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混沌の闇は深く

カオスの持っている二本の大刀・・・【双神刀ブライ】とやらは斬った対象の効果を無効化する力があるらしい。


ようするにベルバアルの持つ【魔剣グラトリオン】や【魔鎧ベルゼリオン】の力はカオスには通用だが・・・一定時間というのがミソだな。


ラーサーが持っていた【聖盾グラウジス】は【魔法】効果を打ち消すという似たような効果があったが・・・


「一定時間ってことは、無効化されても時間が経てば元に戻るという事か」


「そのようだね。【魔法付加(エンチャント)】のような一時的な効果を打ち消すのとは、また違うみたいだ・・・まあ、永久に効果がなくなってしまったらそれはそれで大変だからね」


俺の疑問にラングも同調する。


確かにせっかく手に入れた貴重な装備があの刀に斬られたら効果がなくなった!・・・なんて取り返しのつかないことになったらシャレにならないしな。・・・まあ、そんなことがあったら被害にあったプレイヤーからクレームが殺到しそうだしな。


「ある意味で生産職泣かせの刀じゃのう」


確かに丹精込めて作って装備に付けた効果を無効化されたらなぁ。・・・ところでガットよ。余所見しながら俺の装備を修理してるけど大丈夫なんだろうな?


「【魔剣技:インフェルノスラッシュ】!!」


お、ベルバアルが攻勢に出た。


これまでの試合を見る限り、ベルバアルは後の先・・・つまり、相手の出方を見てから攻撃するタイプだった。あの【魔剣】や【魔鎧】があればそれでも余裕だっただろうが、カオスには通用しない。


となるとベルバアルに残された道は、やられる前にやれ、だな。


紫色の炎を身に纏った【魔剣】でカオスに斬りかかるベルバアル。


「【十字烈斬】」


カオスは両手の大刀を交差させてそれを受け止めた。同時に紫の炎が消えた。


【魔剣技】とやらの効果も消えるのか・・・だが今、わずかだがカオスは()()()()()()()()()。つまり効果は消えても()()()()()()()()()()()ということだ。


となると後は純粋に武器の性能とスキルの威力、そしてプレイヤーの技量の勝負となるわけだ。


おそらくベルバアルも今の一撃でそれを理解したはずだ。


だが・・・逆に言えば【双神刀ブライ】はそういった土俵に持ち込む為の武器、それをあえてカオスは使っている。純粋な真っ向勝負でベルバアルがカオスに勝てるかどうか・・・


それからしばらく、ベルバアルとカオスは剣戟に興じていた。


お互いに【魔剣技】と【刀術】を駆使した息もつかせないぶつかり合いだ。


『んぎゃ!?』


そう・・・


『ふぎっ!?』


息もつかせぬ・・・


『うぎゃうっ!?』


・・・うるせぇな、【魔剣】の野郎は。


「さっきからやかましいぞ【グラトリオン】! 気が散る!!」


『そうです。情けない声を出さないで下さい』


『くっそ! 文句があるんならテメェらが食らってみろ!! 死ぬほどイテェんだぞ!!』


・・・【魔剣】も死ぬのだろうか? なんにせよ、哀れな奴である。


「・・・仕方がないな。【限定召喚】! 来い、シャンディ!!」


「ピィピィー!!」


ベルバアルが呼び出したのはいつぞや見たデッカイ鳥だった。鷲に似たフォルムをしているが大の大人が3、4人は余裕で乗れそうなほど巨体だ。


「【テラーイーグル】か・・・中々怖いモンスターを連れているね」


「・・・怖い?」


それはどういうことっすか、ラングさんや?


「見ていれば多分、分かるよ」


・・・良く分からんが、見てろというのなら見ていよう。


ベルバアルはその鷲に飛び乗り、上空へと舞い上がる。


遠距離戦を仕掛けるつもりか?


と思ったら鷲が大きく息を吸い・・・


「シャンディ、【サウンドテラー】!!」


「ピィーーー!!」


とんでもない声で鳴き始めた。思わず耳を塞いでしまう。


「・・・観客席にまでは効果が無いみたいだね。【テラーイーグル】の鳴き声には【耳鳴り】っていう状態異常を引き起こす効果があるんだ。実際、直に聞くとガラスを引っかいたような不快な音に聞こえて耳を塞ぎたくなるんだよね。その隙に倒されるプレイヤーが続出して一部では恐れられているモンスターだよ」


・・・【耳鳴り】って状態異常なの? まあ、確かにそうといえばそうかも知れんが・・・状態異常を引き起こすモンスターとは厄介だな。


・・・カオスはどうするんだ?


「・・・【一刀・剛破斬】」


カオスは・・・その場で大刀を振り上げたかと思うと・・・力強く振り下ろした。


同時に鷲の鳴き声が消える。


「アイツ・・・()()()()()()()()!?」


そんなんありかよ・・・って顔をしているな、ベルバアル。まったく同感だけど。


【双神刀ブライ】が斬った対象って・・・音や空気も対象に入ってるのか!


「ええい、ならば!【魔剣技:ボルケーノスラッシュ】!!」


おお! 今度はベルバアルが真っ赤に燃える斬撃を放った。しかもかなりでかい。見た目からして相当な威力だとうかがえる。


「・・・【双刃・疾風連斬】」


カオスも斬撃を出してきたか・・・斬撃が真っ白なのは仕様なのだろうか?


空中でぶつかり合う斬撃たちは、お互いに相手に届くことなく相殺されて消えていく。


・・・一部、カオスの放った斬撃に当たって軌道が曲がり、地面に落ちていくベルバアルの斬撃がある。その斬撃は・・・燃えたままだ。効果が無効化された様子は無い。


となると無効化できるのは直接斬った対象だけ、か。つまり、距離をとれば・・・【魔剣】はともかく【魔鎧】の効果は有効活用できる。


ベルバアルも気が付いただろう。


「ふむ・・・シャンディ、【イーグルフェザー】だ」


「ピィ!!」


今度は何をするのかと思ったらベルバアルが鷲から飛び降りた。


と思ったら鷲がみるみる縮んでいき、ベルバアルの背中に()()()()()。そして滞空。その様はまるでベルバアルの背中から鷲の翼が生えたかのようだ。


「これならば【魔剣】を容赦なく振ることが出来よう・・・【ボルケーノスラッシュ】!!」」


と言ってベルバアルは更なる燃える斬撃を放つが・・・ベルバアルの狙いもう一つあるな。


あれは自分が前面に出てカオスの攻撃を()()()受ける事で、【魔鎧】の効果のステータスアップを図る気だ。


カオスの持つ【双神刀ブライ】の力を把握した上での判断としては間違っていないと思うが・・・ベルバアルは一つの懸念を忘れている。


それは・・・


「・・・【冥獄の(ユベル・)獣は空を飛び回る(スケアロ・フェ二ス)】」


カオスにも空を飛ぶ手段があり、接近戦を仕掛けてこないか、ということだ。


その懸念が示すとおり、カオスはまるで空中に足場があるがごとく空を駆けていった。


「・・・【空歩】? いや違うか・・・今、カオスの奴なんて言った?」


「・・・ユベルなんとか・・・何語かはわからないね。何かのスキルだと思うけど・・・聞いたことが無い」


謎の言葉を唱えて空を駆け、ベルバアルに迫るカオス。


ベルバアルが必死に放つ斬撃も次々と打ち落とされていく。


さらに・・・


「【冥獄の(ユベル・)獣は疾く駆ける(レンツァ・フェリル)】」


そうカオスが唱えた瞬間・・・その姿が消えた。


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