才能を超えるには
===転送===>観客席
「たでーまーさ」
「だう!」
激闘を終え、観客席に戻ってきた俺とアウル。アーテルは途中で【送還】したので今はクランホームにいる。あとでお菓子を持っていくことにしよう。
「お帰り・・・もはや何を言ってるのか分からないわよ?」
「お帰りなさい。すごい戦いでしたね」
「すごかったのです」
「録画するのが大変だったのだ」
「熱い戦いでしたっすね! さすがアニキっす!!」
「本当に・・・激闘でしたね」
俺たちを出迎えてくれるクランメンバーたち。
ちなみに『たでーまーさ』とは、『たでーま』と『ただいまーさ』を合体させた俺流挨拶である。・・・うん、意味わからんな。
「良くやったね、アルク! これで決勝進出だ!!」
ラングの奴のテンションが高い。
「・・・アルクよ」
しかし、打って変わってテンションの低いガットに肩を掴まれる。
「・・・お主、ワシが作った【豪剣アディオン】に何をしたんじゃ?」
あー、やっぱ気になるよね。ガットからすれば自分が丹精込めて作った武器が知らないところで魔改造されてたみたいなもんだからな。
しかしなー・・・
「俺にわかるわけないだろう。俺が意図して何かしたわけじゃないし。・・・気になるんならアウルに聞け」
「だう?」
そう言ってアウルを抱きかかえ、ガットの前に差し出す。当のアウルは首を傾げているが。
事態の真相は張本人であるアウルにしか分からないだろう。・・・多分、本人も良く分かっていないと思うが。
もっとも、仮にわかっていたとしても、アウルはだう! としか答えないだろうがな!!
ぐぬぬぬぬ、と唸っているガット。・・・フフフ、純粋な瞳を向けるアウルに文句や質問責めなどできまい。
「・・・アルク」
アウルと一緒にガットを弄っているとアテナが話しかけてきた。とりあえずアウルをガットにパス。渋い顔してアウルを受け取ったガットを無視してアテナと話す。
「・・・何はともあれ、私の仇を討ってくれたわね。ありがとう」
・・・そうか。アテナはラーサーに負けたんだっけな。試合が始まったらそんなことすっかり忘れてたけどな(笑)。
「うむ、仇はしっかり取ってやった。盛大に俺を敬うが良い」
俺は尊大な態度で仁王立ちしながらアテナに答えてやる。
「・・・なんか偉そうでむかつくけど・・・負けた私には何も言えないわね」
・・・ほほう・・・何時になく素直だな、アテナ。これは愉快、愉快。
「うむ、とりあえず・・・焼きそばパン買って来い」
「パシリ扱い!?」
いや、とりあえず言ってみたかっただけ。まあ、本気じゃあ・・・
「大丈夫っすよ、アテナの姉御! アニキ! ボクが買ってくるっすから!!」
そう言ってピュー!と走り去っていくアシュラ。
「・・・」
「・・・冗談だっつーの」
・・・と言っても既に手遅れ。既にアシュラの影も形も見えなくなっている。・・・どんだけ気合入れてパシられに行ったんだよ。
「・・・なんかすいません」
・・・謝らないでくれ、アスター。悪いのは俺・・・なのか?
「多分、試合を見てウズウズしてたんじゃないですかね? とにかく体を動かしたくなったのかと・・・」
とんだ戦闘狂である。・・・いや、誰彼構わずケンカ売ったりせず俺のために動いてくれている分、まだマシなのか?
・・・だが人の話は最後まで聞こうぜ、アシュラ。せめて返事をしてから行って欲しかった。
そもそも売ってるのか? 焼きそばパン。・・・アイツのことだから見つけるまで帰ってこなさそうな気がする。
「・・・仕方無い、探しに行くか」
いまいち納得は出来ないが俺の迂闊な発言が発端なので、俺が責任持って探しに行く事にしよう。・・・若干、ほっといても良いんじゃね? と思ってしまう俺は薄情だろうか?
「いえ、アルクさんはお疲れでしょう? 僕が行ってきますよ」
アスター・・・アシュラの尻拭いが板につきすぎだよ? アシュラに振り回されず、君ももっと自由に生きて良いんだよ?
