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それでも主のために

白いオーラを纏ったカオスの【双神刀ブライ】によって斬られたアーテル。


その姿は・・・ボロボロだ。


明らかにアーテルのHPは一割を切っている。しかし・・・


「・・・これで【魔龍覚醒】とやらは無効化した。・・・終わりだ」


【双神刀ブライ】に斬られたことで【魔龍覚醒】の発動が無効化されたのだ。


これではもうアーテルは・・・


「ク・・・クル・・・」


しかしアーテルはボロボロになりながらもなお、カオスに向かっていこうとする。


「・・・まだ息があるのか。・・・だがもう用は無い」


対してカオスは興味を失ったかのようにアーテルから目線を逸らした。


「・・・後はお前達に任せる。ディーラ、ラグゼノア」


「ぎゃお!!」


「了解デス」


二人に指示を出してカオスは落下していく俺とアウルに向かってくる。


ボロボロのアーテルにはディーラとラグゼノアが向かっていく。


・・・くそっ!


くそくそくそっ!!


なにか・・・なにか手は無いのか!!


考えろ!


考えろ!!


考えろ!!!


しかし、俺が思いつく手は・・・くそったれ!!


もう俺には()()()()しか残ってないのかよ!!


「【シンクロ】スキル発動!」


俺はアーテルに対し【シンクロ】スキルを発動させる。


【シンクロ】スキルは主と【眷属】との間でスキルの貸し借りができるようになるスキルだ。【眷属】のスキルを主が使えるようになったり、()()()もできる。


なので俺の【回復魔法】をアーテルに貸す事もできる・・・が、それでは回復は出来てもディーラやラグゼノアをしのぐことはできない。


だから・・・


「アーテルに【太陽神アマテラスの加護】を貸し付ける!!」


神の【加護】もスキルの一種。【シンクロ】スキルによって【眷属】たちに使わせることができることは事前に確認していた。


「・・・なに?」


俺の行動を訝しげに見ていたカオスは振り返り、アーテルたちの様子を伺っていた。


神の力に近いという【双神刀ブライ】の効果・・・俺たちにとっては呪いも同然のそれを解除できるのは・・・多分、このスキルだけだ。


「【太陽神アマテラスの加護】の下、アーテルにかけられた無効化の呪いを浄化せよ!!」


瞬間、アーテルは太陽のような輝きに包まれた。


同時に【双神刀ブライ】による無効化の呪いが消えていく。


そしてそれは・・・


「ク・・・ルァアアアアア!!!」


無効化されていたスキルの解放を意味する。


そのトリガーを引いたのは俺だ。


・・・アーテルがあんなに嫌がっていた【魔龍覚醒】を。


アーテルを救う意味では最善の選択だったかも知れない。だが、勝利のためにアーテルが嫌がる選択を選んだ俺は・・・最悪だ。


「だう!!」


・・・そんな事無いとアウルが言ってくれているようだが・・・試合が終わったらアーテルにしこたま謝る事を心に誓う。


と、ここで地面が近づいていたので俺とアウルは着地し、上空のアーテルたちの様子を伺いつつ【グランディスマグナム】を取り出す。飛行手段を壊された以上、俺にできるのは地上からの援護射撃のみ。


「クルァアアア!!」


アーテルは全身から禍々しいオーラを発しながら、黒いオーラのドラゴン・・・【魔龍】へと変わっていく。


「クルァア!!」


【魔龍】アーテルは近寄ってきていたディーラとラグゼノアにオーラの手を大きく振りかぶり、二人にたたきつけた。


「ぎゃお!?」


「・・・クゥ!?」


その威力は二人を後退させるには十分だったようだ。やはり【魔龍覚醒】は強力なスキルだ。暴走さえしなかったら便利なスキルなのに、な。


「・・・あれが【魔龍覚醒】か・・・中々の力。・・・だが、それも無駄なことだ」


そう言ってカオスは【双神刀ブライ】を構えながら再びアーテルの元へと向かっていった。


またあの大刀で【魔龍覚醒】を無効化させるつもりか!


「今度はやらせねぇ! 行け!【ビートル君】!!」


こんな時のためにと身を隠しながら周囲を巡回させていた【ビートル君改】を全機、カオスの元へと向かわせる。


「・・・こんなおもちゃで止められると・・・」


「思ってねぇよ!!」


ダンッ!ダンッ!ダンッ!!


