天才と呼ばれる者
戦い方というのは人によって千差万別だ。
素手で戦う者、剣で戦う者、銃で戦う者・・・このゲームの中では【魔法】で戦う者や【眷属】に任せる者だっている。
また、同じ武器やスキルで戦っていたとしても使用者の体格やステータス、経験やクセなどで差が出てまったく同じという事はありえない。
逆にどんな戦い方をするにしても、多かれ少なかれ練習や訓練が必要だ。
拳を振るう時の体重のかけ方、剣を振るう時の重心移動、銃を撃つ時の狙いの定め方などなど一朝一夕にできるようなものじゃない。【魔法】だって試行錯誤すれば精度も上がるし威力も調整できる。【眷属】との連携に関しては言わずもがな、だろう。
訓練を重ねることで無駄をそぎ落とし、動きにキレが増し、型にはまった正確無比な攻撃を行う事ができるようになる。
だからこそ練習や訓練を伴わない、いわゆる素人な戦い方というのはたかが知れていて、動きにキレが無いし、グダグダになることが多い。
・・・というのがいわゆる一般的なの常識だろう。
ただし、何事にも例外はあるわけで・・・
ザザザッ!!
ザザザッ!!
舞台上を駆け回る俺・・・と並走するように追いかけてくるラーサー。
パンパンパンパンパンパンッ!!
走りながらも俺の両手の【グランディスマグナム】が火を噴く。
キンキンキンキンキンキンッ!!
そんな俺が放った弾丸を正確に【聖剣】で打ち落としてなおも追いすがってくるラーサー。
まったく剣で銃弾を弾くなんて漫画みたいなことをしやがって・・・銃は剣よりも強し、じゃないのか?
「君だって同じ事ができるだろう?」
・・・おまけにコイツまで人の心を呼んできやがる。・・・確かにコイツの言うとおりだが。
「君は考えが表情に出すぎだ・・・よ!!」
・・・若干馬鹿にされたような気がしたが・・・走っていたラーサーが突如として大きく跳躍し、襲い掛かってくる。
「・・・!?」
あの【聖剣】を真正面から受け止めるのは・・・【グランディスマグナム】では無理だ。
ガキンッ!!
・・・なので【聖剣】の切っ先ではなく剣の腹を【グランディスマグナム】の銃身で捌く。
「へぇ・・・」
感心したようなラーサーだったが、両手に持った2本の【聖剣】で容赦なく斬りかかってくる。
ガキンッ! パンパンッ!! ガキンッガキンッ! パンパンッ!!
超至近距離で振り下ろされる【聖剣】を側面から銃身で弾く。いかに【聖剣】でもその刃に触れなければ斬られることはない。
さらに隙を見て発砲。
「・・・ガン=カタってやつかい? 随分器用なことをするね?」
しかし、それすらも避けて【聖剣】を振り下ろしてくるラーサー。一体どういう反射神経をしてるんだ、コイツ。
「お前に! だけは! 言われたく! 無い!!」
正確には見よう見真似のガン=カタもどき、だ。そんなスキルは持っていないし、誰かに習った事も無い。なので自前の勘と反射神経を頼りにがむしゃらに捌いているだけだ。・・・これでもかなり必死なんだよ?
ラーサーもスキルを使っている様子は無い。
だが、振り下ろされる【聖剣】は一撃一撃が鋭く、重い。そして・・・予測が出来ない。いや、正確に言えば予測できるものとできないものがある。
いわゆる見切りというのは、相手の攻撃の軌道を予測し回避することを言う。
しかし、ラーサーの剣の軌道は・・・型にはまった予測できる軌道と、そこから外れためちゃくちゃな軌道が混ざっている。
正確で鋭く、絶妙なバランス感覚で体勢も気にせず、こちらの攻撃を避けつつも更なる攻撃を加えてくる。ましてや銃を持った相手に超接近戦を仕掛けられて平然と対処できるなんて・・・どれだけ訓練を積んだとしても難しいはずだ。
そんな巧みさを感じる攻撃の中に、こちらの意表を突く様な型にはまらない攻撃が混じっている。
その落差に戸惑い、見切りが外れる。
おそらく・・・普段の訓練で培った剣術とは別に、ラーサー自身のセンスで相手の隙を突いた行き当たりな攻撃を上手く混ぜてやがるな。
これは・・・訓練どうこうでできるようなものじゃない。
「・・・いわゆる天才・・・ってやつか?」
普通は時間をかけて訓練を行って身に付けることを、勘や感覚だけでできる人間もいる。しかもそれでいて素人のそれとは一線を画すほどキレが鋭く、型にはまらないため予測しにくい。
これだから天才は・・・厄介だ。
シャリンッ!
