真なる混沌
「・・・まさか・・・ここまでやるとはな」
カオスの奴が抑揚の無い声で言ってくる。無表情な顔と感情の篭っていない声からはカオスが今、何を思っているのかは分からない。
俺たちの実力を確認して高揚している?
【眷属】であるディーラとラグゼノアを倒されて悲しんでいる?
自分の思い通りに進まなくてイラついている?
・・・どれも当てはまるようであり、どれとも判断が出来ない。
まったく感情を感じさせないカオスからは人と話しているはずなのに、人ではない何かと話しているかのような不気味な印象を受ける。
「俺だけの力じゃないさ。アーテルやアウルの頑張りがあってこそ、だ」
俺は毅然とした態度で返す。
正直、アーテルとアウルがいなかったら俺なんてとっくの昔にやられていた。
二人だけじゃない。
一緒にクエストを受けまくったアテナ。
【魔法】の研究と議論を交わしたアルマ。
【料理】面でサポートしてくれたアーニャ。
数多くの【兵器】を製作してくれたアヴァン。
何度も模擬戦の相手になってくれたアシュラ。
多くの収穫物を育ててくれたアスター。
・・・ついでに情報を売ってくれたラングと装備を作ってくれたガットもな。
皆のおかげで俺は強くなれた。だから俺はここに立っていられる。
そしてアーテルのおかげで、残っているのはエンマと【精霊憑依】で一体化しているカオスのみ。
「・・・そうか」
カオスはため息をつきながら呟いた。
「・・・戦いは常に一人、頼れるのは己のみ、【眷属】もまた道具に過ぎない・・・そう思っていたが・・・こうして助けられた以上、認めねばなるまい」
・・・【眷属】は道具・・・か。確かにそう思っているプレイヤーもいるだろう。だが、俺にはそうは思えない。思いたくない。例えゲームの中のキャラクターだとしてもアーテルとアウルが俺を助けてくれたことは本当のことで・・・本物だと思うから。
「・・・そうだな。押し付けられたとはいえ、助けられた事実は何も変わらない」
・・・押し付けられた? 何を言っているんだ? ディーラもラグゼノアもエンマも・・・お前が望んで【眷属】にしたんじゃないのか?
「・・・ならばこそ、奴らの期待には応えねばなるまい」
俺の疑問を余所に両手に持っていた【双神刀ブライ】を地面に突き刺し、手放した。
・・・武器を手放したにも関わらず、カオスの闘気が膨れ上がっていくのがわかる。今度は何をする気だ。
「・・・立ちはだかる敵は全て倒す。・・・その為の力・・・お前に見せてやろう」
・・・闘気だけじゃない。この感じは・・・【神気】?
「・・・【混沌神カオス】の名の元に、真なる我の姿を解放する」
「!?」
なん・・・だと?
カオスの奴も神の【加護】を?
「【真姿解元】」
その言葉と共にカオスは・・・カオスの体が白い光に包まれ、変化していく。
カオスの体が一回り大きくなり、さらに上半身の衣服がはじけ飛んだ。
あらわになった体もまるで彫刻のように、ドラゴンの鱗のように硬化し、変形していく。
顔つきも同様に変化していく。髪は針金のように硬く鋭くなっていき、全身が真っ白な中でも色が違った灰色の眉毛も消え、黒目だった瞳も消えた。
その姿は・・・本当に全身真っ白な・・・怪人のようになった。
「お前・・・【人間】じゃなかったのか?」
その姿は・・・まさに異形。一見すると全身鎧を着こんでいるようにも見えるが、実際には鎧を着ているわけではなく、そういう生物だというのが見ていてわかる。
その姿は・・・明らかに【人間】のものじゃない。怪人か人型のモンスターか、もしくは・・・
「・・・神、か?」
【混沌神カオス】という名前から考えても・・・
「・・・そんな大層なものじゃない」
あ、普通に喋れはするんだな。というか違うの?
「・・・【真姿解元】・・・一部の種族はこのスキルを使うことで、元にして真なる姿を解放することができる・・・だそうだ」
だそうだって・・・なんでそんな他人事?