【リフレクターシールド】を張った【ビートル君改】に向かってエナジー弾を放つ。【リフレクターシールド】に当たったエナジー弾が反射を繰りえしながらカオスへと向かっていく。


「・・・うっとおしい」


カオスは足を止め、エナジー弾を回避しつつ【ビートル君改】を一機づつ破壊し始めた。倒せなくても良い・・・せめて足止めを。


「ぎゃおおお!!」


「【ウィンゼルヴバンカー】アクティブ」


カオスの足を止めてもディーラとラグゼノアはアーテルに向かっていく。


「【グランディスマグナム】レールガンモード・・・シュート!!」


ドゴォォォン!!


そんな二人に対し、もう一丁の【グランディスマグナム】で牽制する。もう出し惜しみは無しだ。


その間に【魔龍】アーテルはその姿を巨大な球体に変えていた。ミーシャとの試合でも見せた()()スキルだ。


都合が良いことにカオスのみならず、ディーラもラグゼノアもアーテルと距離が近い。


上手く直撃すれば一網打尽にできるかも・・・そう考えた所で【魔龍】アーテルは発動させた。


・・・【黒魔の(ダークレイ)殺戮光(デストロイヤー)】を。


「クルゥァアアアアアア!!!!!!!」


黒い閃光と共に起こる、何者も抗うことはできない超威力の大爆発。


それを前にしてもなお、動く者たちがいた。


「きゃおおおおおお!!!!」


ディーラは・・・我が身を焼く爆発に晒されてもなお、その爆発の中心・・・【魔龍】アーテルに向かって突撃して行く。なんという闘争心。


「【エナジーフィールド】出力全開ッ!!」


ラグゼノアは・・・全ての【ビートル君改】を斬り捨てたカオスの前に立ち、爆発から庇うようにバリヤーを展開させた。主を守るために盾になるというのか。


ドゴォォォォンッ!!!


舞台全体を揺るがすような大爆発。


黒い閃光が周囲を照らし、大量の爆煙が舞い上がる。


・・・くっ、カオスの奴を見失った。


不意打ちを食らわす絶好のチャンスだったに・・・しかしこれだけの爆発だ。


いくらカオスたちでもただでは「ぎゃおおおお!!!」・・・こ、この声はまさか!?


晴れていく爆煙、その中心にいたのは・・・


【魔龍】アーテルをその爪で貫いたボロボロな姿のディーラだった。


「アーテル!?」


「だう!?」


アーテルからは既に禍々しいオーラは消え、代わりにリタイアの光が現れていた。


同様にディーラも焼け焦げた体からリタイアの光が。


・・・相打ち・・・


まさか【魔龍】アーテルの【黒魔の(ダークレイ)殺戮光(デストロイヤー)】を食らいながらも攻撃を仕掛けてくる奴がいたとは・・・


消えかかっていたアーテルは最後に俺たちを見て・・・


「クルー・・・」


と言いながらディーラと共に消えていった。


その声は俺には・・・「あとはおねがい」と言っているように聞こえた。


・・・その言葉をかみ締めながら、俺は急いでカオスの姿を捜した。


・・・いた。


やはりラグゼノアのバリヤーに守られて・・・いや・・・


「・・・マス・・・ター・・・ゴ無事・・・デスカ」


「・・・ああ」


遠目だからはっきりとはしないが・・・カオスの奴にはほとんどダメージが無いのが分かる。なぜならカオスの前にいたラグゼノアが深刻なダメージを受けていたからだ。


鎧は吹き飛び、手足は焼き焦げ、体中にヒビが入っていた。


・・・身を挺してカオスを守りきったのか。


カオスはラグゼノアを抱えながら静かに地面へと降り立った。


しかし、ラグゼノアにも既にリタイアの光が現れていた。


「・・・最後・・・マデ・・・オ供・・・デキズ・・・申シ訳・・・アリマセン」


「・・・お前達は十分に役に立った。・・・休むが良い」


「・・・」


安心したかのように目を閉じ、消えていくラグゼノア。


最後に残ったのは・・・俺とアウル、カオスとエンマだけとなった。


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