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モンスターウィナー

「ゴホッ!ゴホッ!!・・・まったく、相変らずなんて威力だ」


「だう・・・」


巨大キツネに捕まって大ピンチだった俺たちだが、【魔龍】アーテルの起こした大爆発により難を逃れる事が出来た。爆煙が充満していて正確な状況はまだ分からないが、尻尾の拘束が無くなった以上、ただでは済まなかったはずだ。


ちなみに以前、【ヤマタノオロチ】に対して【黒魔の(ダークレイ)殺戮光(デストロイヤー)】を【魔龍】アーテルが放ったときは・・・8つの首が消し飛び、さらに体も半分えぐれていたという、大変グロい状態となっていた。


・・・まさかあの巨大キツネも同じ状態になったのではあるまいな。


少なくとも試合終了のメッセージが出ていない以上、ミーシャはまだ倒せていないはずだが・・・


だんだんと爆煙が晴れていった。


アーテルは・・・居た。


黒いオーラがほとんど無くなっていて、何時ものアーテルのサイズに戻っていた。シルエットも【天龍馬】の形に戻っているが・・・大分小さくなっているが黒いオーラを身に纏ったままだ。


【黒魔の(ダークレイ)殺戮光(デストロイヤー)】は溜めに溜めまくった黒いオーラを一気に放出するスキルだ。当然放ったオーラは消費されるためアーテル自身が弱まるいわば自爆に近いスキルだ。


「・・・アーテル」


「・・・」


・・・こちらの声かけに反応が無い。今だ正気を失ったままっぽいな。


【魔龍覚醒】の呪縛に囚われたままのようだ。


アーテルを解放するには一刻も早く試合を終わらせないといけない。


・・・で、肝心のミーシャと巨大キツネは・・・!?


・・・居た。


9本の尻尾全てに包まって、まるでボールのように丸まっている巨大キツネの姿がある。


・・・そうか、爆発の瞬間、俺たちへの拘束を解いて9本の尻尾全てを防御に回して、しのいだのか。そういえばいつの間にか雨も吹き飛んでいる。


その9本の尻尾がゆっくりと解き放たれ、その下からミーシャと・・・巨大キツネ本体が現れる。


「・・・キュウちゃん」


「・・・コーン・・・」


ミーシャの方は巨大キツネが守りきったようで無傷のようだが、巨大キツネの方は・・・ボロボロだ。


さすがの巨大キツネもアーテルのあの攻撃を受けて無傷とは行かなかったようだ・・・むしろ、あの攻撃食らってもまだ生きている事の方が驚きだが。


・・・ん? なんだ?


巨大キツネは光りだした?


・・・いや、違う? 巨大キツネが・・・消えていくような・・・だがあれは【転送】や【送還】の光じゃない。


「・・・そう・・・キュウちゃん。時間切れなんですね?」


「・・・コン」


時間切れ・・・そうか。巨大キツネの【真体】化には制限があったのか。LPの消費か神の【加護】の制限なのかわからんが・・・長時間は維持できない、と。


それが俺たちの・・・いや、アーテルのおかげで時間切れまで粘る事ができたと言う事か。


「コ~ン・・・」


巨大キツネは・・・申し訳なさそうに鳴いている。


いや、実際に申し訳ないと思っているのだろう。勝つために奥の手である神の【加護】まで使ったのに役目を果たすことが出来なかったのだから・・・


・・・しかし、だ。


まだ・・・試合は終わっていない。


「クルゥアアアアア!!!」


ほら、アーテルがまた黒いオーラを纏いだした。まだまだヤル気らしい。


・・・いや、違う? 黒いオーラの隙間から見えるアーテルの目が・・・少しだけ正気を取り戻しているように見える。


そして・・・まだ終わってない!と言わんばかりに巨大キツネを睨みつけている。


「・・・コン!!!」


それを見た巨大キツネは・・・


「キュウちゃん?・・・はわわわわ!?」


なんと自分の頭に乗っかっていたミーシャを指先で掴み、地面へと降ろした。・・・うーん、サイズ的になんか指人形をつまみあげているようにしか見えないな。


ミーシャを地面に降ろした巨大キツネは今にも消えそうな光を発しながらもアーテルを強く睨みつける。


「・・・キュウちゃん?・・・そう、最後まで戦うのですね」


・・・ふむ、どうやらアーテルも巨大キツネもこのまま終わる事を良しとしないみたいだな。


・・・ここで手助けに入るのは無粋、か。


「良いだろう! 行け! アーテル!!」


「思いっきりやっちゃってください! キュウちゃん!!」


それぞれの主からの声援を受けた【眷族】たちは・・・


「クルゥアアアアアア!!!!」


「コォオオオオオオン!!!!」


お互いに戦意とオーラを漲らせながら、高速で向かいあい・・・


ドオオオオオン!!!!!


