馬上の聖騎士
【銀聖馬】のスペラ・・・か。
初めて聞く種族だが・・・銀色の毛並みがキラキラしていて以下にも【聖剣】の持ち主が乗りそうな馬だな。
「クルー!!」
「ヒヒーン!!」
・・・そして何故かアーテルと張り合うように雄叫びを上げている。落ち着けアーテル、翼とドラゴンの特徴がある分だけ、アーテルのほうが上だ・・・多分。
「フフフ、スペラもようやく出番が来て嬉しそうだね」
対してラーサーは嬉しそうに馬・・・スペラを撫でる。
「スペラ、ねぇ。さしずめスペランツァから取った名前か?」
スペランツァとは確かイタリア語で希望を意味していたはずだ。
「その通りさ。文字通り希望を乗せて走る聖なる馬・・・【聖剣】との相性もよさそうだろう?・・・さあ、行くよスペラ!!」
「ヒヒーン!!」
「来るぞ、アーテル!!」
「クルー!!」
俺たちの掛け声を合図にアーテルとスペラは地面を蹴る。
まずはお手並み拝見・・・なんて悠長な事は無かった。
アーテルもスペラも、お互いに駆け出したと思ったら次の瞬間には・・・激突していた。いきなり真っ向からの体当たりである。
「クルッ!!」
「ヒヒンッ!!」
衝突し、お互いに一瞬ひるんだアーテルとスペラだったが、まだまだ! と言わんばかりに、舞台上を駆け回り始めた。
先ほど、俺とラーサーが並走していたように、アーテルとスペラも並走していたがスピードがまるで違う。
人間の足と馬の足じゃ速さが違うのは当然だろうって? ・・・多分、アーテルもスペラも普通の馬の何倍も速く走ってるから。体感で申し訳ないが、新幹線並みに周囲の景色が流れていくから。
今にして思えばアーテルのスピードに追いついてくる奴なんてほぼいなかった。大抵の相手がアーテルのスピードに翻弄されていたと思って良い。
だが、今は違う。アーテルと同じスピードで迫ってくる相手がいる。
前の試合の巨大キツネ、キュウちゃんとはまた別のベクトルで厄介な相手のようだ。
「ハハハハ、速い速い」
・・・スペラの背に乗ったラーサーは何故か余裕そうだ。・・・俺と同じように結構なGがかかってるはずなんだがなぁ。
「・・・じゃあ、そろそろ僕も攻撃するよ?」
・・・!? まただ・・・いつの間にかラーサーの持っている【聖剣】が変わってる。今度は片方の手でスペラの背を握り、もう片方の手で白い【聖剣】を握っている。あれは・・・【光聖剣】か。
「【聖剣技:光の剣】!!」
そして飛んで来る光の斬撃。
「フンッ!!」
その斬撃を【閃槍アーディボルグ】でなぎ払う。
・・・こんな超スピードで移動している中で正確にこっちを狙ってきやがった。アーテルとスペラの移動スピード、そして放った斬撃のスピードを完璧に把握し、計算して狙わないと出来ない芸当だ。
「どんどん行くよ!!」
しかし、そんな芸当をいとも簡単にこなし、次々と斬撃を放ってくるラーサー。
なんとか槍で相殺しているが・・・クソッ!? これじゃあ防戦一方だ。
「クルー!!」
そんな状態に業を煮やしたのか、アーテルが大きく翼を広げて宙へと舞った。
・・・アーテルよ。空に逃れるのも確かに手の一つだろうが・・・多分・・・
「スペラ!!」
「ヒヒーン!!」
「クルッ!?」
「・・・やっぱり」
ラーサーの声と共にスペラは空中へと駆け出した。何も無い空中に一時的に足場を作りだし、駆けることができる【空歩】というスキルだ。
・・・アーテルに対抗して召喚した【眷属】なら空くらい飛べるよな。
「飛べない馬はただの馬だからね」
「おいこら」
・・・冗談はさておき、空中まで逃れてもなお追いかけてくるラーサーとスペラ。しかも恐ろしい事にスペラの駆けるスピードはいささかも衰えない。
「スピードは・・・ほぼ互角か。追いつかれはしないが・・・逆に引き剥がす事もできない、か」
「クルー・・・」
そして向こうからはガンガン攻撃してくる。
こっちも反撃の手を考えるが・・・【グランディスマグナム】は通用しないのは確認済み。ライフルで狙い撃つ? いや、相手も高速で動いている以上、狙い撃つのは無理だ。
斬撃を飛ばす攻撃も・・・相殺されるだろうな。そもそもラーサーも同じことができるわけだし。
となると【魔法】での遠距離なんだが・・・正直厳しいな。
ラーサーにはアテナの【大爆発】をも防いだ盾がある。生半可な【魔法】じゃあ効果ないだろう。かといって【魔天の叡智】を使うとMPが・・・【俊天の疾走】が使えなくなるのは厳しい。
となると・・・どうするか。
スペラの移動スピード・・・ラーサーの身体能力・・・【聖剣】たちの性能・・・考えろ、考えるんだ、俺。
ポク、ポク、ポク・・・チーン!
