天才ゆえに
ラーサーを仕留め切れなかった・・・ミーシャの時もそうだったが、【眷属】の主に対する忠誠心、主従愛には頭が下がる思いだ。
「クルー・・・」
アーテルが申し訳なさそうに鳴いた。
多分、自分がスぺラを仕留めていればこんなことにはならなかったと思っているのだろう。結果論ではあるが、俺が決着を付けることができるチャンスだったのに、間接的に邪魔してしまったと考えているみたいだ。
「・・・仕方がないさ、アーテル。相手の気迫勝ちだったと素直に認めよう」
アーテルを相手に時間稼ぎをしていたスぺラもかなり強かったはずだ。しかもアーテルの相手をしつつもラーサーに気を配り、ピンチの際に駆けつけることができる距離を保っていた。だからこそラーサーのピンチを察知し、すかさず駆けつけることができたわけだ。
ラーサーの命令を忠実に守り、なおかつラーサー自身をも守った忠臣・・・ここは素直にスぺラにしてやられたと考えるべきだろう。
アーテルが悪いわけじゃない。
『だう!!』
ほら、俺の中のアウルもそう言っている。
「・・・クル!」
・・・ふむ。アーテルも納得はしていないみたいだが、俺とアウルの言いたいことは理解はしてくれたようだ。
「・・・良し、アーテル。俺のLPも残りがやばい・・・悪いがあとは俺たちに任せて先に戻っていてくれ」
「クルー・・・」
アーテルは、今度は心配したように俺を見るが・・・
「大丈夫だ。俺たちが勝つさ。」
『だう!だうだう!!』
ほら、アウルも任せてって言ってる・・・多分。
「・・・クルッ!」
それを聞いてアーテルは頷いてくれた。
「アーテルを【送還】」
光となって消えていくアーテルを見送ると、改めてラーサーを見据える。
ラーサーは落ち着いたのか、その場からは動いてはいないが既に立ち上がっていた。
・・・頭を抱えているが。
「・・・ショックを受けてんのか、悩んでいるのか知らんがぼーっとしてると容赦無く斬るぞ」
と、心にもないことを言ってみる。
・・・だってラーサーの奴、今まで以上に殺気が駄々洩れなんだもの。
多分、いまラーサーに斬りかかったらまた暴走するだろうな。
ラーサーの消耗を狙うならそれでも良いのかも知れないが・・・滅茶苦茶な攻撃っていうのはこっちも予想外の攻撃を受ける可能性があるからな。【聖剣】のせいでパワーもスピードも上がっている分、余計にたちが悪い。
だが、集中力で言うのならラーサーはとっくに限界だろう。緊張の糸がスぺラを倒されたことで切れた・・・だからこその暴走のはず。さっきまで以上に隙を見せるはずだ。
・・・とはいえ、今のは俺にとっても捨て身の攻撃だった。
おかげで【攻鎧アルドギア】がかつてないほどボロボロだ。
・・・心なしか、観客席から呪いにも似た強烈な視線を感じるが・・・気にしない。
次こそは決める。
そうでないと俺の方が持たない。
なので俺は【豪剣アディオン】の切っ先をラーサーに向け、隙なく構える。
あとはきっかけだ。
少しでも隙を見せれば一気に斬りかかってやる。
そう息巻いている俺だったが、対するラーサーはといえば・・・
「・・・失礼、ちょっと我を失ってしまったようだね」
幾分か余裕を取り戻したかのように俺を見据えていた。
・・・一応、今のラーサーは丸腰だ。
ラーサーが持っていた【聖剣】は全て周囲の地面に突き刺さっている。とはいえ、拾おうと思えば拾える距離だ。ただし、すべてを一気に拾うのは無理だろう。【念動力】を使えば話は別かもしれないが・・・今のラーサーの精神状態で正確にスキルを使用できるかどうかは疑問だ。
そして、【聖剣】を拾おうとする動作・・・もとい隙は俺にとってもチャンスになる。それを見越しているのかどうかわからないが・・・ラーサーは【聖剣】を拾う動きは見せない。
