決戦に向けて
「がうがうがう!!」ガツガツガツ
「クルー!!」ガツガツガツ
「だう!!」ガツガツガツ
・・・俺、アーテル、アウルは貪り食っていた・・・カツを。
トンカツ、ヒレカツ、ロースカツにチキンカツ、メンチカツにカツレツ、カツ丼にカツカレーetc、etc。
リアルではまずありえないだろう、そしてありえたら肥満一直線であろうカツ料理を前に俺たちはひたすら食いまくっていた。
「いや、なんでよ?」
豪快に食いまくる俺たちにアテナが疑問を呈した。
「何言ってんだ、アテナ。勝つために決まってんだろ!」
俺はアテナに堂々と胸を張りながら・・・ハムカツを頬張る。
「・・・勝つためにカツを食べている、ということですか?」
「当然だろう、アルマ」
・・・アルマの呆れたような視線にもめげず、俺は串カツを手に取る。
「さすがの食べっぷりなのです! さあ、どんどんお料理を出すのです!!」
「ありがとう、アーニャ」
さすがアーニャだ。カツ料理の重要性を良く理解してくれている。・・・お、このエビカツも美味しい。
「・・・我にはヤケ食いしているようにしか見えないのだ」
「ハッハッハ! そんなわけ無いじゃないか、アヴァン」
これは優勝するために戦意を高揚させる為の大切な儀式なのだ。・・・このマグロカツも絶品だな。
「がうがうがう!!」ガツガツガツ
「ほら、アシュラだって俺みたいにカツまみれじゃないか」
素晴らしい食いっぷりのアシュラ。・・・若干、女の子が見せてはいけないような姿だが・・・あ、おい! そのカツサンドは俺のだぞ!!
「別にアシュラは戦うわけじゃないですよね? というか普通に食べ過ぎでは?」
「細かい事は気にするな、アスター」
人には時として、避けては通れぬ戦いがある。負けられない戦いがある。戦いに勝つために・・・カツを食べるのだ。・・・この味噌カツ、味がしみこんでいて美味しいな。
「いや、単に自分が食べたいだけだよね?」
「言っていることは分かるが、この量はさすがにないじゃろう」
ラングもガットも呆れ気味だが・・・自分たちだって食いまくっているくせに良く言う。
「文句があるなら食うな」
「「・・・」」
・・・コイツら、黙り込みやがった。それでも手と口は絶えず動いている。現金なヤツラだ。
他の【眷属】たちも思い思いに出された料理を食べている。がっついているのは俺をはじめ一部の人間だけだ。
・・・なんか恥ずかしくなってきた。まあ、それでも食い尽くすまでやめるつもりは無いがな!!
「お前達・・・随分と贅沢な物を食べているのだな」
「羨ましいです」
「本当に美味しいものばかりだねぇ」
そして激励? に来たヴァラット、ミーシャ、ラーサーもおすそ分けした料理を食べている。といってもこれらの料理は自分たちで食材を集め、アーニャが手間暇かけて調理してくれた物だ。なのであくまでおすそ分け、少量だ。大量に欲しいのなら自分たちでやってくれ。
それにしても・・・
「お前達の所は大手のクランなんだろ? 人がたくさんいるんじゃないのか? 素材を集めるのにも苦労しないだろうし、【料理】スキルのレベルが高い奴とかいないのか?」
大手クランならそこら辺の問題も簡単にクリアしていそうなもんだが・・・
「【ヴァーミリオン】の活動は【機甲界】がメインだからな。食材などはドロップせんから買い取るしかないが・・・それもほとんど【兵器】の素材の買い取りに費やされている」
「【モンスターイズライフ】はプレイヤーよりも【眷属】の方が多いですからね。【料理】を頑張る人もいますが、大抵はレベリングや【眷属】のお世話に時間を取られています」
「【双星騎士団】も似たようなものだね。基本、冒険と戦闘がメインで【料理】スキルが高いプレイヤーはあんまりいないよ。装備にもお金がかかるしね」
・・・思わぬところで余所のクランの台所事情を垣間見たような・・・そういう意味では俺たち【アークガルド】は各分野に上手くばらけていて上手くバランスが取れているように思える。・・・まとまりが無いとも言えるかもしれんが。
「うむ、しかしこれだけの美味な【料理】を食べられるとなると【料理】スキルを取得する価値もあろう。直接の効果が無くともモチベーションが上がることは間違いない。我が【ディアボロス】でも取り入れることを検討してみよう」
・・・
「・・・なに普通に戻ってきて話に混じってんだ、ベルバアル」
俺はチキンカツバーガーを頬張っていたベルバアルにアイアンクローをかます。
「アイダダダダ!!」
「お前、レシトリーとレヴェーネに連れて行かれたんじゃないのか」
まさか、また逃げ出してきたのか? 今度は俺自らレシトリーたちに突き出してやろうか?
