前を向いて歩こう
===転送===>観客席
ラーサーとの試合に負けた私とレオーネ(【幼体】)は観客席まで戻ってきていた。
「ただい・・・アルク、何してるの?」
戻ってきた私たちの前になぜか両手を大きく広げたアルクが待ち構えていた。
「・・・負けて辛いだろうから俺の胸で慰めてやろうかと」
・・・アルマの時と同じボケね。
「・・・レオーネ、アルクが慰めてくれるって」
「がお♪」
私に言われたレオーネが嬉しそうにアルクに飛び掛かったわ。
「いやいや、レオーネじゃなくて・・・おい、なぜ【成体】化する?・・・おわぁ!?」
レオーネに押し倒されてるアルクを無視して皆の元へ向かう。
「アテナさん、お疲れ様なのです!!」
「よく頑張ったのだ」
「ナイスファイトっす!!」
「相手のラーサーさん、強かったですね」
アーニャちゃん、アヴァンくん、アシュラちゃん、アスターくんがそれぞれに慰めの言葉をくれる。
そして・・・
「ごめんね、アルマ。負けちゃった」
アルマの分まで頑張ろうと思ったけど・・・現実は厳しかったわ。ゲームの中だけど。
「それは仕方がありません。勝負は時の運とはいえ、ラーサーさんは本当に強かったですからね。アテナも健闘したと思います。・・・まだまだ精進が必要ですね。私もアテナも」
私たちの健闘を称えつつ、前向きな言葉をかけてくれるアルマ。
・・・アルマはもう、試合に負けたことは気にしていないのね。
勝負は勝負、禍根は残さないってアルクは言ってたけど・・・実際、負けたことは悔しい。負けたのは単純に私の実力不足だけど、あの時こうしていれば、この時こうしていれば、と後から考えてしまう。
「・・・負けたことは恥じゃない。負けたことを受け入れ、次に生かせればもっと強くなれるぞ」
・・・レオーネに押し倒されたままのアルクがなんか名言みたいなことを言ってる。
次に生かす、か・・・そうよね。いつまでもくよくよしていても何にもならないし・・・前を見て歩かないと!!
・・・まずは私と一緒に頑張ってくれたレオーネをねぎらわないとね。
そう思って私はレオーネの頭を撫でた。
「いや・・・助けてくれない?」
レオーネの下敷きになってるアルクが何か言ってたけど・・・レオーネをねぎらうのが先よね。
===視点切替===アルク
・・・ふむ、アテナはもう負けを引きずってはいないようだな。これならアテナはもっと強くなれるだろう。
・・・にしてもラーサーは強かったな。というかあの【聖剣】の数、何?
【聖剣】ってそんな簡単に手に入って良いのか? いや、簡単ではないだろうが・・・あんな数揃えられて良いのか? 【聖剣】って希少なんじゃないの?
「うむ、あの【聖剣】はワシにとっても興味深いのう」
同じく試合を見ていたガットも興味深々だ。【鍛冶師】の血が騒ぐのだろうか?
・・・そういえばラーサーとシャンテの装備を作ったのはコイツじゃなかったっけ?
「・・・言っておくが【聖剣】やら【聖盾】やらはワシが作ったものではないぞい。ワシがラーサーにくれてやったのは長剣1本と鎧のみじゃ。長剣も【聖剣】とは全く形が違うわい」
・・・ベルバアルの【魔剣】のように後天的に変化したものではない、ということか? 純粋にどこからか入手してきたものということか。しかしあの数をどうやって・・・
「そうだね。僕たち【インフォガルド】にも【聖剣】の情報はないよ。なのにあれだけの数をラーサー一人で揃えられるというのは少々不自然だね。」
ラングの奴も不思議顔だ。・・・若干悔し気なのは【聖剣】の情報が自分のところににないからか。
「・・・一人で、とは限らないんじゃないか? ラーサーは【双星騎士団】のリーダーだろ? クラン総出で探し回った【聖剣】をリーダーが代表して持ってるのかもしれないぞ。・・・もしくは【聖剣】を入手するためのレイドクエストのようなものがあってそれを周回したとかな」
俺が持っている【霊刀ムラクモ】や【妖刀オロチ】も【ヤマタノオロチ】戦の報酬として手に入れた物だ。何度も周回すれば複数入手も可能だし、そのレイドクエストの情報を独占しているのなら、他の連中が情報を知らないのにも納得がいく。
ただ、トーナメントに参加しているラーサー以外の【双星騎士団】の連中が【聖剣】を持っている様子はなかった。つまり【聖剣】自体、数は無いわけだ。
とはいえ試合を見る限り、ラーサーが【聖剣】を5本持っていることは確定だ。自力で5本見つけたのなら全部自分で所有していてもおかしくないが、クランとして入手したのなら・・・メンバーで分けたりしないのだろうか?