「・・・そしてこれが【神人】という種族の真なる姿、ということだな。【混沌神カオス】とは名前がたまたま一緒なだけだ」
【神人】・・・それがカオスの種族か。そんな種族があったことも驚きだ。・・・偶然同じ名前の神から【加護】を受けたってのか? 本当かよ?
いや、今はそれよりも気になるのは・・・
「・・・で、わざわざそんな姿になったってことは・・・」
「・・・決まっているだろう?」
そういった瞬間、カオスの姿が・・・消えた。
次に気づいたときには・・・周囲の景色が動いていた。
続いて俺の腹に走った衝撃と痛み・・・
「だう!?」
そして遠くから聞こえるアウルの声と、アウルのすぐそばで拳を突き出していたカオスの姿でようやく俺が殴り飛ばされたことに気が付いた。
速い・・・全く見えなかった。
当たり前だがカオスの奴、かなりパワーアップしてやがる! スキルを使った様子は一切なかったのに!
「・・・なるほど」
カオスの奴は・・・隣にいるアウルを無視して、自分の腕を見ている。まるで自分の体の調子を確認するように。
しかし、それも一瞬のこと。カオスは吹っ飛ばされた俺に視線を戻した。
・・・まずい!!
「【韋駄天の俊走】!!!」
俺はカオスに対抗すべく超加速状態に入る。だが・・・
「【冥獄の獣は疾く駆ける】」
カオスの奴まで超加速状態に入った。
・・・カオスの姿が消えた。
・・・居ない、見えない、見つからない!
そんな・・・俺だって超加速状態に入っているのに!!
「・・・後ろだ」
「!?」
背後から声がしたと思ったら、また景色が動いた。
続いて背中からの衝撃。
再び吹っ飛ばされながらもかろうじて背後を見ると・・・蹴りを放っていたカオスの姿があった。
いつの間に・・・全く見えもしなかった・・・そこまでステータスに差があるのか!?
「くっ!?」
超加速状態が解ける。
俺はなんとか体勢と整えて着地した、その場所は・・・ちょうど俺がいた場所。
「だう!?」
隣のアウルが目を白黒させている。一瞬の出来事で何が何だか分からなかったんだろう。
カオスの奴は・・・奴も元の場所にいた。地面に突きさした【双神刀ブライ】を抜いている所だった。
「・・・カオス、てめぇ・・・余裕のつもりか!?」
今の隙・・・今のカオスのステータスなら余裕で俺を倒すことができたはずだ! あの大刀さえ使ってこなかったってのは・・・余裕の何者でもない!!
「・・・余裕ではない。まだこの体に慣れていないだけだ。数えるほどしかこのスキルを使ったことがなかったからな。・・・それにお前が油断ならないのは身に染みているからな。・・・まだ隠し玉があるのだろう?」
・・・野郎・・・もし、カオスの言う通りに奴があの体に慣れていないのなら奴を倒せる可能性があるのは慣れていない今だけ、ということか?
どちらにせよ俺にももう後はない。
それに生半可な方法では今のカオスには太刀打ちできない。
となると俺に打てる手は・・・
「・・・行けるか、アウル?」
「だう!!」
アウルとの【精霊憑依】は無効化されていて再度発動はできない。だが、無効化されているのはあくまで【精霊憑依】だけだ。
だから・・・
「行くぞ!アウル!!」
「だう!!」
「【精霊憑鎧】発動!!」
俺の言葉と共にアウルは俺に・・・ではなく【攻鎧アルドギア】に吸い込まれ、一体化する。
同時に【攻鎧アルドギア】が変化していく。
動きやすさ重視のために部分的な鎧だった【攻鎧アルドギア】は俺の全身を覆う全身鎧へと変化し、さらに漆黒ベースだった鎧は黄金の装飾が増えた。
「【王鎧アウルドギア】!!!」
【精霊憑鎧】の効果。
俺のステータスにアウルのステータスを上乗せする!!
これで今のカオスのステータスに近づけることができたはずだ!!
決着を付けるぞ!カオス!!
作者のやる気とテンションを上げる為に
是非、評価をポチっとお願いします。
m(_ _)m




