聖なる剣技
ラーサーの【力聖剣】を【閃槍アーディボルグ】でなんとか受け止めた俺だったが・・・
「・・・グッ!?」
ラーサーからの剣の圧力に片膝を突いてしまう。・・・こっちは両手で【閃槍アーディボルグ】を支えてるのにラーサーは腕一本で・・・【聖剣】恐るべし。
「・・・ふむ、これまでの試合を見る限り、君には【聖剣】に対抗できるスキル・・・えーっとアークなんとかって言っていたね。・・・が、あるみたいだけどスキルという特性上、BPかMPを消費する・・・つまり常時発動は出来ない」
・・・やっぱり、ラーサーも今までの俺の試合を見物していたか。思いっきり俺の力を分析されてたみたいだな。そして今も俺の出方を伺っている。この状況で一気に畳み掛けてこないのはそのためか。
「だからこそ、継続戦闘のために小出しにしたり、【武器】【魔法】【兵器】【眷属】など様々な戦い方をこなしているわけだ。・・・そして何より・・・君はまだ切り札を隠しているだろう?」
・・・なるほど、それを気にして・・・いや、警戒しているわけか。天才のわりに用心深い。もっと調子に乗ってくれたほうがやりやすいのに・・・
だが、切り札はそう簡単には切れないな。出し惜しみするわけじゃないんだが・・・一度見せたら切り札は切り札じゃなくなる。ミスればそれが命取り、切り札の使用は慎重に、だ。
「俺の切り札を見たいんなら、まずお前の切り札を見せるんだな。あいにくそんな挑発には乗らんよ・・・それより、だ」
「?」
それはそれとして俺には他に気になることがあるんだが。
「・・・【聖剣技】は置いておくとして・・・光の剣も力の剣もイタリア語だよな?・・・なんでイタリア語?」
【聖剣】といえばエクスカリバーやデュランダルが有名だが・・・確かイギリスやフランスだったはず。なぜイタリア?
「・・・奇遇だね。実は僕も疑問だったんだよ」
チラリ、と俺とラーサーは試合中にも関わらず目線を移してしまった。
その視線の先は・・・上空を飛び回る司会者席・・・に座っている室長さん。
しかし、室長さんは、さっと顔を逸らしてしまった。
「「・・・」」
これはアレだな。・・・響きがカッコいいからとかそんな理由だな。まあ、別に文句があるわけじゃないからそれで良いんだけど。
視線を戻す俺とラーサー。
「・・・さて、気を取り直して試合続行と行こうか・・・ふんっ!!」
「ぐあっ!? どさくさに紛れて力入れてくんじゃねぇ!!」
油断も隙も無い野郎だ。さすが天才・・・今は関係ないか。
俺は地面に突いた片膝に力を入れ、逆の脚を少し浮かせると・・・
「【ブラストキック】!!」
思いっきり地面を蹴り抜いた。
「むっ!?」
その結果、地面にクレーターができ、ラーサーの体勢が崩れる。
「【ソニックキック】!!」
そこですかさず【聖剣】から逃れ、ラーサーに蹴りを食らわす。
・・・が、俺の蹴りはラーサーを素通りした。
「【分身】!?」
「正解」
直後に背後から聞こえてきた声に咄嗟に前方に駆け出す。目では見えなかったが、気配と風を斬る音で【聖剣】を振るったのが分かった。
少し距離が出来たところで俺は振り返った。
ゾッとしたね。
ラーサーが両手に持っていた【聖剣】が両方とも別の剣に変わっていたのだから。
しかもラーサーが今まさに振るっていた水色の【聖剣】、その切っ先から水流がまっすぐこちらに向かっていたのだから。
「【水聖剣アクアキャリバー】、【聖剣技:水の剣】」
「ぐあっ!?」
【聖剣】から出てきた水流は、まるで生きているかのように俺の体にまとわりついてきた。まるで水の鎖だ。
さらに・・・
「【氷聖剣アイスキャリバー】、【聖剣技:氷の剣】」
そう言ってラーサーは水色の【聖剣】の上に青色の【聖剣】を重ねた。
すると水色の【聖剣】の切っ先から出ていた水流はみるみるうちに凍っていき、それはやがて俺の体にまとわりついていた水の鎖も凍りつかせた。
「・・・クッ!」
体を動かそうとするもビクともしない。これも【聖剣】の力か。
「・・・また新しい【聖剣】かよ。まるで【聖剣】のバーゲンセールだな」
こうも何個もポンポン【聖剣】が出てくると有り難味が薄れるというかなんというか。
「フフフ、よく言われるよ」
・・・言われるんかい。
「でも、僕は不正もしていないし、誰かの力を借りていない。僕の持ってる【聖剣】は全て僕自身の力で手に入れた物だ。文句を言われる筋合いは無いよ」
「・・・お前一人で、だと?」
俺が確認している限りで、これまでコイツの使った【聖剣】は・・・確か9本。その全てを・・・コイツ一人で?