「いえ、私が行くわ。元々私が頼まれたわけだしね」
アスターの苦労性に涙がこぼれそうになっていると、なんとアテナが立候補してきた。
「いや、だからさっきのは冗談だって」
いくら俺でもアテナやアシュラをパシらせようなんて考えていない。欲しい物があるのなら自分で行く。
「分かってるわよ。焼きそばパンはおいといて、アーテルやアウル君には何か買ってあげたいのよ。敵を討ってくれたお礼としてね」
ああ、なるほどね。良かったな、アーテル、アウル。アテナお姉さんが何か奢ってくれるってよ。
・・・って俺は?
と問いただす前にアテナはそそくだと行ってしまった。
・・・おのれ、戻ってきたら話し合いだな。
「・・・ガラにもなくお礼を言って、照れているんでしょう」ボソッ
と、アルマが付け加えた。・・・まあ、そういうことにしておこう。ついでに戻ってきたら調子に乗ってすいませんと謝っておこう。
「それにしても君もラーサーもすごかったね・・・異常と言っても良いくらいだ」
と、突然ラングが失礼極まりない事を言い出しだ。
「失敬だな、お前は。ラーサーは確かに異常な才能を持っていたと思うが俺も一緒にするなよ」
「そのラーサーに君は勝ったじゃないか・・・君とラーサーの試合時間、分かるかい?」
・・・? 突然何を言い出すんだ? こいつは?
「約15分くらいだよ。これまでの試合の時間と比べても短い方だ」
・・・え? そんなもんだったのか? 体感的には何時間も戦ってたような気がするが・・・
「だから、君たちが速すぎるんだよ。あれだけ加速スキルを使ってたり、足の速い【眷属】を使ってたらそうもなるさ」
「うむ、撮影用の【ビートル君】も後を追うのが大変だったようなのだ」
・・・ああ、アヴァンの言っていた、録画するのが大変だったってそういうことか。
「見てるこっちも疲れる試合だったよ。普通に目で追いきれないくらいだったからね」
まあ、観客の目を気にして戦ってたわけじゃないからな。俺もラーサーも全力で戦ってただけだし。
「あんなスピードで戦っていて、それに反応して戦えるっていうのはもはや異常だよ。・・・それにしても最後は気合で押し通した感じだったね。・・・若干、君らしくなかったんじゃないかい?」
・・・確かにな。クールで思慮深い俺(笑)らしくなかったかもしれない。
「・・・フッ、天才に勝つのは・・・努力と根性だと昔から決まってるだろう?」
努力し、根性を見せた者にこそ才能の壁を凌駕することができる。熱血漫画なんかのお約束だな。
「なるほど・・・と言いたい所だけど君以外は無理だよね」
「言いたいことは分かりますが、アルクさん以外には出来ない勝ち方でしたよね。少なくとも私が努力と根性を見せたとしても無理だったと思いますよ?」
・・・なぜか、皆、ウンウン頷いている。
遠まわしに俺とラーサーがおかしいと言われているような気がするが・・・まあ、良いさ。試合はもう終わったんだから。
ラーサーとはまた別の機会で話をしたい所だが・・・とくに【聖剣】の話。まあ、いずれ、だな。
今は次の試合の見学が先・・・っとその前に・・・アウルと百面相しているガットに、損傷した【攻鎧アルドギア】と・・・粉々になった【堅牢の鉄盾】の修理を依頼する。
【攻鎧アルドギア】はボロボロだし、【堅牢の鉄盾】は・・・それはもう綺麗な切断面ですっぱり切られていた。【聖剣】恐るべし。
なお、ガットはそれを見ながら膝をついた。orz
生産職の宿命とはいえ、自分の自信作がこうも見事にバラされたらショックを受けるよな。・・・決勝が始まる前に修理してもらわないと困るんだがな。
『さあ、興奮冷めやらぬ中、続いてBグループの準決勝を行いたいと思います』
『Aグループは大変見ごたえのある素晴らしい試合でしたからね。Bグループにも期待が高まります』
『この試合でー、決勝出場者が決まるわけですしねー』
おっと、もう次の試合が始まるらしい。
舞台上に現れたベルバアルと・・・カオス。
勝ったほうが決勝で俺と戦うことになる。
どんな戦いになるのか・・・見ものだな。
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