カシャッ!
そんな攻防を続けていた俺とラーサーだったが・・・ピタリ、と動きを止まる。
俺の目の前には白い【聖剣】の切っ先が、そして俺の持つ【グランディスマグナム】の銃口がラーサーの眉間を狙ったまま静止している。
お互いに少しでも動けば・・・【聖剣】を突き出し、引き金を引く・・・そんな膠着状態だ。
「・・・天才、というのは君もだと思うけどね」
・・・どうもラーサーは俺を過大評価しているみたいだな。
俺は普通に普通な一般人だよ?
・・・観客席から、嘘だー!!って叫び声が聞こえたような気がするが気のせいだろう。
「君は常に相手と自分の戦力を分析し、即座に対抗策を検討、実行する力がある。ピンチに陥った時でも、表向けは焦った風を装っていても・・・心の中は冷静で常に余裕を保っている・・・だから君は手ごわいんだね」
・・・他人に自分を分析されるのってなんか・・・激しく嫌だな。他人の嫌がることを平気でできるなんて、これだから天才って奴は(盛大にブーメラン)。
「だからこそ・・・」
・・・ん? なんか白い【聖剣】が光りだしたぞ?
「僕も本気になる価値がある。【聖剣技:光の剣】」
「うおぁ!?」
白い【聖剣】から伸びた何かをギリギリで避ける俺。
・・・なんだ?・・・【聖剣】の切っ先から光の刃が・・・【ブレイジングセイバー】のように気力の刃で間合いを伸ばすスキルか?
「フッ!」
ラーサーはそのまま切っ先が伸びた白い【聖剣】で攻撃してくる。
「クッ、【バックステップ】!!」
間合いが違いすぎる。これじゃあガン=カタもどきでも無理だ。
「逃がさないよ」
射程外まで逃げ延びたと思ったら、光の刃が伸びてきた。おいおい、随分便利なスキルだな。
・・・だが、距離が出来ればできるほど、刃が伸びれば伸びるほど、剣を振る動作が大振りになる。そんな攻撃は当たらないぞ。
「勿論、これだけじゃない、さ!!」
「!?」
・・・と思ったら光の刃がそのまま光の斬撃となって飛んで来た!
で、でかい。しかも地面をえぐりながら近づいてくる。
・・・食らったらまずいな。
「【俊天の疾走】!【サイドステップ】!!」
俺は一瞬だけ加速。さらに瞬時に真横に逸れることで巨大な光の斬撃を回避した。
「そこだよ」
「!?」
・・・回避したと思ったら目の前にラーサーが!? しまった、誘い込まれた!!
ラーサーは手に持ったもう一つの・・・青銅色の【聖剣】を振り上げ・・・
「【聖剣技:力の剣】!」
そのまま振り下ろした!
これも食らったらまずい!
俺は両手に持っていた【グランディスマグナム】を手放すと、右手を背中に回す。正確には俺の背中にあった・・・地面に突き刺さったままだった【閃槍アーディボルグ】を手に取った。
急いで槍を引き抜き・・・
ガキンッ!!!
ラーサーの【聖剣】を受け止めた。
【閃槍アーディボルグ】には破壊不能効果がある。いかに【聖剣】といえど破壊は出来ないはずだ!
「・・・誘い込まれたのは僕も一緒か。だから君は油断ならないんだね」
そう言うとラーサーは嬉しそうに笑った。
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