モンスターパニック
「【ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」
試合開始早々、開幕パンチである。
いたいけな少女に向けて放つような技ではないことは百も承知だ。
しかし遠慮はしない・・・どうせ効かないだろうし。
「【限定召喚】!来て! トーちゃん!!」
「・・・ボエー」
ミーシャが召喚したのは先ほどの試合でも見せたデッカイ亀だった。見た目のフォルムは亀そのまんまだが、象のように巨体な上に鋼鉄のように硬そうな甲羅をしょっている。
その亀はミーシャを背に庇うように鎮座し・・・
「トーちゃん!【プロテクトシェル】!!」
半透明の甲羅型の盾を空中に作りだして俺のパンチを防いだ。
・・・ほら、やっぱり効かなかった(悲)。
「俺のパンチでビクともしないとは良い【眷属】じゃないか、ミーシャ」
若干の皮肉と負け惜しみを込めて亀を褒める俺。
「ありがとうございます!【プロテクトトータス】のトーちゃんです!よろしくお願いします!!」
「・・・ボエー」
しかし、俺の皮肉も負け惜しみもミーシャには通用しなかった所か、元気で明るい声で亀の紹介までされてしまった。
・・・うーん、純真無垢な少女に比べて俺の心はひどく荒んでしまっていたらしい。ミーシャが眩しく見える。
・・・にしてもトーちゃんて(笑)。多分トータスからとったんだろうが・・・父ちゃんみたいだな。
ま、まあ、それはともかく俺が言ったことは本当だ。俺が見た試合では【魔法】を跳ね返していたが・・・物理攻撃を防ぐ事も出来るのか。しかも硬い・・・生半可な攻撃じゃあ通用しないかな。
「今度はこっちから行きます!【限定召喚】!マーくん!!」
「チュー!!」
なんて暢気に考えてる間にミーシャが召喚したのは・・・
「・・・ネズミ?」
ミーシャの掌に乗るサイズの小型の・・・ネズミだった。
見た感じ普通のネズミだが・・・これまで大型のモンスターばかり召喚していたミーシャにもこんな小型の【眷属】がいたのか? しかし、そんな小さいネズミで一体何をする気だ?
「この子は【マッシブマウス】のマーくんです! さあ行って!マーくん!!」
「チュー!!」
ミーシャの掌から飛び降りたネズミが俺に向かって走ってくる。
・・・中々素早いがたった一匹でなにが・・・
「マーくん!【マッシブボディ】!!」
「「「「「チュー!!!!」」」」」
「増えたー!?」
まるで分身を生み出すがごとくネズミの数がどんどん増えていく!
10・・・20・・・30・・・駄目だ!数えきれない!!
俺は【霊刀ムラクモ】、【妖刀オロチ】を取り出し・・・
「【双刃・疾風連斬】!!」
向かってくる大量のネズミたちに対して、俺は大量の斬撃を飛ばして迎撃していく。
斬撃を食らったネズミたちは・・・その場で煙のように消えていった。
・・・分身? 幻? いや、手ごたえが・・・
「あいてっ!?」
斬撃の隙間を通り抜けた一体のネズミに体当たりを食らってしまった。
・・・ダメージがあるという事は実体があるということか? しかし・・・今体当たりしてきたネズミも消えてしまった・・・分身と実体の中間みたいな感じ? 攻撃をするか、攻撃を受けるまでは実体化している分身といったところかな。
・・・ということは・・・この大量のネズミたち全部からダメージを受けるということか!
「ぜんたーい!とつげきー!!」
「「「「チュー!!!!」」」」
ミーシャの号令で次々とネズミたちが突っ込んでくる。
おいおい、ネズミの数がどんどん増えてってね?
俺も負けじと斬撃を放つも、斬り消していくスピードよりも増殖して行くスピードの方が上っぽい。その数、ざっと見た感じ50匹以上・・・
・・・見る人が見たら恐怖な画だな。このまま増えていったら・・・まさか舞台上全てがネズミで埋め尽くされるなんてことは・・・ないよな?
そんなことになったら逃げ場が無くなるぞ。
「ああ、もう!【結晶の障壁】!!」
俺は全周囲に結晶の壁を作り、ネズミの侵入を防いだ。
ふぅ、これで一安心・・・じゃないな。結晶の壁にどんどんネズミたちが突進してくる。一匹一匹のダメージは大したことは無いみたいだが・・・これだけの数が積み重なったらいずれ壊されるのは自明の理・・・悠長にはして居られないな!
俺は結晶の壁の上までジャンプし、着地。
さらに【妖刀オロチ】を仕舞って【グランディスマグナム】を左手に装備。
「【グランディスマグナム】バスターモード・・・シュート!!」
バスター砲でネズミどもを一気になぎ払う!
ネズミ一匹一匹の防御力は無いに等しいようだ。数は多いが広範囲攻撃なら簡単に・・・
「トーちゃん!!」
「・・・ボエー!!」
と思ったら甲羅型の盾に邪魔された。
あの亀野郎、盾を遠距離に出す事ができるのか!?
・・・だが盾は一個だけ!
俺は【霊刀ムラクモ】を仕舞い、今度は両手で【グランディスマグナム】のバスター砲を発射。
片方は盾に防がれるが、もう片方のバスター砲でネズミどもをなぎ払っていく。
やはりあの甲羅の盾、一度に一個しか出せないらしいな。
それにネズミたち。
大量の分身たちの中におそらく本体が混じっているはず。これだけ入り乱れているとどいつが本体かは見分けはつかないが・・・こうしてネズミたちの数を減らしていけばいずれ本体にたどり着くはずだ。
・・・と、思っていた時期が俺にもありました。
「【限定召喚】!来て!バーくん!!」
「キーキー!!」
「えぇ!?」
ここに来てさらに召喚、だと!?
ミーシャの頭上に飛んでいるのは・・・でっかいコウモリ!
「【アコースティックバット】のバーくんです!!」
「キー!!」
わざわざ紹介どうも! 出来ればこれ以上【眷属】を増やさないでくれるとありがたい。
・・・アコースティック?
「バーくん!【アコースティックブレス】!!」
「キーーー!!!!」
うわっ!何だこの音!?
コウモリの鳴き声・・・超音波か!?
耳がキーンっとなって・・・体がぐらつく・・・まずい、立ってられない。
「クッ!?」
バンッ!バンッ!バンッ!
コウモリを実弾モードで狙い撃つも・・・当たらない。
あんなでかい的を俺が外すとは・・・平衡感覚を鈍らせる状態異常か!
「ならばバスターモード!!」
今度はバスター砲で狙い撃つ。これなら多少照準がずれても・・・と思ったら亀の盾に防がれた・・・ですよね。
「ちぃ!?」
俺は逃げるように【結晶の障壁】で作った壁の中に避難した。
さらに結晶で作った天井でフタをし、コウモリのブレス・・・超音波を遮断した。
「・・・ふぅ、なんとか戻ったか」
コウモリの超音波が聞こえなくなった所で平衡感覚も元に戻ったようだ。
しかし・・・一歩外に出ればあの超音波の餌食だ。
かといって篭城していても意味が無いし・・・今もネズミたちの猛攻を受けていて結晶の壁ももうすぐ壊されそうだ。
何時ものことながら大ピンチだ・・・さてどうしよう?
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