モンスターメモリー
距離を取って様子を伺う。
俺はアーテルを、ミーシャはカメにゴリラ、カマキリを【召喚】している状態だ。
・・・ミーシャはおそらく【還元送還】とやらを使ってLPを回復している。でなければどんなに【召喚】に特化していたとしてもあれだけの【眷属】を【召喚】したり【送還】したり、維持したり出来ないはずだ。
還元という言葉からして【送還】した際に【眷族】からLPを吸収しているといったところか・・・ということは【送還】される前に【眷属】のHPを0にして倒してしまえば【還元送還】を使うことができず、LPの回復も出来ないはずだ。
それはアーテルがコウモリにダメージを与えた所で・・・要するにコウモリが倒されそうになった所で【還元送還】で逃がしたことからも想像できる。無傷だったネズミを【送還】したのも倒される前に、ということだろう。単純に分身のしすぎで力尽きていただけかもしれないが。
問題はその【還元送還】でどれくらいのLPが回復するのかだな。
全快・・・というわけでは無いだろうが・・・別の【眷属】を【召喚】できるくらいには回復していると思って良いだろう。つまり、【眷属】の入れ替えは何度でもできってわけだ。
それを念頭に対策を考える必要があるが・・・少なくともミーシャのLP切れは当てにできないな。
そうなると・・・ミーシャの【眷属】を倒すのは格段に難しくなる。ミーシャ側からすればある程度ダメージを受けた時点で【眷属】を引っ込めて交代すれば良いだけの話だからな。
理想的なのは一撃でミーシャの【眷属】を仕留めることだが・・・生半可な攻撃じゃそれも無理だろうな。カメの盾の頑丈さやゴリラ、カマキリのパワーからしてミーシャの【眷属】はそれなりのレベルだ。決して弱くは無い。
【勇天の一撃】や【魔天の叡智】を使えばそれも可能だとは思うが・・・そもそもこれらは一発勝負のスキルだ。あと何体控えているか分からないミーシャの【眷属】相手に使用するのは・・・自殺行為だ。
【眷属】は無理でもなんとか隙を突いてミーシャ本体を一撃で仕留めることを考えると・・・最低でもどちらかは取っておくべきだろうな。
となると後、俺が打てる手は・・・と思案していると・・・
「・・・そのペガサスみたいな子がアルクさんの【眷属】ですか! ようやく間近で見られました!!」
・・・なぜかミーシャはキラキラした目でアーテルを見ている。うーん、これまた今までのプレイヤーには無い反応だな。だが、ミーシャも自分の【眷属】をちゃんと紹介してくれてたしな・・・頼んだわけじゃないけど。
こちらも紹介しないのは失礼か。
「・・・【天龍馬】のアーテルだ。よろしくな」
「クルッ!!」
こんな時に何やってるんだろうと思わなくも無いが礼儀には礼儀で返さないとな。
あとこんな時でも元気良く挨拶するアーテルは大物だなと思った(親バカ的思考)。
それを見たミーシャの目のキラキラが増した気がする。
・・・モンスタークランである【モンスターイズライフ】のリーダーなだけあってモンスター好きなのか。それにアーテルは激レアな種族だから余計に珍しいのかも知れない。
「感激です!以前見かけた時から、是非お会いしたいと思っていました!!」
・・・?
以前見かけた? 一体何の話だ?
「・・・どっかでニアミスしたのか? 俺のほうは覚えが無いんだが・・・」
少なくともこれだけ強力な【眷族】を連れている奴がいたら絶対覚えていると思うが・・・
「はい! かなり前ですけど私がいたとある街の上空をすんごいスピードで飛んでいったのを見かけました!!」
・・・そういえば、そんな事があったような気が・・・確か初めて【成体】化したアーテルの力を試した時だっけ?
「その後、街に入ってきた皆さんの連れていた【眷族】たちを見て・・・私もモンスターの可愛さに目覚めました!!」
・・・そういえばアーテルたちを目撃した一部のプレイヤーが掲示板で騒いでいたってラングから聞いたような・・・案外どこで誰が見ているのか分からないもんだな。
・・・ん? ってことはその後にミーシャはモンスターの【眷属】を集め始めたってことか?
「・・・ということは【眷属】に関しては俺のほうが先輩と言う事か・・・これは意地でも負けられなくなってきたな」
・・・既に色んな面で追い抜かれている気がするが気にしてはいけない。
「私だってモンスター愛に関しては誰にも負けませんよ!!」
・・・モンスター愛で競ってるわけじゃないんだけどな。
・・・いかん、ミーシャのペースに巻き込まれている。今は試合に集中しないとな。
ミーシャの【眷属】は3体。
とくにあのカメが厄介だ。絶妙なタイミングでミーシャや他の【眷属】を守ってやがる。おまけに【魔法】を跳ね返してしまう。あのカメから倒そうにもそのカメの前にはゴリラをカマキリがいるわけで・・・ポジショニングも完璧だな。
ミーシャ本体を狙うのも現状リスクが高い。
やはりまずはミーシャの【眷属】の数を減らすことを考えるべきだな。
ミーシャに【還元送還】を使わせず倒す事を考えると・・・アウルを召喚し、3対3で一気にミーシャの【眷属】3体を倒し、そのままミーシャに【召喚】の隙を与えず仕留めるというのはどうだろうか?
なんて考えていると・・・
「【限定召喚】!来て!ディーくん!!」
「ホロロロロ!」
・・・ミーシャに4体目の【眷属】を【召喚】されてしまいました(泣)。
さらに現れたのはゴリラやカマキリと同じくらいの大きさの巨大なシカ。そのシカ自体もでかいがそれよりもシカの頭から生えている角もでかい。おまけに虹色に光っている。
「【エレメンディア】のディーくんです!!」
・・・律儀に教えてくれるのはありがたいんだが・・・ミーシャよ。お友達を紹介してるんじゃないよな? 今、試合中だよ? 少なくとも俺たちは君のお友達に痛い目に合わされたんだが?
軽いノリで紹介してくるけど・・・どいつもこいつも厄介なんだよなぁ。
「ディーくん!【エレクトリックホーン】!!」
「ホロロー!!」
ミーシャの言葉を受けたシカは、その角から電撃を放ってきた。
「アーテル!」
「クルッ!」
俺はアーテルの背に乗って、上空に逃れて回避した。
「ゴーくん!【ストロンガーパンチ】!!」
「ゴアアア!!」
おっと、気力の拳が飛んできた。あのゴリラ、俺の【ジェットパンチ】みたいなこともできるのか。
「マンちゃん!【リッパーサイズ】!!」
「キシャアア!!」
今度は斬撃・・・カマキリもかよ。両手の鎌から次々と斬撃が放たれてくる。
「ディーくん!【サイクロンホーン】!!」
「ホロロー!!」
そしてトドメと言わんばかりにシカから風の刃が飛んでくる。
・・・ミーシャの奴、俺たちが空中に逃れた場合のことまで想定していたのか。それを踏まえた上で遠距離攻撃ができる【眷族】の布陣に・・・
「アーテル!」
「クルーッ!!」
幸いと言うべきか、攻撃のスピードはアーテルよりも遅い。
今は避けられているが・・・いずれ物量で押し込まれるな。
アーテルを召喚していられる時間も限られている。
・・・さあ、反撃と行こうか。
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