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モンスターデビル

アーテルの全身から大量のオーラが噴き出す。


黒く、深く、そして禍々しいオーラが・・・大量に。


「・・・なんなのです? ・・・キュウちゃん?」


その様子を訝しげに見つめるミーシャと、


「コーンッ!!」


明らかに警戒している巨大キツネ。


アーテルから湧き出した黒いオーラはアーテル自身を包み込んでもなお、どんどん膨れ上がりその姿を変えていく。


その姿は・・・まさしくドラゴン。


生身ではなく黒いオーラで形成された手、足、体、翼、そして頭部・・・シルエットこそドラゴンだが、禍々しいオーラで形成されたその姿は不安定かつ歪だ。


まさしく【魔龍】である。


アーテルの【種族スキル】、【魔龍覚醒】はアーテルのHPが1割を切ると発動する暴(・)走(・)スキルだ。


パワー、スピード、防御力・・・各ステータスが桁違いにアップする反面、アーテルの意識が無くなってしまうようで見境無く暴れまわる危険なスキルだ。


さらにアーテル自身が【魔龍】のオーラに覆われ、その形を自由に変えていく・・・あんな風に巨大化することも可能だ。


・・・ああなったアーテルが【ヤマタノオロチ】と真っ向から大激突した事は今でも忘れない。あの時は戦場となった樹海が、辺り一面焦土と化してしまったんだよなぁ。


一応、フレンドリーファイア無効の設定は生きてるようで味方である俺たちにはダメージは無いのだが・・・普段のアーテルなら絶対に行わない、味方も巻き込むような攻撃を平然と行ってしまう。


意識が無いせいか俺の指示も全然聞かないし【送還】も出来なくなる。止める方法が今の所無いので力尽きるのをただ待つのみである。


・・・あの状態のアーテルは確かに激強なんだが、理性が無いのはいただけない。ただ本能に暴れまわるだけの野獣みたいだし・・・やっぱり男の子はクールに決めないとな。俺のカッコかわいいアーテル、カムバーック!!