「け、決勝でカオスと戦うアルクにアドバイスをしてくると言って抜け出してきたのだ。ほら、ついさっきまでカオスと戦ってきた我輩だからこそできるアドバイスもあるだろうと・・・」
「俺はお前とカオスの試合をかぶりつきで全部見てたんだぞ? 外野から見ていたもの以上になにか、アドバイスできんのか?」
「・・・」
・・・できねぇのかよこの野郎。バーガー返せ・・・と言いたい所だが人の食いかけはいらん。全部お前が食え、と言って離してやる。
「アイタタタ・・・容赦ないな。・・・アドバイスは無いが、実際に戦った感じは教えてやれるとは思うぞ」
「・・・ほう?」
ガットの奴もカオスに負けたが、そもそもガットは戦闘メインではないし、カオスも本気ではなかった。ベルバアルとの試合ではそれなりにスキルも見せていたし、何かしら感じる事があったのかも知れん。
「・・・それは興味深いな。で、どうだったんだ?」
俺は食べるのを止めて真剣に聞く体勢を取る。
ベルバアルは深刻そうに話し始めた。
「・・・特に何も感じなかった」
「ぶん殴られたいのか、お前?」
コイツと真面目に話そうと思った俺が馬鹿だったか。
「いやいやいやいや!!・・・本当に何も感じなかったのだ」
・・・どうやら真剣に話をしているらしいな。ならもう少し聞いてやるか。
「殺気も戦意も闘気もなにも・・・気配すら感じなかった」
「・・・それは【機械兵】・・・いわゆるロボットを相手にしているような感じか?」
あの全身真っ白怪人の無表情を見れば、ロボットだと言われれば納得できなくも無い。
「いや、似ているが違う。【機械兵】は物理的に動く物体、殺気も気配も無いのは同じだが・・・あのカオスは違う。なんというか・・・得体の知れない生き物を相手にしているかのような不気味さがあった」
「・・・お前だっていろんなモンスター相手に戦ったりしているだろう」
モンスターは文字通り、怪物。その名の通り不気味な様相なモンスターだっている。逆に愛らしいモンスターもいるが。
「それともまた違うな・・・上手く言葉には出来ないが・・・そう、まるで虚無を相手にしているがごとくつかみどころが無かった」
・・・いまいち要領を得ないな。ゲーム的に考えれば、そういう特殊な種族、またはスキルを取得している可能性が高い。リアルで考えるのなら・・・
「いわゆる達人ってやつかい? 無我の境地にまで到った達人から殺気も気配も感じられないって言うからね」
ラーサーが俺の考えと同じことを口にした。・・・それは一体誰が言っていたんだ? ラーサー?
だが俺にはもう一つ、心当たりがある。
「・・・もしくは・・・神・・・か?」
ベルバアルとラーサーの顔色が変わる。予想はしていたが、この二人も神の【加護】を貰うときに試練を受けたのだろう。つまり、神様とのバトルを。
二人の様子からして負けたようだが・・・もし、勝っていたのなら・・・どうなっていたんだろうな。
・・・まったく、本当に何者なんだよ、カオスは。
試合を見た限り剣・・・いや、大刀の腕もかなりの物だったし、見たことが無いスキルや武器も使っていた・・・相当にやり込んだゲーマー? ・・・いや、それだけじゃないような気がする。
・・・あー、止め止め!
悩んでても分からん物は分からん。
カオスが何者かは闘ってみれば分かるだろう・・・多分。
それより、せっかく余所のクランのリーダーがいるんだから、タダメシ分くらいは色々話を聞かせてもらおうか。試合で何かの役に立つかもしれないし。
俺はカツ料理の大物、全乗せカツカレーに手を伸ばしながら話を聞くことにした。
色んな話を聞く中で時は過ぎていき、決勝戦の開始時間が迫ってきていた。
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