美しき宝石には
私たち【アークガルド】は同盟クランである【インフォガルド】の協力(有料)もあって情報収集は欠かしませんでした。
特に未知のスキルやクラス、武器や【眷属】に関する情報はリーダーであるアルクさんの意向の元、積極的に集めていました。
アルクさん曰く、未知の攻撃手段を持つ敵には予想外の倒され方をする可能性が高い、とのことです。
私たちもその考えに同意してとにかく情報を集め回りました。【インフォガルド】の皆さんに頼りきりではなく自分たちでも積極的に情報収集を行うためにあちこち飛び回りました。
その中でも私は【魔法】関係担当だったのですが・・・そんな私でも【宝石魔法】というのは初めて聞きました。
勿論、私も【魔法界】のすべて網羅しているわけではありませんし、細かい情報をつぶさに精査できたわけではありません。それは情報量が膨大ですし、時間の関係もありますし・・・お金だっていくらでもあるというわけではありませんからね。
未知の【魔法】とぶつかるのは私にとっては新しい発見という意味では喜ばしい反面、それと戦うという意味ではより慎重に対応を行わなければなりません。
【宝石魔法】という名称と、その動作から判断してエルザリートさんが身に着けている宝石が関係あることは間違いありません。宝石が他にも種類があるところを見ると・・・
「【サファイア】!」
エルザリートさんが右手の中指の宝石を私に向けました。
次の瞬間。
ドドドドドドドッ!!
私が張った【アイスウォール】が攻撃を受けました。
氷の壁に無数の小さい穴が開いていきます。氷の壁に埋め込まれているのは・・・数センチ程度の青い石!
「宝石の弾丸!?」
「ご名答」
【ウォーターウォール】【ウィンドウォール】を突き破り、【アイスウォール】にまで攻撃が届くなんて・・・壁が壊されるのは時間の問題ですね。
「【限定召喚】! 来て、フィオレ!!」
「ピュイイイ!!」
【召喚】されてきたのは【成体】化済みのフィオレです。
私はフィオレの背に乗って空中へ逃れます。
バキィィン!!
少し遅れて氷の壁が粉々に砕かれました。
間一髪でしたね。
しかし安心はできません。
宝石の弾丸は・・・今もなお私とフィオレを追い続けているのですから。
まずはあの攻撃をなんとかしないといけませんね。
「【サンドバインド】!!」
まずはエルザリートさんの動きを止めるべく【土魔法】を放ちます。
地面に現れた大量の砂がエルザリートさんに向かていきます。
・・・が。
「【フローライト】」
エルザリートさんが履いているブーツ・・・よく見ると宝石がついていますね。
その宝石が光ると同時に彼女の前に丸い板のような宝石が現れました。
ひと一人が乗れるほどの大きさのそれに、エルザリートさんが飛び乗ると高速で上昇し、砂の捕縛から逃れました。
・・・空も飛べる【魔法】ですか・・・まるでキント雲みたいですが・・・そのままの勢いでエルザリートさんがこちらに迫ってきます。
早い!フィオレに追いついてくるなんて!!
「【タンザナイト】!!」
エルザリートさんの左手中指の宝石が輝くとともに、その手に青紫色の宝石の剣が現れました。
武器まで作れるなんて・・・【宝石魔法】万能すぎません?
「ハアアアアアッ!!」
勢いに乗ったまま斬りかかってくるエルザリートさん。狙いは・・・フィオレですか!?
「【アイスジャベリン】!!」
私は氷の槍を出してエルザリートさんを迎撃します。
スパンッ!!
・・・すっぱり斬り落とされてしまいました。【魔法】には自信があったのですが・・・この結果は少し落ち込みますね。
「フィオレ!【ファイヤーブレス】!!」
「ピュイイイイ!!」
フィオレに炎のブレスを放ってもらうも・・・
「【アクアマリン】!!」
エルザリートさんの前面に巨大な藍色の宝石の盾が現れ、フィオレのブレスが吸い込まれるように消えてしまいます。
そして・・・
「フィオレ!!」
「ピュイ!?」
そして鏡に跳ね返されるかのように同じ攻撃がこちらに返ってきます。
そしてその間に・・・エルザリートさんが間近に迫っていました。
「ハッ!!」
青紫色の宝石の剣がフィオレに迫ります。
「・・・!?フィオレ!!」
「ピュイ!!」
上手くフィオレに動いてもらい、位置取りを変えます。
ガキンッ!!
エルザリートさんの青紫色の宝石の剣を、私の【魔杖ブルーゼブル】で止めます。
・・・良かった、止められた。宝石の剣より【魔杖ブルーゼブル】の方が頑丈なようです。さすがガットさんが製作した武器。
「・・・優れた武器をお持ちのようね。でもまだよ!【サファイア】!!」
「!?」
鍔迫り合いの状態の私とエルザリートさん。
しかし、そんなことはお構いなしにエルザリートさんの周囲に無数の青い宝石が浮かびあがります。そして・・・
「キャアアアア!?」
「ピュイイイイ!?」
無慈悲にも青い宝石の弾丸が雨のように私たちに襲い掛かりました。
「クゥ・・・!? 【サイクロンストーム】!!」
とっさに私は自身とフィオレの周囲に竜巻を発生させます。
「!?」
その竜巻は私とフィオレを守るように覆い隠し、エルザリートさんを吹き飛ばします。同時にエルザリートさんが放った弾丸を明後日の方向に吹き飛ばしました。
「・・・大丈夫ですか、フィオレ?」
「ピュイ!!」
今の攻撃は堪えました。しかし、ガットさんが製作してくれた【蒼鎧ディブルー】のおかげで私は深刻なダメージは受けませんでした。
しかし、フィオレは・・・諸にダメージを受けてしまいました。
深刻・・・とまでは行かないかもしれませんがHPは半分をきっています。
「一度【送還】を・・・」
幸いLPにはまだ余裕があります。一度【送還】してホームに戻ってもらい、頃合を見計らって再【召喚】したほうが良いかと思います。
ですが・・・
「ピュイ!!」
フィオレは首を横に振りました。
おそらく一人残される私を危惧しているのでしょう。
優しい子です。
私の心配を余所にフィオレの目には最後まで戦いぬく覚悟のようなものが見てとれます。
「・・・わかりました」
主として【眷属】の想いには応えてあげたいですからね。
ただし、どうしても危なくなったら強制的に【送還】するつもりです。
HPが0になってしまったらもうこの試合中に再【召喚】することが出来なくなってしまいますからね。
まだまだ力を隠しているだろうエルザリートさん相手に私一人では厳しいでしょう。
「さあ、反撃と行きましょう。フィオレの力を貸してください」
「ピュイ!!」
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