・・・まさかリーダー権限でメンバーから【聖剣】を巻き上げたんじゃないだろうな?【双星騎士団】は実はブラックなクランだったり?
・・・さすがにそれはないか? そんなことがあったら通報ものだし。
自力で入手したか、優勝するために他のメンバーから託されたと考えるのが妥当だろう。
どちらにせよ・・・勝ち上がっていけばぶつかる相手には変わりないか。俺がラーサーとぶつかるのは・・・準決勝か。俺もラーサーもそこまで勝ち残れるかは不明だが・・・今のうちに対策を立てとかないとな。
まあ、まずは次の試合・・・ミーシャに勝たないと、だけどな。
「・・・にしてもアテナ君が負けたのは残念だったね。やっぱりこのトーナメント強豪ぞろいみたいだ」
「これでベスト8が揃ったわけじゃが・・・そうそうたるメンバーじゃのう」
アテナの試合が終わったことで最終第一回戦がすべて終了し、ベスト8が決まった。次が最終準々決勝になる。
「あら? 私の試合で終わったってことは・・・Bグループ側の試合はもう終わってるってことよね」
・・・Aグループ側の試合に参加していたアテナは当然ながらBグループ側の試合は見れていない。
Bグループ側の試合は、【ディアボロス】の副リーダー、レシトリーと全身真っ白男、カオスの試合・・・だった。
「・・・」
「・・・」
ラングもガットもなぜか無言になる。
「・・・?」
その様子に首を掲げるアテナ。
・・・仕方がない。俺が代わりに答えて進ぜよう。
「Bグループ側の試合はとっくに終わったぞ・・・開始5分くらいでな」
「・・・え?」
驚くアテナ。無理もない。アテナ自身の試合も含めてこれまでの最終戦の試合は平均で40~50分くらいかかっている。
この最終戦に参加しているのは当然ながらトーナメントを勝ち残ってきた猛者ぞろいだ。そうそう簡単に倒されるようなプレイヤーなどいない・・・はずだったんだがなぁ。
ましてやレシトリーはベルバアルがリーダーをしている【ディアボロス】のメンバーだ。ゲームを始めたばかりの頃とは俺たちとも戦ったことがあるし、その実力は推して知るべし、だ。
ただ、カオスには通用しなかった。
レシトリーが放つ【魔法】を次々と切り裂き、レシトリーが使う鞭にはかすりもしなかった。
結果、あっという間に距離を詰めたカオスはレシトリーを一閃。
開始5分で勝負を決めてしまった。
「・・・そんな・・・」
レシトリーのことを知っているアテナも衝撃を受けたような顔をしている。
「・・・ワシと戦った時は手加減をしていた、ということかのう」
・・・確かに、明らかにガットと戦った時よりもパワーもスピードも上がっていた。一見するとガット相手には手を抜いていたというようにも見える。
「・・・手加減していた、というよりも最終戦まで来て本気を出してきた、という方が正しいと思うぞ。逆に言えばレシトリーがそれだけ強かった、ということでもある」
いくらカオスでもレシトリー相手にそう簡単に勝てるとは思えない。むしろ本気を出した結果だと思う。・・・そうであってほしい。
なお、ベルバアルからなぜか「レシトリーが癇癪起こして暴れています、助けて」というメールが来ていたが、無視した。・・・クランメンバーのことはメンバー内で解決してもらいたい。
「・・・ところでレオーネ。いい加減、どいてくれない?」
「ガオ♪」
・・・スリスリ顔を摺り寄せてこないでほしい。
「ピュイ♪」
・・・フィオレ、なんで君まで?
「仲が良いよね、君たち」
・・・ラングよ。悠長なこと言ってないで助けてくれない?
作者のやる気とテンションを上げる為に
是非、評価をポチっとお願いします。
m(_ _)m




