エキシビジョンバトル
『皆さん、どうしました?・・・ぬぉおおおおお!?』
さすがにおかしいと感じたのだろう、室長さんが振り返ったと同時に・・・飛んで来た【ガティアス】が室長さんに直撃した。
「おいおい、どうなってんだ?」
室長さんの体が黒い煙に覆われていき、赤い玉・・・核が室長さんの体の中にめり込むように入っていく。
『ぬぅあああああ!?』
苦しそうな声を上げる室長さん。おいおいこれって・・・
『し、室長ーーー!!』
『大変です~! 室長さんが~【ガティアス】に取り憑かれてしまいました~!!』
ポロンとミューズが騒ぎ出した・・・が、焦っている割に二人とも助けようとする気配が無いな。
『ま、まずいです! 室長が暴れだしたら・・・この辺り一帯が火の海になりかねません!!』
え、どういうこと? 室長ってそんなに強いの?
『困りましたね~! 一体どうしたら良いのでしょう~?』
困ったという割りにセリフが棒読みな気がするのは気のせいだろうか?
『大丈夫だよ、ミューズ! なんたって僕たちには・・・一騎当千のプレイヤーの皆さんがいるんだから!!』
・・・なんでそこで俺たちの方を見る?
『・・・はい。と言うわけで緊急イベントの発生です!!』
「「「「「ふざけんな!?」」」」」
なんなの? この茶番。
あ、アナウンスが来た。
【緊急レイドクエスト 運営室室長( ガティアス )をぶっ飛ばせ!!】
勝利条件:運営室室長( ガティアス )の撃破
参加制限:トーナメント会場にいるプレイヤーのみ
制限時間:60分
備考:このクエストにおけるペナルティは発生しません
【緊急レイドクエスト】・・・しかも室長さんをぶっ飛ばせって、会場にいるプレイヤー全員で室長さんをタコ殴りにしろってことか?
「お、おい見ろ・・・」
「室長が・・・」
誰かのつぶやきを聞いて室長を見ると・・・巨大化してる? ・・・あ、そういえば初日に登場したときも巨大化してたな。確かにあんな巨人の姿で暴れられたら辺り一帯火の海になるかもな。
『トーナメント会場が~破壊されちゃう前に~サクッとやっちゃってください~』
物騒すぎる。あのミューズって子、室長さんになんか恨みでもあるのか?
なんだって最後の最後にこんな事を・・・他のプレイヤーたちだって困惑気味で誰も動こうとしないし、文句言ってるプレイヤーまでいる・・・と思っていたら、
『会場にいるプレイヤー全員が対象になりますのでトーナメントに参加しなかったプレイヤーも表で出店をやっているプレイヤーの皆さんも参加可能です!! とくに制限は無いのでどんどん参加しちゃってください!!』
『室長さんを倒したら~、会場にいる全員に莫大な経験値が入りますから~、楽してレベルアップするチャンスですよ~!!』
まるでプレイヤーたちの背中を押すような情報を発信するポロンとミューズ。
「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」
途端に歓声を上げるプレイヤーたち。
「よし!やるぞお前ら!!」
「レベルアップのチャンスだ!!」
「溜まった鬱憤をここで晴らしてやる!!」
好き勝手叫びながら巨大室長に向かっていくプレイヤーが続出だ。まったく、さっきまで驚きと非難の声を上げてたのに現金なヤツラだな。
・・・それにしてもアイツら、あの巨大な室長・・・現時点で既に【クランメカロイド】より何倍もでかい相手に生身で向かって行って大丈夫なんだろうか? なんか上手く乗せられている気がするが・・・まあ、そこは自己責任か。
しかし、なるほどな。
いうなればこれは場外乱闘・・・いや、エキシビジョンバトルといった所か。
要するにトーナメントに参加できなかったプレイヤーに向けての救済措置、そしてバトルトーナメント最後の大トリイベントと言った所か。
会場にいるだけで経験値が貰えるんなら、確かに皆参加するだろうが・・・室長さんの苦しみ様とかポロンとミューズの焦り具合は演技だったんだな。
「アルクさん!!」
ん? 声のするほうを見ると・・・【成体】化したブランに乗ってアーニャ、アヴァン、アシュラ、アスターが舞台上にまで降りてきていた。他の【眷属】たちも後に続いている。
「大変な事になったっすね!アニキ!!」
・・・アシュラよ。そんな嬉しそうな顔で大変な事になったって言われても説得力が無いんだが?
「まったく、最後の最後でやってくれるね。ここの運営は」
「うむ。まったくじゃのう」
「なんだ、お前らも来たのか」
見ればラングとガット、それに【インフォガルド】に【アイゼンガルド】の面々も集まってきている。
・・・やっぱり皆、なんだかんだで参加するのね。
『ぐおおおおおおお!!!』
お、室長さんが雄叫びを上げた・・・巨大化が終わったようだ。
・・・でかいな。何十・・・いや、何百メートルはありそうな巨人だ。おまけに【ガティアス】に取り憑かれたせいか、スーツ姿だった室長さんの見た目が変わってしまっている。
シルエットこそ人型だが、全身が黒い煙のような物で隙間無く覆われていて室長さんの姿は見る影もない。胸に埋め込まれている巨大な【ガティアス】の核が不気味に光っている。
【運営室室長( ガティアス ) Lv.??】
???????????????????
【看破】で見てみるが・・・レベルは不明か。しかし俺たちトーナメント上位陣も含めてこの場にいるプレイヤー全員を一度に相手にしようってんだから相当手ごわいと見て間違いないだろうな。
「・・・始まったみたいね」
アテナの言うとおり、血気盛んなプレイヤーたちが既に室長さんの足もとに攻撃を仕掛けている。
「私達はどうしますか? アルクさん?」
どうするかだって? そんなの決まってんだろう、アルマ?
「勿論、参加するに決まってるだろう? トーナメントに参加できなかったカイザーやブランたちが活躍できる絶好の機会だしな」
「了解デス」
「キュイ!!」「キュア!!」「キュウ!!」
「あい!!」
「殲滅シマス」
ルール上、参加できなかったカイザーや、主が参加しなかったブラン、ノワール、テール、ミコト、ラグマリアもやる気だ。
「アーテルたちもトーナメントで疲れているだろうが、頼むぞ」
「クルッ!」「だう!」
「がお!」「ピュイ!」
「まう!」
無論、トーナメントに参加したアーテル、アウル、レオーネ、フィオレ、ルドラも一緒だ。
「分かったのです! 最後の最後で良い所見せてやるのです! ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃん!」
「やれやれ、仕方ないのだ。行くのだ、ラグマリア」
「よぉーっし! ボク達も張り切っていくっすよ! ルドラ! アスター!!」
「はいはい、分かったよ。・・・行こうか、ミコト」
そう言ってアーニャ、アヴァン、アシュラ、アスターとその【眷属】たちも室長さんに向かって駆けていく。ヤル気があって大変よろしい。
「それじゃあ、私達も行ってくるわ。行くわよ、レオーネ!!」
「カイザーくんを宜しくお願いします。行きましょう、フィオレ!」
アテナとアルマもレオーネとフィオレを伴って向かっていく。
残ったのは俺とアーテル、アウル、そしてカイザーだ。
「せっかくの機会だ。制限も無いみたいだし、久しぶりに【クランメカロイド】としてのカイザーの力、使わせてもらうぞ」
「御意ノママニ! マスター!!」
そう言ってカイザーは姿を変えていく。
【クランメカロイド】としての真の姿、アークカイザーに。
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