スキルも何も無く、ただただ互いの体をぶつけ合う。


ただの体当たり・・・それが死力を尽くした2体の最後のぶつかり合い。


それを果たした2体の【眷属】は・・・ゆっくりと倒れる。最後の力を使い果たしたかのように・・・


そして・・・光に包まれて消えていった。


「・・・」


「・・・」


・・・アーテルと巨大キツネ・・・キュウちゃんは倒れ、舞台上に残されたのは俺とミーシャだけになった。


「・・・どうした? もう他の【眷属】は呼ばないのか?」


主対決、と行きたい所だがミーシャは無傷、俺はボロボロといった様相だ。本来なら勝負にならないだろうが、ミーシャは【眷属】特化の戦闘スタイルだからミーシャ自身の戦闘力は低いはずだ。なので今の俺でも倒せる・・・とは思うが、問題は彼女の【眷属】だ。


彼女の【眷属】の中でも最大戦力であるキツネを退けたとはいえ、彼女には他にも【眷属】はいるだろう。


それを今【召喚】されるのは非情にまずい。


本来なら【召喚】される前に速攻で倒すのが理想だったんだろうが・・・機を脱してしまった。


膠着状態の俺とミーシャだが・・・こっちが圧倒的に不利だ。


迂闊に動けばやられる。


そう俺は考えていたのだが・・・


「・・・残念ながら、もうLPが残っていません。キュウちゃんの【召喚】、【成体】化、そして【真体】化で、すっからかんです」


・・・なんか自分から力が残ってません宣言し始めたぞ?


確かに今思えばあの巨大キツネに加えて他の【眷属】も【召喚】していれば俺たちを楽に全滅させられていたかもしれない。それをしなかったのは余力が無かったからか。


・・・しかし、自分からそんなことを告白してくるとは・・・ギブアップ宣言か? それとも何かの罠?


「・・・諦めたんならギブアップして欲しいんだが?」


発破をかけた俺が言うのもなんだが・・・その方が俺の心情的にも楽だ。


「・・・そ、それだけは出来ません!!」


しかし、俺の提案はミーシャに一蹴されてしまった。


「こ、ここまで頑張ってくれた【眷属】たちのためにも、わ、私が諦めるわけには行かないです!!」


・・・心意気は立派なんだが・・・足が震えてるよ? やっぱりミーシャ自身は戦闘経験皆無なんだろ?


「・・・そうか。しかし、負けられないのは俺も同じだ。手抜きはしない・・・アウル!!」


「だう!!」


俺はミ(・)ー(・)シ(・)ャ(・)の(・)頭(・)上(・)に(・)い(・)た(・)アウルに声をかける。


「・・・ほえ?」


アウルの声を聞いて上を向くミーシャ。


やはり【精霊憑依(レイ・ポゼッション)】を解いて別行動をしていたアウルには気が付かなかったようだな。


・・・ん? いつ解除したのかって? アーテルが爆発して直ぐだよ? ほら、アウルとの会話も俺の体内からじゃなく普通の会話になっていただろ?


本当は巨大キツネの尻尾に捕まった時に【精霊憑依(レイ・ポゼッション)】を解除してアウルを単独でミーシャに向かわせようと思っていたんだが・・・結果オーライ!!


そしてアウルは・・・


「だうっ!!」


ポコンッ!!


アウルは自ら作り出した光の剣・・・【オービットソード】の一本を持ち、その剣の腹(・)でミーシャの頭をこ(・)ず(・)い(・)た(・)。


「あうちっ!!」


頭をこずかれたミーシャは・・・パタリと倒れこんだ。


そして・・・光となって消えていく。


『勝者(ウィナー)!! アルク!!!』


さらに続く俺の勝利宣言。


・・・ミーシャよ、いくら【眷属】特化とはいえ・・・もうちょっと鍛えようぜ。


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