「勿論、決して楽な道のりじゃなかったよ。延々と同じクエストを何度も何度も繰り返し受け続けたよ。運も良かったしね」
「・・・なるほど? その【聖剣】たちはクエストの報酬、もしくはドロップ品という事か?」
「・・・おっと口が滑ったね」
つまり、コイツは何らかのクエストを周回プレイし続けてこれだけの【聖剣】を得たという事か。
これだけの【聖剣】を得られるだけのクエストなら相当に難易度も高いはず。それを延々と周回するという事は・・・かなりの時間と努力と根気が必要なはずだ。
「・・・神速のイ〇パルス並みの反射神経を持ってるんだからもっと厚顔不遜にしていれば良いのに」
「・・・あいにく僕は努力する天才が好きなんだよね」
どうやらラーサーは天才は天才でも努力できる天才だったらしい。・・・パーフェクトプレイヤーでも目指してんのか。
「・・・さて、そろそろ良いだろう? 時間稼ぎしても【聖剣】の氷は解けないよ」
・・・ばれてーら。
「さあ、もっともっと君の力を僕に見せてくれよ!!」
そう言って【聖剣】を構えて向かってくるラーサー。
俺はというと・・・相変らず身動きが取れない。
・・・仕方無いな。
「【限定召喚】! 来い、アーテル!!」
「クルー!!」
俺の頼もしき【眷属】、アーテルを呼ぶ。既に【成体】化済みだ。
「アーテル! 【レーザーダイブ】!!」
「クルッ!!」
光を纏ったアーテルがラーサーに向かって突撃をかける。
「おっと!?」
それを余裕で避けるラーサー。
・・・今のは完璧・・・とはいかないまでもかなりの不意打ちだったはずだ。しかもこの距離でアーテルの【レーザーダイブ】を余裕で避けるとは・・・本当にめんどくさい奴だ。
だが、今のうちに・・・
「【力天の強豪】!でぇえい!!」
俺は力を強化して強引に【聖剣】の氷の鎖を引きちぎる。
「クルッ!!」
そして戻ってきたアーテルの背に素早く乗り、【閃槍アーディボルグ】を構える。
「・・・ここで【眷属】を呼んだか・・・なら、こちらも!」
「む!?」
ラーサーも【眷属】を? これまでの試合では見たことが無いが・・・
「【限定召喚】! おいで、スペラ!!」
「ヒヒーン!!」
召喚されてきたのは・・・馬だ。
普通の馬ではなく、灰色の体に銀色の毛並みが美しく・・・【成体】化したアーテルに勝るとも劣らない大きさの巨馬だった。
「紹介するよ、【銀聖馬】のスペラだ」
「ヒヒーン!!」
と呼び出した【眷属】の背に乗りながら紹介を始めたラーサー。
・・・どうやらここからは騎乗戦らしい。
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