「・・・【眷属】を目の前で倒されたら無理もないんじゃないか?」
となるとあとは会話か・・・動揺の一つでも引き出せたら俺にとってもチャンスになる。
「・・・そういえば君も【精霊】をかばっていたね。・・・僕自身、ここまで追い込まれたことなんてなかったし、スぺラを倒されたこともなかったから・・・正直、嫌な気分だよ」
・・・なるほど。天才肌のラーサーからすれば追い込まれる経験や、【眷属】が倒されるという経験がなかったのか・・・そうなる前に敵を倒してしまうから。
だからこそ必要以上に動揺してしまったと。いかにラーサーが天才でも・・・人間ということか。
・・・若干、自慢というか聞く人が聞いたら嫌味に聞こえそうだが。
「・・・ミーシャのときもそうだったが・・・」
「・・・分かってるよ。助けられたんだから、その分まで僕が頑張らないとね。そうでないとスぺラが無駄死にになってしまうからね」
どうやらラーサーにもわかっているようだ。
「だからこそ、僕も全力で・・・いや、切り札を使って君を倒すことに決めたよ!!」
・・・うん? ラーサーの殺気がさらに膨れ上がった。・・・立ち直りが早すぎるだろう、コイツ。
ラーサーはゆっくりと右手を天にかざすと・・・
「【聖剣神ラウディ】の名のもとに!!」
「!?」
まさか・・・ここで神の【加護】を使うつもりか!?
「すべての【聖剣】の力を一つに!!」
そうラーサーが叫ぶと・・・ラーサーの周囲の九本の【聖剣】が輝きだし・・・ラーサーの右手に集まっていく。
・・・いや、一つになっていく!?
そしてラーサーの手の中に握られていたのは・・・一本の光の大剣だった。
赤、青、緑、黄、白、水色・・・そして銅、青銅、銀色が入り混じった大剣。
「・・・【真聖剣ラウディキャリバー】!!!」
・・・【真聖剣】・・・すべての【聖剣】の力を一本に集約した・・・のか。
ったく、ここにきてとんでもない切り札を出してきやがったな。
あれは・・・生半可な攻撃は通用しそうにないな。【豪剣アディオン】でさえ・・・砕かれてしまいそうだ。
・・・こちらも神の【加護】を使うか? ・・・【戦闘神スサノオの加護】を使えば・・・だが神の力同士がぶつかり合えば相殺されるはずだ。
最悪、あの【真聖剣】とやらだけは何とかできるかもしれないが・・・後が続かない。
『だう! だうだう!!』
・・・アウル・・・そうだな。アーテルとも約束したし、向こうが切り札を切ってきたのならこっちも、だな。
「【精霊憑依】解除」
「だう!!」
俺の体からアウルが抜け出てくる。
その様子をラーサーはいぶかし気に見ているが・・・
「・・・諦めた・・・わけじゃないよね?」
そのラーサーの問いかけに俺は力強く答える。
「・・・当然だ! 行くぞ、アウル!!」
「だう!!」
俺は【豪剣アディオン】を天高く掲げ・・・
「【精霊憑剣】発動!!」
アウルの【種族スキル】を発動させる。
「だーうーーー!!!」
アウルが、今度は【豪剣アディオン】の中へと吸い込まれていく。
そして【豪剣アディオン】に変化が訪れる。
剣全体に黄金の装飾が施され、刀身も巨大化。さらに漆黒だった刀身が黄金色に染まり、その様相を大きく変える。
「【王剣アウルディオン】!!!」
・・・これがアウルの【種族スキル】。
俺ではなく【豪剣アディオン】と一体化することで【王剣アウルディオン】へと進化させる。
さあ、俺たちの【王剣】とお前の【聖剣】、どちらが強いか・・・決着を付けようか、ラーサー。
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