最後の一撃
【帝釈天の勇撃】は三回攻撃のスキルだ。
一発勝負の【勇天の一撃】より一撃の威力は低いが三回のチャンスがあり、三撃全て当てることができれば倍以上のダメージを与えることができる。
そしてもう一つ、このスキルには利点がある。
それは・・・
「【初撃】!【次撃】!!」
俺は左手の【妖刀オロチ】と右手の【豪剣アディオン】をほぼ同時に振りかぶる。
【帝釈天の勇撃】の利点・・・それは三回の攻撃に同じ武器を使う必要は無い、ということだ。
だから二刀流の場合、同時に攻撃すればそれが3回の内の2回とカウントされる。もし三刀流なんて出来たら三撃同時攻撃なんて事もできるだろう。・・・あいにく今の俺には第三の手なんて無いので無理だが。
それはおいといて・・・これまでのスキル使用でBPを消費していた今の俺の状態でもこれならそれなりの威力を出す事ができるはずだ!
「【白冥豪切斬】」
対するカオスは残ったもう一本の【双神刀ブライ】を横なぎに放ってきた。
刀と大剣を振り降ろす俺に対し、横なぎに大刀を振るうカオス。
カオスの大刀に最初にぶつかったのは・・・【妖刀オロチ】だった。
バキィンッ!!
「!?」
今度は【妖刀オロチ】が・・・砕けた。
カオスの野郎、ここに来てさらにパワーとスピードが増した!? いや、今まで手を抜いてやがったのか!?
俺は怒りに任せて残った【豪剣アディオン】を振りおろす。
・・・だが、俺の【豪剣アディオン】はカオスの体に当てるよりも早く【双神刀ブライ】によって止められた。
ガキィィン!!
くそっ!! 【初撃】のみならず【次撃】まで止められるとは・・・さらに・・・
ピシピシピシッ!!
「!?」
【豪剣アディオン】にヒビが!? ここまでの激戦で酷使しすぎたのか!?
まずい!・・・ここに来て【豪剣アディオン】まで失ったら・・・
そう、絶望しかけたが・・・
ピシピシピシッ!!
「・・・むぅ!?」
なんと【双神刀ブライ】にまでヒビが入った。・・・どうやら度重なる激戦に耐え切れなくなったのは向こうも同じらしい。
ならば!!
「【終撃】!!!」
俺はヒビが入ったままの【豪剣アディオン】を再度振り上げ、最後の一撃を振り降ろす。
「【白冥豪切斬】!!」
カオスもまた、ヒビが入った【双神刀ブライ】を振り降ろしてくる。
ガキィン!!
もう何度目になるか分からない大剣と大刀のぶつかり合い。
だが、今回の結果は・・・
ピシ!ピシピシッ!! バキィィィン!!!
【豪剣アディオン】も【双神刀ブライ】も砕け散ってしまった。
同時に【帝釈天の勇撃】のスキルも終了してしまった。BPが0になったことで【力天の強豪】の効果も切れてしまった。
今はまだ【精霊憑鎧】によるステータスアップと【韋駄天の俊走】による超加速状態を辛うじて維持できているだけの状態だ。
だが・・・
「あああ!!」
俺は最後の力を振り絞ってカオスの奴を殴りつける。
スキルも何も無い、ただのパンチだ。
それをカオスは微動だにせず受け止めた。
「・・・まだあがく、か」
「まだだ!まだ、終わってねぇ!!」
「・・・だが、スキルを使ってこないところを見ると力尽きたのだろう? 今のパンチもさほど効いていない・・・対してこちらは・・・」
カオスは拳を握りしめて・・・
ドゴッ!!
「ガハッッ!?」
カオスの拳が俺の腹にめり込む。
【王鎧アウルドギア】すら砕かれる重い一撃。
・・・分かっているさ。カオスの野郎は今、真の姿とやらのおかげでステータスがバカ高いだけでなく、ユベルなんとかとやらのスキルでパワーもスピードも防御力もアップした状態だ。
「・・・ぐっ・・・」
俺は腹にめり込んだカオスの腕を左手で掴む。
対して俺はBPは0、MPもLPも残りわずか・・・こんな状態じゃあ素手喧嘩にだって持ちこめやしない。
そう・・・分かってるさ。
俺は掴んだカオスの腕を決して放さないように強く握る。
「・・・悪いな・・・俺は一か八かに出ることはあってもやけくそになることはねぇんだよ」
「・・・何を言って・・・!?」
カオスの奴が驚いているのが分かる。
そうだろうな。
俺の右手に大剣が握られているのだから。
無論、これは【豪剣アディオン】ではない。
これは・・・このゲームを始めて最初にガットから貰った武器の一つ・・・そして俺が一番最初に使った武器。
【豪剣アディオン】とは比べ物にならないほど性能が低いが・・・今までずっと持っていた武器。
【鉄の大剣】だ。
「・・・今更そんな物でどうするつもりだ」
そう、カオス相手に今更【鉄の大剣】では傷付けることも出来ないだろう。
ましてやスキルを使えないんじゃなおさらだ。
だが・・・俺の切り札はもう一つある。
「【月光神ツクヨミの加護】よ! 気力の回復を!!」
俺が神の【加護】を使うと同時に、BPが一気に全回復する。
「・・・!? 貴様!!」
カオスは俺が掴んでいる腕を引き抜こうとするが・・・逃がさねぇよ。
いくらパワーがすごいからって少しくらいなら・・・捕まえていられる。
俺は右手に持った【鉄の大剣】を天高く掲げ・・・
「【勇天の一撃】!!!!」
カオスへ向かって振り下ろした。
武器の性能が低いとはいえ、BP満タンからの全消費【勇天の一撃】だ。その威力は過去最高のはず。いかにカオスの防御力が高かろうとこれなら!!
俺が繰り出す最後の一撃に対し、カオスが選んだ選択は・・・
「・・・フンッ!!」
回避でも防御でもなく・・・攻撃だった。
俺の一撃を無視し、残った方の拳を俺の顔面に向かって突き出してきた。
カオスの奴の最後の一撃は・・・まさかのクロスカウンターだった。
ザシュッッ!!!
【鉄の大剣】がカオスの体を切り裂いた。
同時に・・・
ドゴッッッ!!!
カオスのパンチが俺の顔面にヒットした。
・・・ま、まずい・・・意識が・・・
し、試合は・・・どっちが・・・勝ったんだ・・・?
俺の意識は・・・最後まで見届けることなく・・・途絶えてしまった。
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