・・・良し、特攻しよう。
「というわけでアーテル、頼む」
「クル!?」
アーテルが、え? 大丈夫? って顔をしているが、大丈夫、大丈夫。
いくら俺だって何も考え無しに突進するわけじゃない。勝算はあるさ。
「俺を信じろ、アーテル!【レーザーダイブ】だ!!」
「・・・クルッ!!」
俺を信じてくれたアーテルはラーサーとスペラ目掛けて真っ直ぐ突っ込む。
「来るか・・・スペラ、【ホーリータックル】」
「ヒヒーン!!」
ラーサーとスペラも受けて経つといわんばかりにこちらに向かってきた。
光をまとい、超高速で駆けるアーテルとスペラ。
ドゴッッッ!!!!
両者の激突は凄まじい衝撃を生んだ。
・・・だが、ここからが本番だ。
アーテルとスペラがぶつかり合った瞬間、俺もラーサーも動きだしていた。
「【聖剣技・・・」
「させん!!」
ラーサーが【聖剣】を振るうよりも早く俺は左手に持った【閃槍アーディボルグ】を突き出していた。この至近距離ならリーチがある槍のほうが有利。
ガキンッ!!
今にも振り下ろされようとする【聖剣】を【閃槍アーディボルグ】が止めた。
今こそチャンス!!
「【グランディスバンカー】セット!!」
俺は右腕に【グランディスバンカー】を装着。さらに・・・
「【ダークバースト】を【魔法付加】!!」
【ダークバースト】は【闇魔法】の一つ。射程は長くないし規模も小さいが威力は抜群。それを【グランディスバンカー】に【魔法付加】したことでバンカーに黒い輝きが宿る。
「・・・!?」
それを見た瞬間、ラーサーの顔が少し歪んだのを見て・・・確信した。
俺はアーテルの背から飛び上がり、ラーサーに迫る。
「どっせい!!」
そして、そのままラーサーに向かってバンカーを打ち込む。
「【聖盾グラウジス】!!」
対するラーサーは・・・盾を取り出した。・・・やっぱりな。
ドガッッッ!!
盾にバンカーが食い込む。・・・【魔法付加】した【闇魔法】属性は消えたようだが、バンカーの威力に押されてラーサーはスペラの馬上から弾きだされた。
・・・ついでに俺も。
「クルッ!?」
「ヒヒン!?」
空中に投げ出された俺とラーサーを見て焦るアーテルとスペラ。
しかし、今の俺たちにはそれに構っていられる余裕は無かった。
「やはり、盾を出したな! 【聖剣】を使わず!!」
「・・・どうやらばれたみたいだね」
【聖剣】は同じ属性の攻撃を大きく軽減させる効果があるはずだ。ならば今のは盾ではなく闇属性の【聖剣】を出していれば俺を迎撃できたはずだ。
・・・持っていれば、だが。
・・・そう、ラーサーは様々な種類の【聖剣】を持っているが・・・闇属性の【聖剣】だけは持っていないんだ。
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