「クルァアアア!!!!」


そんな俺の願いもむなしく、巨大キツネに勝るとも劣らない大きさの【魔龍】と化したアーテルがとんでもない声量の叫び声を発した。


「コォオオオン!!!!」


巨大キツネも負けじと吼える。


かたや【魔龍】と化したアーテル、かたや九尾の狐と化したキツネ・・・キュウちゃん。


・・・怪獣大決戦だな、これは。


しかし、俺にはもう止める手段が無い。


ただでさえ九尾の狐と化した巨大キツネには手が付けられなかった以上、不本意だが、魔龍】と化したアーテルに託すしかない。


怪獣たちの戦いは・・・まずは巨大キツネが動いた。


巨大キツネの尻尾の一本が【魔龍】アーテルの体に突き刺さる。・・・いや、正確には突き刺さったように見える、だ。


【魔龍】アーテルの体はオーラの塊、突き刺そうとしても煙を散らすかのように霧散してしまう。


逆に・・・


「クルァア!!」


【魔龍】アーテルの爪が巨大キツネを襲う。オーラが集まり、異常な大きさにまで膨れ上がった黒い爪だ。


「キュウちゃん!【二尾:尾盾】!!」


「コ~ン!!」


【魔龍】アーテルの攻撃を尻尾でガードした巨大キツネだが・・・その尻尾には痛々しい爪の跡が残る。


「・・・コーン・・・」


「・・・まさか、キュウちゃんの尻尾が・・・」


ミーシャが戦慄している・・・俺もだが。


黒いオーラを広く散りばめればダメージを受ける事は無く、逆に一箇所に集中させれば実体化し、物理攻撃の手段となる。それが【魔龍】と化した今のアーテルの特徴だ。


【魔龍】アーテルを倒す方法は2つしかない。


【魔龍】アーテルの体を構成しているオーラを完全に散らせるか、もしくは・・・


「キュウちゃん! どこかに本体がいるはずです! それを狙って!!」


「コンッ!!」


そう、【魔龍】アーテルの体内・・・黒いオーラのどこかにいるアーテル本体を討つことだ。


「させるか!【ブレイジングセイバー】!【マキシマムスラッシュ】!!」


しかし、そんなことをさせる俺ではない。


怪獣大決戦を横から邪魔するようで悪いが、むざむざとアーテルがやられるのを黙って見てはいられない。


・・・とはいえ、サイズが違いすぎる。今の俺では尻尾を1本弾く程度で精一杯だ。


「クルァアアア!!」


そして俺の援護などお構いなしに無茶苦茶に攻撃を仕掛ける【魔龍】アーテル。


やはり意思疎通できないと厳しいな。連携もくそもあったもんじゃない。


「【三尾:狐雷】!【三尾:狐嵐】!【三尾:尾断】!!」


巨大キツネは尻尾から雷や竜巻を発生させたり、尻尾で斬りつけたりとこっちも滅茶苦茶である。


もう既に俺のことすら眼中に無いような気がする。・・・なんか屈辱。


「キュウちゃん、落ち着いて!・・・きゃあ!?」


とうとう怪獣同士で取っ組み合いが始まってしまった。


お互いに爪で切り裂き、牙を立てて食いちぎろうとする、いわば獣同士の乱闘だ。


しかし、それをあの巨大サイズでやられてはたまったもんじゃない。


「おっと!?」


危うく俺まで巻き込まれそうになる。・・・【魔龍】アーテルはともかく、あの巨大キツネに押しつぶされたら・・・それだけでぺしゃんこになって終わってしまうんじゃないだろうか?


『・・・だう』


ほら、俺の中のアウルもそれだけは嫌って言ってる。


そして巨大キツネの頭の上にいたミーシャだが・・・


「はわわわわ~~!!??」


・・・ころころ転がされとる。まあ、あんだけ急激に動かれては無理も無いが・・・むしろ良く振り落とされないな。


「・・・コン!?」


あ、巨大キツネが気づいた。慌てて【魔龍】アーテルから距離を取った。


「う~・・・目が回りました・・・もう、キュウちゃん! 無茶しちゃ駄目でしょ!!」


「・・・コ~ン・・・」


・・・反省したような声色を出す巨大キツネ。・・・いや、そんな所にいるミーシャが悪いんじゃないか、と思わなくも無い。


・・・まあ、振り落とされた所を狙おうと思っていた俺が言えることじゃないな(笑)


「一気に決めてしまいましょう、キュウちゃん!【八尾:狐雨】!!」


「コ~ン!!!」


!?・・・ヤバイ、またあの幻覚の雨か!!


八本の尻尾が空を差すと・・・今度は豪雨になった。


さっきとは比べ物にならないほどの規模と勢いの雨!


物理的にも視界がほとんど無くなる。


ミーシャと巨大キツネの姿は・・・既に無い。


「チィ!? 【エナジーフェザー】!!」


俺は【エナジーフェザーマント】で飛翔。一気に空へと駆け上った。


「クルァアアア!!!」


【魔龍】アーテルは状況が理解できないのか何も無い場所で暴れまわっている。


あの状態のアーテルを置いて行くのは心苦しいが、このままじゃ共倒れだ。先ほどのようにこの雨の範囲外から巨大キツネを見つけて幻覚を解除しないと。


「させません!」


「なに!?・・・グッ!?」


すると直ぐ傍で声が聞こえたかと思うと急に何かに縛り上げられていた。


見ると・・・巨大キツネの尻尾に締め上げられていた。


「【一尾:尾縛】です! アルクさんに邪魔はさせません!!」


・・・さすがに俺の行動も読まれていたか・・・てっきり【魔龍】アーテルを倒そうと躍起になるもんだと思ったんだけどな。ミーシャのほうが冷静だったようだ。


「このままアルクさんを倒せば試合終了です!さあ、キュウちゃん!!」


一気に終わらせようとするミーシャだが・・・肝心の巨大キツネのほうは【魔龍】アーテルの方を見てる。いや、睨みつけるといった方が正しいか。


「・・・? キュウちゃん?」


その様子をおかしく思ったのだろう、ミーシャも【魔龍】アーテルの方を見る。


【魔龍】アーテルはと言うと・・・また形が変わっていた。


ドラゴンのシルエットから黒い巨大球体のような形へと。


あれは・・・やばいな。


「あー、ミーシャ。逃げたほうが良いと思うぞ」


既に手遅れだと思うが一応、警告する。・・・なんせ拘束されている俺には何も出来ないからな。


「アルクさん? ・・・あれはなんですか?」


疑問を素直に聞けるのは素晴らしい事だと思うが敵にする質問じゃないよな、それ。・・・俺が言えることじゃないが。


「ああなっちまったアーテルの・・・必殺技?・・・自爆技と言ったほうが正しいかも知れないが」


「自爆って・・・」


全てを悟ったかのように青い顔になるミーシャ。


だが、ゴメンよ。


俺だってアーテルにそんな事させたくは無いんだが・・・俺にも止めることは出来んのよ。


「・・・ちなみにスキル名は・・・【黒魔の(ダークレイ)殺戮光(デストロイヤー)】だ」


「クルゥァアアアアアア!!!!!!!」


直後、黒い球体は・・・舞台全域を巻き込むほどの大爆発を起こした。


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