職に使ってもらったほうがリターンが大きい場合もあるだろうしな。


・・・とは言ってもうちの連中は皆遠慮するだろうから、実際には俺がこれを使ってあれこれをしてくれ! とお願いする形になるだろうけど。特に一枚しかない【トップシークレット獲得券(チケット)】なんて俺も含めて誰も使いたがらない気がする・・・貴重すぎて。まあ、要相談だな。


・・・それにしてもいやに静かだな。


いつもだったら何時ログインしてるか分からんくらい早く来ているアテナかアルマが出てきたり、アーテルたち【眷属】軍団がはしゃぎまわってたりしてうるさいくらいなんだが・・・今のクランホームは不気味なくらい静まり返っている。


皆、寝てるとか?


・・・ってゲームの中でそれは無いか。アーテルたちの寝てる所なんて見たことも・・・


「・・・! アーテル!? アウル!?」


ホームの中庭・・・俺が勝手に噴水広場と呼んでいる所で・・・アーテルとアウルが倒れていた。他の【眷属】たちも同様だ。


すぐさま駆け寄って確認する俺。


スゥー、スゥー・・・


「・・・寝てる?」


アーテルたちは静かに寝音を立てていた。外傷は・・・特に見あたらない。


まさか本当に寝ているのか? だが今までこんなことはなかったぞ? それにラグマリアとカイザーのロボット組まで寝ているのはおかしいだろ。


とにかく【看破】で状態を確認しようとした時・・・


キィ・・・


背後でホームの入口の扉が開く音がした。


その音に反応した俺はすぐさま立ち上がって振り返る。当然、最大限に警戒して、だが・・・


ジャラジャラジャラジャラ!!!


「なに!?」


()()()()突如として飛び出してきた鎖が・・・俺の四肢を拘束した。


「なんだ、これは!?」


その鎖を引きちぎろうとするが・・・ビクともしない! 俺の腕力を持ってしても!!


「・・・いかに貴方といえどその鎖は外せませんよ」


四苦八苦していると正面のホームの扉の中から声が聞こえた。


・・・この・・・声は?


その声の主はゆっくりと家の中から出てきて、その姿をあらわにする。


「・・・!?」


そいつの姿を見て・・・俺は言葉が出てこなかった。


「初めまして。(わたくし)の名はアニス・・・【封印の精霊】です」


髪と瞳の色こそ違うが・・・この声、そしてあの顔・・・


「それとも貴方にはこう言った方が分かりやすいでしょうか?」


同じだ・・・


()()()、と」


アテナとアルマと・・・同じだ。


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